おおおおお見事に通じねえ!
カズマ「俺の真の力を見せてやる!」
「ぎゃああああ!」
「主!下がってください!」
「嫌だ!せっかく、せっかくちょっとカッコつけられたのに!二撃目で霧散するとか!どんだけ!?どんだけ俺魂の強度ないの!」
「主危ねえからホントマジ下がってくれ!ここは俺とシュカでやるから!主むしろ謎解きでもしてろよ!!」
「で、でも俺がいなかったらお前ら」
「足手まといがいなくなって本気でやれる!」
「ひでぇ!」
まぁ確かに現状戦力外過ぎてどうにもならないのだが。ギルの指示に従い、先程の扉に手をつく。
「ここに……何かが……」
「ふざけてねぇではよ入れ馬鹿主!」
「おま、雰囲気ぶち壊すんじゃねぇよ!今秘密が明らかになるって感じの場面なんだからよ!今俺それらしい雰囲気出してたろ!出してたろ!?」
「知るか!」
全く。不粋な奴め。
「隊長!」
「んーーあがっ!」
ギルがブラッド・リッチ二体に殴り飛ばされ、俺の隣まで転がってきた。
「ギル!!」
「……っつー。主、ホントマジ早くしてくれ。あいつらの中の一体すげぇ強くなってる。アリスと戦ってた一体と似てる」
「大丈夫なのか!?」
「知らねぇよ。俺達が死ぬか生きるかは主次第だ」
「そうか……ポーションだ。これのんどけ。行ってくるぜ」
「キメ顔すんなきめぇ」
「お前最後までひでぇな!!」
ってなわけで、俺はその扉をーー開けた。
「なんだよ、ここ……」
人が山のように積み重ねられていた。皆所々赤黒い、血の跡があったり、身体が欠損していたりする。
ーー死体の山。
そう死体の山だった。
臭いはない。
部屋の角にある青い炎がそれを照らしていた。
「あ、あぁあああ……」
その中に見知った顔を見付ける。ナタリアさんだった。
他にもあの顔半分の紳士や顔面のないメイドもいる。
「なんで、こんな……!うわっ」
何かにつまずいて、尻餅をついてしまう。
「ってぇ。なんだよこ……れ」
千切れた腕だった。血は出ていない。だが、その断面は肉も露わになっており、あまり直視できるものではなかった。
不意に天井を見ると、大きな魔法陣が書かれていた。
「なんだ、これ」
鑑定を使う。
??
鑑定不可。
要解析。
解析?なんだよ解析って。
「なんなんだよこれは!!」
死体の山を前に怒鳴っても仕方ない。何かないか……。
死体の山を迂回して部屋の奥に行く。
「また扉……」
その扉は比較的綺麗で、使われている物の質も良いようだ。
でもここは何年もあるんじゃないのか?なんでこんな新しいんだろうか。
「とりあえず、開けるか」
キイイと音を立てて開いた扉の先には真っ暗な空間があった。
「うを」
手を伸ばすと、その闇に溶けていくような、そんな錯覚すらしてしまう。
「えっとティンダー」
指の先に炎を灯す魔法だ。それで辛うじて部屋を照らす。
地面が赤黒い。血か?
ゆっくりと部屋の奥へ進むと、一人の女の子が椅子に座っていた。その子も、死んでいるのだろう。首から下が刺し傷で一杯で、恐らく白かったであろうドレスは真っ赤に染まっている。
「ユティ……」
無意識に俺は呟いていた。ゆっくりと近付き、その血の気の失せた頬をティンダーを使っていない方の手で撫でる。冷たくて、ふにふにしている。
「ユティ……」
なんとも言えない感情が、俺の心を蝕む。レドウの記憶を見たからか、この目の前の死体がとても大切な物に思えた。
「……んで、どうすりゃいいんかな」
呟くが答える者はいない。
「ユティはどうしたい?」
聞いても意味はない。
今もシュカ達が戦っている。急がなくちゃいけない。それはわかっている。わかっているが、まるでこの空間が急ぐことを拒むかのように、俺の思考を遅めている。
だが、それを打ち消すように扉の外で爆音がした。
「あいつら、大丈夫なのか?!」
俺は怠く感じる身体を動かし、一度外に出るとそこにはライフバーが半分を切り、膝をつくシュカと、レッドゾーンまで行き、倒れているギルがいた。
「主……私達はもう、無理です」
「シュカ!んなこというな!こっち来い!」
シュカは首をフルフルと振り、その場から離れない。
「命令だシュカ!こっちに」
来いと言いかけた時更に爆音。今度はブラッド・リッチ達が吹き飛ばされていた。
「カズマ様!!」
「アリス!!」
ちょっと目に毒な格好をしているアリスがいた。それに続いてジャックやサイカさんも来た。
「よっし。さっさと終わらせるよ!」
「はい!」
立ち上がろうとするブラッド・リッチにアリスが一瞬でドロップキックを当てる。それだけでブラッド・リッチの身体は数メートル程吹っ飛んだ。
「リン!」
「ーーーーーーーーー!!」
リンと呼ばれた赤頭巾の少女は魔法を唱えるとジャックやサイカさんの身体を光で包んだ。二人は光が身体に染み込んだと同時に走り出した。
「食らいな!紅蓮龍剣!」
「天衝紅蓮拳!!」
それぞれが二体のブラッド・リッチに技を当てる。
「ゴァアアアッ!」
アリスに蹴り飛ばされたブラッド・リッチは起き上がり、咆哮をあげるが、誰一人として怯むことはない。
「神技、天刑!!」
バチィッと大きな雷がブラッド・リッチに落ちた。
ビクビクとブラッド・リッチが震えていた。……麻痺のようだ。
「お二人!もう少し抑えられますか!!」
「大丈夫だよ!むしろ私達のが優勢だ!」
「ではそのままお願いします!カズマ様、すぐ終わらせますので、一分だけ時間をください」
「あ、あぁ」
一分。それでブラッド・リッチ達がやられるとは思えないが、アリスを信じて頷いた。
アリスは一度優しく微笑み、また鋭い目付きでブラッド・リッチを見据える。
「行きます!」
アリスは跳んだ。一回でブラッド・リッチの懐まで行き、剣で斬りあげる。
「ガアッ」
ブラッド・リッチは宙返りして、距離をとりつつ、着地するが、アリスはそれを狙っていたかのようにほくそ笑み
「神技、散り桜!!」
アリスの周りに桜色の棘が浮かんでいく。その数数百。
いやぱっと見すげぇあるし。
「散れ!」
アリスの命により桜色の棘がブラッド・リッチに降り注いでいく。
「ゴァアアアッ!」
ブラッド・リッチもエニグマの鎧を使って防御するが、数が多過ぎて鎧ごと貫かれていく。
「爆ぜろ!!」
そして桜色の棘はブラッド・リッチに、突き刺さったまま連続して爆発した。
ライフバーは三割をきっている。すげぇな。
「神技、瞬神」
そして風が吹いたかと思えばブラッド・リッチはその身を崩壊させ、消えた。
反対側にいた二体のブラッド・リッチもライフバーが無くなっていた。
「マジかよ……」
「一分、です、はぁ、はぁ」
アリスがぐったりとした表情で目の前に立っていた。
「アリス!」
俺はアリスに近付き、その細く、引き締まった身体を抱きしめた。
アリス特有の甘い匂いと、ちょっとだけ汗の匂いがする。
「お疲れ」
「はい」
アリスはその場にへたり込んだ。
「大丈夫か?」
「少し、疲れただけですよ」
俺もその場に座り、皆を手招きしてその場に座らせる。
ブラッド・リッチは復活してこない。ならさっさと話し合いだ。
「さて、とりあえずひと段落ついたわけだが……」
「カズマさんも見たんすね」
「あぁ。ってかやっぱあの図書室の壊れっぷりはお前らが原因か」
「そうっすね。それはともかく。ナタリア。まず、ここの存在を知ってたっすか?」
「……いえ、始めて知りました。ただ、ここに来た時、懐かしいような、そんな感覚がしました」
「懐かしい……?」
「はい」
「あんまり答えでなさそうだから話進めるけど、あの部屋には大量の死体があった。その中には」
ジャックと俺の視線に気付いたのか、ナタリアは息を飲む。
「ナタリアもいたんすよ。他の人も。皆死体だったっすけどね」
「そう……ですか」
「でだ。あそこさ、天井に魔法陣あんじゃん」
「え?そんなもんあったっすか?」
「え?あんなん普通わかるだろ?」
「ちょっとカズマさん意味わかんないっす」
「とりあえずお前だけこっち来い。な?な?!」
俺はジャックの腕を掴むと、無理矢理死体部屋に入った。
「な!?なんすかこれ!?来た時はこんなの……ってか灯り!灯りなんてなかったっすよ!なんでこんなんなってるんすか!?」
「知らねえよ!でさ、あれ、鑑定しても何がなんだかわからねぇんだよ。でもお前来た時無かったんなら、お前もわかるわけないか……」
「ちょっと待ってくんさい」
ジャックは魔法陣を見つめて数秒すると、?って感じの表情になる。
「この魔法陣、死体が無くならないように、腐らないようにしてあるだけっすね。ただスピリットマジシャンやその魂に共鳴する者がくることによってその魔法陣は姿を表すらしいっすそして、この魔法陣を破壊することによって、ここの人達の魂は完全に解放されるとあるっす」
「そうか……解放、か……よし。一回ちと待っててくれ」
「はいっす」
「んーとな」
連れて行く人間を選ぶ……一番疲れてなさそうな奴は……
「すんませんサイカさん。ちょっと一緒に来てくれませんか?」
「なんだい?まぁいいけど」
「なんもないと思いますけど一応」
「なんかあるならさっさと済ますよ!」
「あ、はい」
ズンズンと先に歩き出してしまったサイカさん。ってか今から行く場所知らないよなあの人。
「ちょ、ちょっと」
ということで今からレドウの魂の書を触りに行くぜ!
見事に役に立ちませんでしたカズマさん。




