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険悪化からのレドウ相談教室

結論から言えば。負けた。あっさりと。完膚なきまでに。


「よくよく考えてみれば、レベルの差がありすぎだったな。ステータスに左右されない力だとしても、それ以上にあいつの力が凄まじいわ」

「カズマ様。相手は仮にも一国の王。その言葉遣いはどうかと思いますが……そうですね。力の差は歴然。赤子がゴーレムに挑むようなものです」

「ってぇ……」


今はこの国の病院の一室で療養中。

俺達二人はあまりにも呆気なく、三発で倒された。

ギル達によると、かなり手加減されたものらしいが、それにしても三発ってどうなんだろうかと、俺は思う。


「大丈夫ですか?」

「いや、起き上がろうとしたら変なもん踏んだだけだから大丈夫」

「そうですか」


手元にはファントムキラーの残骸というか、核みたいのが残っている。ヘルロードの爪に刀身を砕かれ、柄とその中央に埋まっていた宝石だけが今手元にある。


「ここ何階なんだろうな……」

「さっき人に聞いたところ、71階らしいです」

「なな……っ!!」


よく生き残ったな!!俺頑張った!


「つか、俺らここから出れねんじゃね?」

「いえ。主の剣が新しく造られた後、転移門で下階層に移動する予定です」

「お、シュカか」


シュカはヘルロードとの試合……の後にギルに喚ぶように言われて喚んだ。

ここにいる間に説明されたことを掻い摘んで話すとすると、ギル達が俺達を襲撃しに来たとき、ステータスに制限をかけられていたらしい。あのままギル達を助けることなく、ギル達が死んだ場合、この城に蘇生されるようにもなっていたとか。

そして、なんでギル達で攻撃してきたとか、そういう理由はまだ聞いていない。

ちなみに制限を解除されたシュカは綺麗なエメラルドグリーンの髪をセミロング程に整えており、何故かワンピースを着せられている。ぶっちゃけめっちゃ可愛い。


「というかシュカ。お前ももうちょっと寄れよー」

「いえ、主とアリスの邪魔をしてはいけないでしょうし」

「邪魔なんかじゃないですよ。私もシュカ達のことをもっと知りたいですし」

「そうか……なら……」


シュカはそろーと歩いてきて、俺の寝ているベッドに座った。


「え」

「あのーシュカ。なんでカズマ様の横に?」

「たまには主の横に……と思ったのだが、駄目か?」

「いえ、別に……」

「……アリスはカズマ様が好きなのか?」

「そ、それは、好きですよ……」


アリスが消え入るような声で答える。あぁ可愛いアリス可愛い。


「例えばどんなところが?主は性格はまぁ良いかもしれないが、弱いし気が利かないし、適当だし馬鹿だし、軽いではないか」

「ちょ、シュカ」


く、くそう、シュカの言葉が俺の心を抉ってくる。


「た、確かに女の人に色目使ったり、女の人ばっかのパーティに入ったり、やたらカッコつける割りに全然強くはありませんが、言い過ぎですよ!」

「ぐはぁ!」


フォローになってないフォローが俺を倒した。


「私のことを、他の人に化け物扱いもしないだけでも、十分なのに、私を好きだって言ってくれるんですよ?会ったばかりの私に、カズマ様は最初、私を誰かと重ねて見ていたようですけど、それでも、好きって言ってもらえるのが凄く嬉しくて、話してるうちに、自然に好きになってしまって……」

「……かふっ」


照れる……けど、重ねてるってのは今もで、今のアリスが大好きなのも変わらないけど、やっぱ罪悪感、あるな。


「それは……主がひたすらアリスを好きだと言ってることに、現状に浸っているだけなんじゃないか?」

「はい?」

「お前達ヴァルキリーは、先の戦いで沢山の生命を狩り潰した。その圧倒的な力で」

「……」

「人は弱いからな。お前達や私達を恨み、憎んでいた。その憎しみは戦が終わって数年、今でも尽きることはなかった。アリス達ヴァルキリーや魔族は特に、誹謗中傷が酷かったろう」

「……」

「だが神による世界の改革により、その身の状況は一変した筈だ。戦を知らない人族やエルフが唐突に、千人単位で増え、パートナーになった人間に綺麗だと褒められ、プレゼントもされて……」

「何が、言いたいんですか」

「ちょっちょっと待ったお二人さんよ。何いきなり険悪化してんだよ」

「……すいません。意地が悪過ぎましたね。私は一度兵舎に行ってきます。御用があれば女中にでも声をかけてください。私の名を出せば聞いてくれると思います」

「おい、シュカ!」

「では」


と、そのまま出て行ってしまった。


「アリス。気にすんなよ?なんでいきなりシュカがこんなことしてきたかはわからんけど、俺がアリスを好きなことは変わらねえからな!」

「……はい。少し外に出てきます」

「あ、なら俺も」

「いえ、私一人で行きます。すいません」

「あ、」


と、アリスも部屋を出て行ってしまった。

こういう時どうすりゃいいもんかね。……そだ。困った時のヘルプだ!


「ってことで……あれ?ヘルプがない?!嘘だろ……どうしようか。相談するにしても、なんかいるかな。つかメール機能も無くね!?なんでいきなり無くなってやがんだ?あ、もしかして……俺らが二十階を超えた時みたいに、七十一階に来て他のシステムが消えちまったのか。連絡できねぇじゃん……どうすっかな。つか……」


俺独り言多いな畜生!



王城の一室。ヘルロードのプライベートルームにヘルロードとシュカはいた。


「……お父様。言われたとおりにアリスを問い詰めましたが……」

「そうか。シュカには嫌な役をやらせてしまったのう」

「仕方ありません。隊長は演技が下手ですし、セイルは優し過ぎて、バラしてしまうかもしれませんから」

「そうじゃのう。ギルはワイバーンながら、底辺の龍とは互角以上に戦えてしまうが、知能はちと低いし、セイルもそれなりに強いが、竜種とは思えぬ程に人格が良くなっておるしな。シュカ。お前も成長してるようでワシは嬉しいぞ」


ヘルロードはシュカの頭を撫でながら笑う。見た目は少年のヘルロードだが、中身は数千年の時を生きる古龍の一人だ。その強さ、知識共に世界のトップレベルを有していながら、ワイバーンを例に、自身より下級の種族を見下さず、平等に見ることで有名である。


「小さな時、私を拾って育ててくれたお父様の為、もっと努力して強くなります」

「戦いに行く時も言ったが、シュカ、お前はもうそんじょそこらの馬鹿龍共よりは全然強いのじゃ。あまり無理はせんでいい。お前はお前のしたいように自由にしとればいいんじゃよ。本当はワシは、お前が戦うことも、あまりしてほしくはないんじゃがの」

「ありがとうございます。お父様。でも私は、もっとお父様のお役に立ちたいのです。今の主はカズマ様ですが、私が最も大好きなのは……」

「わかっておる」


シュカはヘルロードのベッドに倒れ込み、座っていたヘルロードの太ももに頭を乗せた。


「お父様は意地悪です」

「ククク。千年二千年と生きとると、性格も悪くなるんじゃよ」

「アリス、大丈夫でしょうか」

「あれでそのまま小僧への気持ちが無くなるなら、小僧の加護も意味は無くなるじゃろうな」

「そのくらい説明しても良かったじゃないですか」

「フン。他人の言葉程度で砕ける偽りの愛情なんて、さっさと消えてしまえばいいのじゃ」

「守護龍の加護……その中でもあれは」

「あの加護は守りたいと思う対象との繋がりが強ければ強い程、更に力が強くなる加護じゃしな。一方通行の愛じゃ、精々ワシのグーパン一発ぐらいしか、耐えられんじゃろ」

「それでも十分凄いとは思いますよ」

「しかしのうシュカよ」

「はい?」

「昔のように、おとうさーん!お風呂一緒に入ろー!とか言ってはくれんのかのう」

「なっ……!」


ヘルロードの言葉で、シュカの頬が朱に染まる。


「こうやってのんびり膝枕するのもいいんじゃがの。こう……やっぱり成長した娘のぉう!!」


ゴヅンッという音と共に、ヘルロードの短い悲鳴が上がったのは、全ての家臣が無視していた。




「ってわけなんだよレドウ」

「見ていて思うけど、君ってやっぱり面白いねぇ」

「面白くねぇから!!」


現在レドウの本を使って、真っ白な世界にいるわけだが。


「ユティ知ってるよ!こういうの修羅場って言うんだよね!」

「そうそう。私がメイドと浮気しているところを家内に見られた時もそれはそれは……」

「あんた何してんだよ!」

「あぁ家内を含めてメイドと」

「だぁーーーー!!ユティがいるのにそんな十八禁掛かりそうな行為を口にするなぁ!!」

「それを顔真っ赤にして止める君、ほんと初心だねぇ」

「うっせぇ!!」


アリスのことを相談しに来ただけなのに、いつの間にか下賤な話になりかけてしまっている。


「つ、つか!なんで本の中なのに、変な小屋建ててんだよ!ソファもベッドも机もあるし!家か!家でも建ててんのか!?」

「そうだけど、君にはこれが家以外の何かに見えるのかい?」

「見えねぇよ!!だから余計不自然なんだよ!真っ白な空間に小屋一個ってどんだけシュールかわかるだろうが!」

「まぁまぁ。そう怒らずに。ここにかけたまえ」

「うわどっから出したそのソファ!!」

「それは、こうやって……」


レドウは両手を虚空に上げて、何かを掴むようにすると、ズイッと机を出した。


「ね?」

「ね?じゃねぇよ!意味わからねぇ!!」

「では始まりました。レドウの相談教室ー!本日のゲストはこちら、弱くて情けない残念系イケメンのカズマ君です」

「だぁれが残念系イケメンだ!!」


俺とレドウがソファで対面する中、ユティは観客席なのか?そこでパチパチと拍手をしている。


「いやぁ、本日も良い天気ですねぇ」

「天気も何も真っ白だけどな!」

「さて、今日の相談内容はなんだい?カズマ君」

「おま、さっき説明したよな!?」

「いやぁ修羅場だねぇ。愛しのアリスさん、そして部下からの歪んだ愛情。しかし恋の渦中のカズマはアリス一筋。部下の嫉妬の炎は強く燃え盛り……」

「聞いてねぇし!しかも内容を盛るな!ただアリスとシュカの雰囲気がちょっと険悪になっちまったって言っただけだろう俺!!」

「全く。女心がわかってないねぇ」


やれやれといった感じで手を上げひらひらとさせるレドウ。くそ。こいつめっちゃムカつくな。


「そんなカズマ君にアドバイスを上げようかな」

「な、なんだ?!」

「夜にアリスさんをベッドにーー」

「はいアウトーー!!!!」

「全く。童貞はこれだから」

「うっせぇ!」

「あ、もしかしてアリスさんだけなのが不味いのかい?なら部下のーー」

「スピリットアタァック!!」

「ばふぁーっ」

「アハハハッ」


俺の魂の一撃がレドウの顔を吹っ飛ばし、それを見てユティが爆笑。

見る人が見ればドン引きである。


「ひ、酷いね。私は至って真面目にーー」

「真面目にそれなら尚悪いわ!!」


復活したレドウに正拳突きでソファごと撃沈する。


「結局君はどうすればいいと思うんだい?」

「俺は……アリスのこと大好きだけど、シュカのことだって仲間だし、大切に思ってる。だから二人には仲良くしてもらいたいけど……」

「ならそうなるように君が頑張ればいいんじゃないか」

「そうだけどよ……」

「?」


ちなみに、レドウはソファと一緒に倒れたままで対面して話してるので、随分と奇妙な絵面になっていることだろう。


「そもそも君のアリスへの愛は、そんなことで壊れてしまうのかい?」

「んなことねぇよ!」

「なら、私達に相談に来る前に、もっと自分でなんとかしてみたらどうだい。そもそもその話なら、本人同士で解決するかもしれないじゃないか」

「まぁ、確かに、そうだな」

「とにかく、君は、周りの人に話を聞いたりでもして、部下君がどうしてそんなことをしたのか、調べてみるんだ」

「あぁ。わかった。ありがとな」

「おにーちゃん!」

「お、なんだ?」


振り向くと頬に柔らかい感触。


「えへへ。おまじないだよ!」

「おう、頑張るぜ」

「行ってらっしゃい!」

「行ってくる!」




そして、意識は本を使った直後に覚醒する。


「戻って……きたか。うっし。とりあえずギルかセイルにでも聞いてみるかね」


俺は病院の戸を開け、見舞いにやってきたのであろう、セイルと対面するのであった。



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