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ゴブリン戦争と新しい仲間

「お前ら。敵はあのゴブリンとスライム達だ。雑魚中の雑魚ではあるが、数があのトレントの呼び声使用時の数とそう変わりない。そんでもって、あいつらの方が機動性はある。武器も多種多様に存在するし、スライム達は武器こそないが、その液体状の身体はあらゆる武器も無効化する。だからスライムはシュカ達かクインス、ナタリアさんが相手してくれ。ジャックはまぁナタリアさんといろ。んであのど真ん中の方のジェネラルゴブリンは俺とアリスで潰してくる。いいな?」

「「「はい!」」」

「ジュン。お前は……まぁよくわからんけど、なんとかがんばってみてくれ。セイルとトランは援護に回れ」

「「はっ!」」

「シロとエースは適当にゴブリン共を倒してってくれ。エースが地龍化してシロを乗せてくれてもいいけどな」

「わかりました!」

「らじゃ!」

「よし。んじゃいくぞお前ら!」

「「「おおおおお!!」」」


そうして、一人の少年、ジュンを含めた俺達のパーティとゴブリンとスライムの混合部隊の戦いが始まった。



こんな状況になるちょっと前の話。




ビービービーとこの世界に似つかわしくない警告音が流れる。


「懐かし!シュカ達が来た時以来じゃね!?」

「今度はなんですかね?」


つか、ここ異世界だろう。警告音とかどうなってんだよ。

世界観クラッシャーかっつーの。


ビービービー!

その先はなんだ?またワイバーンか?それとも宇宙人か?いや宇宙人はいねぇな。うん。


ビービービー!

『えー本日はお日柄もよくーえ?あぁそんな暇ない?うーんそうだねぇ』


あ、これ集会所の受付のお姉さんの声だ。つか頭に流れ込んでくる形から、本当の放送みたいになったのか。なんかどんどん馴染んで来るな。


『えっとですね、十層からゴブリンスライム混合部隊が、現在攻略されている、全七層に送られているみたいです。話によると、十層のゴブリンロードが、こちらを侵略ーーな、何するんですか!今私がせつめ、せーつーめーいーしてるんです!なら早くしろって?でもここの人達強いから大丈夫でしょう』


大丈夫じゃないだろ!


「話聞くより、現場見た方か早いな。シュカ!」

「はっ」

「俺と一緒に飛べ!」

「わかりました」


俺達はギルドを出て、ワイバーン化したシュカの背に乗り、飛んだ。


「うおおおおおお!たっけぇ!つかやっぱお前あったけぇなぁ!」

『そうですか?』

「おう!冬とか凄いあったかそう!」

『では冬になれば、アリスと共に温めましょう』

「よろしく頼むぜ?さて、ゴブリン達……は……」

『これは……』


街の外、約三十分くらいの場所に、土埃の波と一緒に緑色と水色の波が出来ていた。


「数やばっ!」

『すぐに戻りましょう!他の層もこうだとすると、応援はあまり見込めません。こちらだけで対処しないと!』

「了解!戻るぞ!」


そして俺達は即ギルメンに伝え、迎撃準備を開始した。




そして同時刻、少年と小さな妖精の少女はゴブリンとスライムの集団を相手に奮闘していた。


「何でいきなり!」


ギリッと歯軋りしながらも、ゴブリンの放つ矢を叩き落とし、振り下ろされる剣を弾き、棍棒を切り飛ばす。横では妖精の少女が迫り来るスライムを水魔法で氷漬けにしている。


「ふはははは!あたしの魔法にかかればスライムなんてイチコロよ!」


そんな少女にゴブリンの矢が降り注ぐ。


「あーー」


「あんまり気を抜かないで!」


それを少年は横から素手で掴み放り投げた。


「わかってるわよジュン!」

「わかってるならいい!メイ!」

「はいよ!光よ!双眸を貫く刃となれ!ブライトネス!」


ジュンと呼ばれた少年は魔法の発動と同時に目を瞑る。目を閉じたにも関わらず、光による痛みに襲われる。

そんなものを直に受けたゴブリン達は皆目を押さえて転がっている。


「よっし。一回街まで行こう!今の警報が本当なら、街の方で部隊が編成されてるはずだよ!でも、この二層で、どのくらい強い人がいるかわからないけど……」


ジュンと小さな妖精、メイは街まで走り始める。メイは途中でアイテム化して消えた。


「ってあれぇ!?」


前方に緑色の生物、再びゴブリンが現れ、ジュンの行く道を遮る。


「メイ!囲まれた!」

「なんで!?」


ジュンが呼び掛けると、メイが慌てて顕現する。


「僕らが戦ってる間に迂回されてたんだよ!」

「この数だもんね、でもあたしの敵じゃないわ!」

「本当に!?」

「ごめん無理!」

「だよね!」


ジュンは手を握り、胸に当て心で叫んだ。

ーーソウルクラーティア!!


するとジュンを中心に青い光の輪がすぅっと広がり、周囲にいるゴブリンとスライム達を包みこんだ。


「げっげっげ」

「ぐがっがっがっ」

「……」


その光に包み込まれたゴブリンとスライム達はジュンの周りに、ジュンを守るようにして並ぶ。その中に赤いスライムが一体存在し、周囲のスライム達と合体していくのを横目に、ジュンは指示を出す。


「行け!ゴブリン達!メイは大きいのを一発お願い!」

「任せなさい!風の精よ!我が力に従いてこの言の葉に応えよ!」


メイの左に緑色の玉が浮かぶ。


「万物を切り裂く刃となりて敵を討て!ウィンドスラスト!」


ジュンの従えたゴブリンの最後の一体が、スライムに飲まれると同時に、メイの魔法は発動し、無数の風の刃が周囲三十メートル程までを切り裂いた。ついでに味方にいたスライムまで切り裂いた。


「ふぅーっはっはっはぁ!あたしにかかればこんなもんよ!」

「よし逃げよう!」

「よし逃げなさい!」


二人は再び逃げ始める。今度は回り込むゴブリン達もいない。

そしてその先でカズマ達と出会った。



「すいません!早く部隊を編成しないといけません!街に戻りましょうよ!」


いきなりゴブリン達がいた方面から走って来た奴にそう言われる。が、二層に留まっている、レベの高いギルドやプレイヤーは俺達を除いてギルドは一つ。レベル的にいくとサイカさんくらいなのである。従って、街の南と西は俺らが。北と東はサイカさんパーティとなっている。二層のお姉さんはもう終わりだと嘆いていた。


「あ、部隊は俺らだけだぞ。えっと名前は?」

「僕はジュンですけど」

「あ、あたしはメイね!」


ジュンにメイね。

人間にピクシー……どこにポイント使ったんだこいつら?ここまで普通なコンビって中々いないぞ?サイカさんはユリちゃんいるけど龍人だし。


「っととりあえず、ゴブリン達はどれくらい強い?」

「んーと、一層のゴブリン達よりは利口です。味方が戦ってる時に先回りとかしてきましたし、どちらかというとスライムの方が厄介ですね。基本的に皆緑色なんですけど、その中に数体だけ赤いスライムがいて、それを中心にスライム達が合体してましたね。赤いのをやれば一撃ですが、物理攻撃じゃ辛いかもしれません」

「そうか。わかった」


つーかパーティに入ったならステータスをオープン設定にしてほしいのだが。見られたくないのか?


「あのさ、とりあえず時間ないし、ジュンのステ見て戦略立てたいんだが」

「えっと……はい」


お、見れた見れ……ええ!?レベ1!?こいつ今まで何やってたんだ!?


ジュン


Lv1

種族人間


HP2000

MANA350

STR50

DEF100

INT80

DEX100

VIT90

スキル


こいつ初期ステータスたっけ!しかもスキル無しって何!?俺の目がおかしいのか!?

メイの方が凄いのかというとメイはMANAとINTがアリスより高いだけだ。ちなみにこいつはレベルが上がっているようで、四十台に乗っている。

ん?てか四十台でアリスよりマナ量多いの?え?多くね?え?


「まぁいいか。んじゃお前ら!作戦説明すっぞ!」




から今に至る。


「らぁああああ!」

「グガッ」「ギギャッ?!」


迫り来るゴブリンを切り倒し、スライムはアリスの魔法でぶちのめす。

それを繰り返してやっと道半ばくらいまで来れた。周りはゴブリンとスライムだらけ。スライムはなんかデカいのが数体。まぁなす術もなくアリスに消し去られてるんだが。


「ジェネラルさん遠いなぁ」

「そうですねっと」


バチィッと無言でライトニングを放つアリス。最近魔法名すら言わずにバンバン撃ってるからライトニングなんて空から落ち続けて、一つの魔法なんじゃないかと思ってしまう。ちなみにそれだけで周りのスライム達は殲滅される。ゴブリンも巻き添えで死ぬ。


「アリス!目の前よろしく」

「はい!ヴァニシングボルト!!」


目の前に無数の雷が迸り、ゴブリン達を貫いていく。


「そこ退けそこ退け退いちゃってー!」

「あんまり調子に乗らないでくださいね?気を抜くと危ないですし」

「わかってる!円閃!」


俺はぐるりと回って後ろからきていたゴブリンを切り倒す。


「んでもって流剣撃!!」


それから流れるようにして四体のゴブリンの首を切り落としていく。


「よし!」

「ヴァニシングストーム!!」


ブワァッと身が浮くような風がアリスを中心に吹き荒れ、打ち出される。その風は雷を纏った竜巻となり前方やく四十五度あたりまでの敵は全て吹き飛ばされた。


「これで綺麗になりましたね。行きましょう!」

「おおおう!?」


腰から抱えられたかと思うと、風景が瞬く間に変わっていく。


「っておわぁあああああああ!」


空いた場所を突き抜け、再びゴブリンが沸いたところで、ゴブリンを踏み台にひとっ飛び、そこにタイミング良くギルが登場。勿論ワイバーン状態だ。


『行くぞアリス!主!』

「おう!」

「お願いします!」


俺はしがみつくしか出来ないが、アリスは片手を離し、剣を構える。さながら竜騎士のように見える。


「ワイバーンガ、ナゼニンゲン二ツキシタガウ!コノママデハワレラノセカイガ……!!」

「グラァッ」


ギルが炎弾を放ち、ジェネラルゴブリンがそれを棍棒で弾き、ゴブリンの弓兵に撃ち落とすよう命じるが、それも全て遅かった。


「ヴァニシングストーム!!」


雷と竜巻がゴブリン達を蹂躙し、スライム達を切り刻む。

流石と言えば流石。ジェネラルゴブリンは棍棒を杖にし、立ち上がる。


「ゴフッ。ナゼ、ナゼオマエノヨウナヤツガ、ニンゲンタチノミカタニ」

「人間ではありません。カズマ様が好きだから一緒にいるだけです」


アリスは聖女のように微笑んだあと、ジェネラルさんを袈裟斬りにした。


「ガハッ」

「笑顔で斬るのはちとこえーな」

「でもこの笑顔はカズマ様が好きだからという話ですから。斬ることが好きで笑顔なわけではありませんよ」

「わかってるよ」


うん。素直に言われると照れるぜ。




ゴブリン達がおどおどと陣形を崩し始めた。ジェネラルゴブリンをやったらしい。いくらなんでも早すぎる気がするが、それはそれで問題なし。

ーー指揮官がいないなら、僕が指揮官だ!

ソウルクラーティア!


「行け!スライム達!ゴブリン達を取り込め!ゴブリン達はそのままスライムを援護!」

「グゲッ」


ゴブリン達は命令通り、他のスライム達を援護しにかかる。


「シッ!」

「ギヘッ!?」


この人達強いなぁ。

一人は目にも留まらぬ速度で動き、一発でゴブリンを死に至らせる。

一人は、いや一人という表現もおかしいか。人間とはかけ離れているような感じもする。セイルという人は光の反射によっては淡い水色にも見える、銀色の大剣を片手で振り回し、もう片方の手からは炎弾を放つ。その腕は羽のようになっており、ハーピィのような身体だ。最初はローブのような見た目で、優しい笑顔を浮かべている男の人だったが、まさかこんな荒ぶる人だとは思わなかった。そしてもちろんゴブリンは一太刀で吹き飛ばしていく。どんなSTRがあればできるのか。ワイバーンと言っていたが、それがプレイヤースキルで変身でなく、ワイバーンから人間状態に変身しているとは思わなかった。

他にも二人いるようで、一人は女の人が固まっているところで、一人は前線の方に飛んでいった。


「メイ!僕達も負けてられないよ!」

「負けてるのはあんただけでしょ!私は余裕よ、よっゆーーう!」

「ならもうちょっと頑張って!」

「はいはーい!わかりましたよー!いくわよあんた達!見てなさい!」


誰も見ていないがそれはいわないであげよう。


「地の精よ!我が力に従いてこの言の葉に応えよ!」


いつものように橙色の光を放つ球体がメイの周りに集中する。


「天を貫く大地の怒り!砕け!ロックファング!!」


メイが詠唱を終えると地面から幾つもの岩が飛び出し、周囲のゴブリン達を貫いて飛び、地面に着弾する際に再びゴブリンを貫いた。


「まだまだ行くわよ!風の精よ!我が力に従いて、この言の葉に応えよ!」


すると、橙の光が消え、淡い緑色の光が変わりに輝く。


「万物を切り裂く刃となりて敵を討て!ウィンドスラスト」


範囲にして数十メートルの敵を切り裂いていく。流石メイだ。


そして遥か頭上から巨大な炎の玉がゴブリンスライム混合部隊の中心に撃ち落とされた。


「あっつ!!」

「うわわっ」


着弾と同時に大爆発を起こし、周りを焼き尽くす。


「ウィンドスラッシュ!!」


更にシュカという人が残ったゴブリン達を殲滅していく。


「ゲゲッ!」


ようやく状況を理解したらしいゴブリンがシュカさんに襲いかかるが、それを後ろから飛ばされた氷柱に貫かれる。


「うわぁ。なんか圧倒的だなぁ。あんないたのに、もう半分くらいになっちゃったし」


「ヴァニシングストーム!!」


更に左半分のゴブリンの陣営が吹き飛ばされ、ただの原っぱと化した。


「ってええええ?メイ、あれ出来る?風の魔法みたいだけど」

「雷もあるわね。風と雷の混合魔法。あたしは雷と炎は嫌いだから使わないの。でもやろうと思えばできるわ。なんせ私だもの。ふーっはっはっは!」

「その女の子らしくない笑い方やめようよ……」

「あんたはそのなよなよした顔をやめなさいよ!男はもっとゲヘヘヘとか笑って手をわきわきさせてるもんよ!」

「それは違うと思うんだけど!」


「ヴァニシングストーム!」


「うわっなんでまた!?無詠唱なのかな?」

「そうじゃない?」


ゴブリンが残り数体くらいになったところで、ブロンドの髪を靡かせながらワイバーンに跨っている女の人が帰ってきた。その後ろに見た目はかっこよさげな人もいる。


「うっし。レベの上がりは上々。戦況も中々良い感じだな。このままいけるものはもう片方、サイカさん達とその他のプレイヤーが頑張ってるとこ行こうか」

「あのー」

「どうした?」

「僕らはどうしたらいいでしょうか。帰っても大丈夫ですか?」

「んあ?別にいいけど。んージュン。お前ギルドはいらね?」

「僕ですか?」

「シロ。別に良いよな?」

「はい。増える分には全然オッケーですよカズマさん。どうですかジュン君。入りませんか?」


どうしようか。でもこの人達の所なら追い出されないかな?


「メイ。どうする?」

「どうするもなにも、あんたがしたいようにすればいいじゃない。あたしはあんたについて行くだけよ」

「そっか」


一度、周りを見回す。黒ずくめの人や、翼の生えた人、ワニのような鱗がところどころ見える人、うさ耳、顔以外特徴のないイケメンとその隣に寄り添うようにいるブロンドの人。


「なんか変な人だらけで楽しそうですし。よろしくお願いします」

「「「どうして変な人!?」」」


皆でつっこまれたが、そのまま僕は不思議の国のアリスというギルドに入ることになった。


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