ヘレナ①
ヘレナさんの話ー。
つい先日、私達は六層のボスを倒し、第七層へ到達した。私があのギルドから離れて二週間。最初は何もなく歩いて、時折、即席でパーティを組んで、攻略もしたりした。そして、六層のボスに挑むと聞いた時も、ソロで参加して、適当に入れてもらい、戦った。
「ヘレナさん」
「……何ですか?」
「良かったら私のギルドに入りませんか?」
「シリウスさんの、ですか?」
「はい」
現在、最前線組の一人、そして、先駆者の集いギルドのシリウスさんに、勧誘を受けている。
シリウスさんの見た目はカズマさん程ではないけれど、イケメンであると私は思う。私は見た目が変わる前に一度遠目で彼を見ただけなので、比較はしようもないが、少なくともこんな長髪ではなかったと思う。
しかも腰まである紺色の長髪。
見た目は中性的であるが、少し男っぽい。大人な感じのする男の人という感じの。
背丈は180くらいで、私よりも背が高くて、少し嬉しくもある。
「貴女は相当魔法が好きなみたいですし、どうですか?私のギルドなら、魔法の情報交換も出来ますし、それにこちらは魔法使いしかいないと思われがちですが、ちゃんと剣士や格闘家もいますし、戦闘においてはよっぽど高レベルの場所に行かなければ負けることもありません。それに、ヘレナさんはとても優秀ですから、ギルドに入って頂けるなら、私のパーティに入って頂だきたいと思っています。どうですか?」
「……」
私は死にたくはない。だからこのギルドに入るのも良いだろう。でも、この中に、人殺しがいたら……。
「ダメ、ですかね?」
「……シリウスさんのギルドには、人殺しがいますか?」
「……は?」
「人殺しです」
「PK、ですか。いたなら私は許しませんし、PKに襲われた場合も、極力命を奪うことはしないようにしています。街の憲兵に突き出せば良いのですし、集団ならば、頭を抑えるか、全体魔法を事前に用意して脅す……などで対処しています」
「……なら、シリウスさんのギルドに入らせて下さい」
私がそう答えると、シリウスさんは満足気に頷き、私の手を握った。
「ではよろしくお願いしますね!早速ギルドにきて下さい。私の仲間に報告しなければ」
シリウスさんは、少し強めに私を引っ張り、歩き出した。
そんなに嬉しいのだろうか。
「あ、あの!」
「はい?!」
「あぅ……あんまり引っ張らないで」
「あ、はいすいません」
「私なんか入ったってそんなに変わらないでしょう」
「いえいえ。全然変わりますよ!見た目といい声といい、支援魔法の使うタイミングや、その選択、そして迷いのなさ、どれもが素晴らしいです」
「ち、ちゃっかり見た目も……ありがとうございます」
「私はその実力を私のギルドで是非発揮してほしいです」
「……はい。歩みを止めて申し訳ありません」
「いえいえ。私が急ぎ過ぎたのがいけないのです。ギルドホームを七層に移したので、すぐ近くにありますよ」
「そうなんですか」
「私達は常に最前線にいないといけませんから」
その度にギルドを移動させてたら大変だろうに……とは言わないでおいた。
しばらく歩くと、怪しい雰囲気を醸し出した場所を発見した。
「ここが私達のギルド、先駆者の集いです」
「は、はい」
そうして私は見た目がオンボロアパート並みのギルドに足を踏み入れた。
「うっ……」
中は見た目に違わず謎の臭いがした。気持ち悪い。
「あ、すいません。清掃班!早く薬品を片付けなさい。初めが大切だというのにこんなところだと思わせてはいけません」
「シー君その子はー?」
「か、カナデさん。シー君というのは止めて下さいと……」
「いいじゃない別にー。シー君はシー君なんだからぁー」
「これじゃ威厳も何も無くなってしまうじゃないですか」
「威厳なんていらないじゃない」
シー君ことシリウスさんはわなわなと震えていた。
それを見て桃色のウェーブのかかった綺麗な髪の女の人、カナデさんが微笑む。凄く落ち着いた印象を受ける。
大人びていながら可愛らしい笑顔だ。
「あ、わたしはぁ、カナデ・ユウっていうんだぁ。よく間違えられるけど〜カナデが苗字で〜ユウが名前ね〜」
そして落ち着いたというよりゆっくりし過ぎな気がする。
「呼ぶのはどっちでもいいよ〜」
「カナデさん。彼女は今日から私達のギルドに入ってくれるヘレナさんだ」
「あ、私、ヘレナで良いです。さん付けとかだと、ちょっと落ち着かないので」
「わかりました。ということでヘレナですカナデさん」
「よろしくね〜ヘレナちゃん」
カナデさんはゆっくりと手を振っている。
「よろしくお願いします!」
ここは多分人殺しはいない。なら、私も怖がる必要はないな。
「ヘレナさ……ヘレナの……やっぱりさん付けはダメですか?私はあんまり慣れないので、違和感があって……」
「そういうことなら大丈夫ですよ」
「ありがとうございます。で、ヘレナさんの入るパーティの仲間をお呼びしますね」
「あ、でも良いですよ、そんな皆さんご都合もあるでしょうし」
「いや彼らは大丈夫だと思います」
と彼はメールを打ち始める。
「私の紹介なんかの為に集合なんてしてもらって良いのかなぁ」
「良いのよぉ。ガー君とかミー君とかポーちゃんは皆暇だからねぇ」
「そうなんですか」
ガー君ミー君ポーちゃん。最後に至ってはなんか残念な名前になりかけている気がする。
「あ、そういえばカナデさんは職業なんなんですか?」
「わたしぃ?わたしはねぇ魔法剣士よぉ。状況によって前衛後衛で戦ってるわね。好きな魔法はフロストジャベリンっていう水属性の魔法よぉ。凄く便利な魔法なの。目標を決めれば後は勝手に当たりに行ってくれるしねぇ」
「しゅ、種族はなんですか?」
「わたしはねぇ。ヘレナちゃんと違って耳尖ってないけど、エルフなんだぁ。ハーフエルフ〜。エルフよりも身体能力は高くて人間よりもマナが多かったり、INTが高いのよ。代わりにどちらも特化できないから、力押しに弱いかなぁ」
「ハーフエルフかぁ」
でも私は元々運動神経ないから、エルフで良かったかな。
「妖精は……」
「妖精はこの子」
カナデさんが手を差し出し、握り拳をゆっくりと解いていくと小さな光が生まれた。
「蛍?」
「せ〜かい〜蛍のほたるんで〜す」
「どんな能力があるんですか?」
「洞窟とかで光ってると綺麗なんだよねぇ〜」
松明代わりということか。蛍のほたるんはカナデの周りをぐるぐると回っている。なんとなく嬉しそうな光を発しているほたるんを見ても、頭の裏では余計なことを考えようとする自分がいる。
私はそれを打ち消すようにカリンを紹介する。
ポンっと肩の上に出現したカリンはそのまま私の頭に登り、ぺこりと一礼した。
「カリンです。戦闘力はないです。ペットみたいな感じです」
「そうなのぉ〜。ほたるんご挨拶〜」
カナデさんはほたるんに促すと、ほたるんは私の頭上まで来て、カリンの周りをぐるぐると回る。なんだろうか。心なしかこの光、温かい。
「微弱だけど、回復効果を含んでる光なのよ。辛い事とかあると、そうやって光って慰めてくれるの」
「この子、凄いんですね……」
「よし。皆今すぐ来るって言ってましたから、そこのソファにでも座って待ちましょう」
カナデさんと私、そしてシリウスさんと談笑していると一人のおじさんがやってきた。
「おう!新入りってなぁどいつだ?」
「ガー君〜おは〜」
「おは〜ってカナデ、今昼だろう」
「でも、おは〜」
「はいはい。んで?どいつだってこの子か?」
「わ、私、ヘレナと言います!エルフの魔法使いで、支援魔法を重点的に使ってます!」
「俺はガンケツ。人間のタンクで、武器は大斧。妖精はコイツ土竜のドリューだ。その辺の若造には負けんぞ。そしてカナデ。ガー君もやめろ」
「だってぇ〜ガー君はガー君でしょう?」
「でしょう?じゃないわ。全く。他は来とらんのか?」
「まだだけどきたわぁ」
「ん?」
「やほー!元気ー!?」
「遅れてすいません。ちょっとポチが、走り回り過ぎて、はぁ、はぁ」
犬耳で茶髪の元気な少女と緑髪の恐らくエルフの少年がきた。少年の方はなんとなく苦労してそうだ。
「新入りは君かぁー!?」
「は、はい!」
「私はポチさ!種族は見ての通り獣人で、シーフやってるよ!私は何でも盗んじゃう!モンスターでも人間でも何でもね!そ・し・て!貴女のハートすらーー」
「それは盗まなくていいから!ってかポチ!今人間も対象に入ったよね!?大丈夫!?盗んでない!?お金とかアイテムとか盗んでない!?あ、てか最近僕のお金が……」
「落としたんじゃなーい?ミモリどんくさいから」
「落とすか!!」
今まで息を整えていた少年が勢いよくツッコミをいれ始める。息切れってもしかしてこっちのせいなんじゃないかな?
「あ、ごめん。僕はミモリ。種族はエルフで錬金術士をやってるんだ」
「ようするにアイテム作りが専門。パーティに入ってるのはそれがこのギルドで誰よりも優秀だからってわけ」
「戦闘もそれなりにできるよ」
「まぁねぇ。こないだなんか落としたら爆発する回復ポーションとか作ってたもんねぇ」
「あ、あれは、爆弾作ってた時にポチが薬草なんかいれるから!」
「でも面白かったでしょ?」
「ポチだけね!!」
爆発ポーション……なんか怖いな。
というかあっという間にそこだけ二人の世界になっている。他の三人は二人のやり取りを見守っている。
「秘密ですよ?」
「はい?」
シリウスさんがこちらの視線に気付き、いきなりそんなことを言ってくる。何が秘密なのか。
「彼ミモリはね、ポチに惚れてしまったんだ。彼女の言ったとおり、ミモリは心を奪われてしまったんだよ」
「それがバレてないと彼は思ってるということですか?」
「その通り。ちなみにポチにもバレてる。そしてポチも満更でもない様子なんだ。だから私達はこの二人を見守っているわけだ。ちなみに二人はリアフレではない。ここで出会った人間だ」
「ここだから出逢えたということですね」
「そうだね。だからこの世界、FSOは人殺しも身近にありながら、こういった出逢いも存在する。そんな世界なんだ。だから私はこの世界を全否定はしていない。認められない点も多々あるが、生きているという点では現実もここも、そう変わらないんじゃないかな」
「……」
「まぁ何が言いたいかと言うと、私達はこうやって出逢えた。PKにも遭わず、モンスターにもやられず、その上で出逢えた仲間になったんだ。だからヘレナさん。怖いことや嫌なことがあったら迷わず相談して下さい。私達は貴女を見捨てたりしません。殺したりもしません」
「はい」
「と、そろそろ二人も言い合いはやめて、こちらの会話に参加しなさい」
「はーい」
「はい」
色んな事を言い合っていた二人も改めてこちらを見た。
「では全体にもう一度自己紹介をどうぞ。ヘレナさん」
「私達はまだ聞いてないからもう一度ではないけどねー」
「シリウスさん達は聞いてるんだから良いんだよ!」
「え、と、私はエルフの魔法使いで、ヘレナって言います。支援魔法を会得してます。妖精はこの子、リスのカリンです。こ、これからよろしくお願いします!」
「はい。よろしくお願いします。ヘレナさん」
それから、今までどう暮らしてたのかとか、ギルドのルールとかを話し合い、その日を終えた。
これからちょいちょい登場します。
キャラ紹介の時考えてなかった話だから
キャラ紹介に載ってないキャラ出ました。
そして昨日更新するとか言って
思いっきりしてませんでしたすいません。




