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アップデートとジュンの実力その1

お久しぶりです。

四階層に着いた時にはもう終わっており、それより上の階層も終わっているそうで、現在それぞれの階層の集会所から報酬が出ると放送が流れている。


「まぁこんだけ戦ってりゃ終わるわな」


結果として俺達が貢献した戦いは一階、二階、三階層の三つ。

そのうち一階と二階の大将をそれぞれ二体と一体倒している。それだけを個人で倒してるのはアリスくらいだろう。

そして、現在、何故このような事態になっているのか、解放されている層の代表者を集めて会議することになっているようだ。


「つか二層とか一層に代表者っていんのか?」

「うーん。一番強い人とか、そういう

事柄が得意な人が出るんじゃないですか?」


シロが首を傾げながら答えるも、まぁそんなのはお偉方同士でやってもらって俺達はまた装備の新調とかをするわけで。さっきサイカさん達と話した通りにもしかしたら最前線に行くかもしれねぇし。


「とりあえずシロ。俺達、最前線陣取るぞ」

「ええ!?ほんとに行くんですか!?」

「あぁ。お前らもレベ上げ頑張れよ。大丈夫だ。俺達が付いてる」


なんてったって、二十二層で戦ってて生き抜いて、尚且つ十五層辺りまでだったら全く問題のないファントムキラーもある。一緒に着いて来たジャック達やワイバーンであるギル達もいる。そう簡単には負けはしないだろう。それにジュンとメイの事もあるし。


「すいません!カズマ様でよろしいですか!!」

「ん?あぁ。そうだけど」


いきなり声を掛けて来たのは猫耳の二十代後半くらいの女性。スーツっぽい服を着ているので、集会所の人だと思うが。


「個人討伐数が一番多く、下階層の戦いに最も貢献してくれた方なので二階層の代表者になって頂きたいのですが」

「え、でもそれ俺じゃなくて、アリス……」

「アリスさんは貴方のパートナーでしょう?貴方がやった訳でなくとも、貴方と一緒にいるわけですから、貴方の功績になります」

「ええー」

「いいじゃないですか。これで最前線入り宣言しましょう。そして」

「んなことしてきた十層の奴らをとりあえずボコるってわけか」

「はい」


アリスは笑顔で頷く。つかこれに笑顔で頷くなよアリス。少し恐いぞ。


「んじゃ俺でます。会場はどこでやるんですか?」

「会場は七層で行います」

「了解です。いつ行けば良いんだ?」

「明後日の正午、集会所の会議室にお願いします」

「了解。それまでは自由かな?」

「はい」


そう言ってお辞儀して、猫耳の女の人は戻って行った。


「さて。まずは……帰るか」

「はい。皆!一回ギルドに帰るよ」


それぞれ頷くなりして、帰路についていく。


その中で再び放送が流れる。


『皆さん。お元気ですか?GMのクロムと言います。今回の戦闘により、新たなアップデートをさせていただきました。内容は、破壊不可能イモータル建物オブジェクトを解除。街中での戦闘許可暴行などの行為も制限されません。と言っても、処刑人エクスキューショナー達がいますから、そう簡単には出来ないと思いますけど。もうお気付きの方もいるかもしれませんが、もうこの世界は貴方方の知るゲームではなくなってきています。時期にメールなどのいらない機能も消させて頂きます。でも、装備の取り外し機能と、ステータスを見たりする機能は無くしませんよ。元からあるものですし。あぁ……いらないことを話し過ぎましたね』


おいおい。これちっと言って良い話なのか?つか名前、こっち仕様か?こっちにいんのかコイツも。


『最後に。何処かで聞いてますよね。フィル。近い内に会いに行きます』


それからぶつんと放送が終わった。


まぁ、今回はそこまで変わらなかったか。だけどPKが怖いな。皆一人で出歩かないように言っておかないと。つかフィル呼ばれてなかったか!?

あと、


「ジュン。お前も来い」

「え?はい」


報酬を貰って、特に嬉しい顔もせずにアイテムストレージに入れているジュンを見つけたので、声を掛ける。


「俺んとこ入れっつったろ?」

「あ、そうですね」

「よし。んじゃ行くぞ」




「はいはーい皆さん紹介するぞ!コイツは今回のゴブリン戦線で一緒に戦ったジュンだ。ギルドに入る事になったので、それぞれ挨拶しておくように。ジュン一回皆の前で自己紹介どぞ」

「なんですかそのテンション」

「いーからいーから。ささっ」

「え、と、俺はジュン。種族は人間です。要請はピクシーのメイ。一応剣士をやっています。レベルは……1です。よろしくお願いします」

「はい拍手!」


パチパチパチとまばらに拍手が起こるが、大半は困惑している。


「「「なんでレベル1?」」」


当然の疑問である。勿論俺もわからん。流れでスルーできるかな?とか思ったけど無理みたいだ。


「スキルもなんもなかったしな。なんで?」

「あのですね、あまり、公にしたくないので、絶対に他に話さないって、約束してくれますか?」

「ん。おう。約束しよう」

「皆さんも」


皆頷き、真剣な顔をしている。若干一名だけ、ナタリアといちゃついているが、コイツはまぁ大丈夫だろう。


「僕には何故か、隠しスキルというものが存在します。ユニークではないと思いますが、何故か見えないんです。しかも、僕はそもそも選択した覚えのない物ばかりで、名前以外は全然違うんです。こうなった理由は本当にわかりません。このスキルはパーティを組んでも人には見られません。かなり沢山あるんですけど、全て秘匿されているようです」

「へぇ。例えばどんなスキルがあるんだ?」

「えっとですね。まずゴブリン戦でも使っていたのですが、下位のモンスターを操る事のできるソウルクラーティアというスキルがあります。中級辺りのモンスターも操ることができます」

「操るっつーのはテイムとは違うのか?」

「はい。操れるのは一時的にですし、敵の上位種の力で元に戻されることもあります」


ちなみにテイムというのは、モンスターを味方にし、一緒に戦っていけるようになるスキルだ。これの場合強いモンスターほどテイムできる確率は低くなって行き、ボスレベルだと、無きに等しい。

ギル達が仲間になったのは、あいつらの意思があったので、テイムではない。

しかし意思とか関係なく操れるとかえげつないな。こいつの人格によっちゃMPKがやりたい放題なわけじゃねえか。


「んで他には?」

「身体能力倍加とか上昇(大)とかMPドレイン、MP消費半減、HPドレイン、HP自然回復速度二倍、思考加速、全体魔法範囲拡大、状態異常発生確率二倍、無食、不眠……」

「待て待て待て!どんだけスキルあるんだよ」

「まだまだありますよ?といっても、僕は魔法をあんまり使わないので、魔法拡大とかはあんまり意味がないんですけどね。でも無食のおかげでご飯食べなくても全然大丈夫だったり、不眠のおかげで寝ないで動いていられたりしますから便利ですよ。まぁ疲れは出るんですけど」

「それにしたって凄いだろう」

「ちなみに、ステータスのパラメーターはあれくらいです。レベルも上がりません。でも各戦闘ごとに、パラメーターが確率で上がるのでレベルは大して気にしてません。上昇率は微々たるものですが、上昇回数がそれなりに多いので、戦闘が多いほど、強くなれるんです。ちなみに格戦闘ごとと言いましたが、敵一体につき、一戦闘と見られているようで、敵が多いほど強くなれます。ただこれにもある程度制約が、ありまして、自分のパーティ以外が一度でも攻撃した場合、上昇することはありません。そしてパーティの人がトドメを刺した際も上がりません。自分でトドメを刺した時のみ、上昇します。また、同程度のレベルのモンスターを倒して行くと、討伐数が多くなるに連れて、上昇率が低くなって行きます。なので、もうゴブリンなどだと上昇しませんね」


なるほど。まぁ戦い続ければ何処までも強くなれんのはいいな。制約ありでも、これは大分ヤバいだろ。


「あと、僕なんか、称号欄に【勇者】ってあって、魔族との戦いで全パラメーターが更に倍加するようになってて固有技があったりします」

「ゆ、勇者だと!?この世界にそんなのが、あるのか!?」

「勇者……凄いっすね」

「でも魔王がいるらしいし、それなら勇者がいるのも間違いじゃないんじゃね?」

「というか魔王がいるなんて誰が言ってたの?」

「風の噂だよ」

「魔王ならいるぞ。俺は見たことないが、確か居たはず。結構上の層にな」


ギルが結構重要っぽい話をぽろっと言っているが、それは後にしよう。うん。後にしよう。

そして今まで全く聞いていなかったジャックまで驚きを隠せないでいる。


「とりあえずそんなもんですね」

「あぁ。うん。さてどうしようか。あまりにヤバいというか、凄い話過ぎて反応に困るというか」

「えーっとジュンで良かったか?」

「はい」

「俺はエースっていうんだが、とりあえずどれくらい戦えるか、闘技場で戦って貰えるか?ゴブリンだけじゃなくて対人に対してもどれだけ戦えるのか見てみたいんだが」

「あ、はい。良いですよ」

「よし、じゃあ行こうぜ。皆も」


そうして、ジュンの自己紹介の後、ちょっとグダリながらも、闘技場に足を運ぶのであった。




エースは僕に向かって剣を振り下ろしてくるが僕はスキル、エアフィールドで空気の壁を横に作り、それを蹴り、横に跳ぶ。


「うおりゃあ!」


結果としてエースの振った剣は空を斬り、更に僕はその後ろへ跳んだ。


「あれ?!後ろか!?」


彼は何が起こったかは気にしなかったようで、そのまま後ろを向こうとするが、それはさせない。


「メイ!」

「あいよ!かの者を静止しろ!フリーズ!!」


メイによる氷魔法で、エースの足を凍らせ、その歩みを止める。


「うをぁ!?」

「シャイニングスラッシュ!!」

「ぐあっ!」


勇者の技で、エースの背を一文字に斬り裂く。そこで、


「止め!!」


カズマさんの試合終了の合図が為された。


「ヤバいカズマさん。超痛い上に超やりにくい。そしてメイちゃんが強い」

「おー見てたからわかる。妖精がいても多分辛いだろうな。とりまお疲れ」


カズマさん達は僕のことで話し合っているようだが、僕自身はずっとこんな感じで戦っていたのであんまり違和感がない。戦い方は極めて簡単に、僕が攻撃、メイに支援と足止めをしてもらったのだ。ただ、彼よりスキルの量がかなり多いため、場合によってはぐんぐん有利になっていく。例えば、数回と受けている技だとそのモーションに入る時の動きでわかるようになり、避け方もなんとなくわかるようになる戦眼や【勇者】のスキル、急速成長で、相手に劣っているパラメーターが一定の確率で上昇することだってある。それが普通になってしまった僕は自分が異質っていう感覚が麻痺しているのだと思う。


「まぁとりあえずエースと戦って勝てるくらいには強いってことだな!」

「はぁ。それってどのくらい強いってことですか?」

「えっとな……ギルド内で下から五番目だ。ちなみに今まではトランで六番目が俺かジャック。でも俺はアリスがいるから、妖精としてアリスが参加した時はダントツで一番強いぜ」

「じゃあ続けてカズマさんもやりましょうよ」

「え」

「勿論妖精は無しで」

「待て。カズマさんとやるならまず俺とやれ」


そう言って全身真っ黒で忍者みたいな姿の青年が出てきた。青年と客観的には評したが多分僕より年上だ。お兄さんくらい。


「良いですよ。妖精はどうします?そこのエースって人は有りで大丈夫って言って負けましたけど」

「この馬鹿と一緒にするな。俺もそれでいい。やるぞ」

「はい」


黒い人、多分トランって人が皆から離れた所に立つ。僕もそのようにし、向かい合う。


「カズマさん。審判よろしくお願いします」

「お、おう。んじゃ両者準備はおっけーかな?」

「いつでも」

「メイ。いけるか?」

「例え火の中水の中森の中!何でもいけるわよ!あ、やっぱ森以外はなしでお願い」

「ここはそのどれでもないよ」

「そんな会話する余裕があるなら良いな。では……はじめ!!」


試合開始の合図と同時に目にも留まらぬ早さで僕を飛び越えるトラン。僕は半ば反射的に後ろを向くが、トランの姿は完全に見えない。


「ハイディングか!メイ!対処できる!?」

「余裕よ!光よ!双眸を貫く刃となれ!ブライトネス!」


僕はその詠唱が始まると同時に目をつむりしゃがむ。


「馬鹿が!その隙を見逃すとでもッ」


この魔法を理解していない人は必ずこうやってうずくまるなり、立ち止まることになる。


「ぐあぁっ目が、目がぁああ!」

「どこかの悪役のセリフみたいだね」

「トドメ刺していい?」

「よろしく」

「地の精よ!我が力に従いてこの言の葉に応えよ!」


ゴブリン戦でも使ったこの魔法だが、ただ一人にやるにはやり過ぎではないかと思う。メイが超笑顔なので気にしない。気にしたらいけない。


「天を貫く大地の怒り!砕け!ロックファング!」


そして地面から岩が飛び出てその岩がトランに突き刺さる。かと思われたが、当たる直前にトランは飛び退き、その岩を避けた。


「目が見えなくとも、ある程度空気を読めばわかる!」


空気を読む、というのは恐らく攻撃によって起こる空気の動きを読むことだろう。ただ空気を読むならあのまま負けてくれたって構わない。僕だって別にこういうPVPが嫌いなわけではない。むしろ、ちゃんとした試合は好きだ。そして、戦うからには勝ちたい。


「メイ!」

「わかってる!かの者を静止しろ!フリーズ!」


トランはメイの魔法から逃れようとするも、少し遅く、氷に足を囚われている。


「よし!シャイニングスラッーー」

「シィッ!」


チッと僕の頬を小さなナイフが掠めた。だけど掠めただけだ。そのままこの剣をーーえ?


ぐらりと身体が傾く。トランはしてやったりといった顔で笑っている。


「な、にが」

「俺が超即効性の麻痺毒をナイフに塗ってあるんだよ。それをお前に投げ付けた。さっきの魔法はエースに使ってたから、俺にもどこかで使うだろうと予想はしてたんだ。で、お前らは使った。そして無防備な俺を斬り倒そうとしたんだろうが、残念だったな。そんな安直な手が通用すると思ったら、大間違いだ」

「そ、そうかな?」

「なんだと?」

「フリーズを掛けて、更に僕は君に攻撃を仕掛けて、封じられちゃったけど、僕らは一人じゃないよ」

「まさかーー」


そうその後ろでは詠唱を完了させ、魔法を発動させようとするメイがいた。


「くらいなさい、ロックファング!」


無数の岩の牙がトランに襲いかかる。トランは避けようと足に力を込めるーーが、僕に足を掴まれ動くことはかなわなかった。


「何故動けーー」


驚愕し、トランは息を飲む。僕はその顔見て言い放つ。


「後でね」

「ーーごふっ」


ロックファングはトランの背に突き刺さり、そのまま貫くと、僕の目の前の地面に埋まる。

トランの胸と口からは夥しい量の血が流れている。現実ならもう、死んでいるだろう。


それを見て僕は思わず、


「……おえええ……」

「ちょ、ジュン!?」


ヤバい、グロ過ぎる。

対人で、使っちゃいけない。

と思うのであった。


「や、止めええええ!!うおおおおトラン!死ぬなぁあああ!」


そんなこんなで試合は試合どころじゃなくなり、一度ギルドに戻ることになった。


試合終了した途端、傷がみるみる消えていくのを見て、凄いと思った。




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