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ネコネコランドへようこそ  作者: 香月 深青
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第五十三話 新しいお友だちが来る日


朝のネコネコランド。


青い空には、白い雲がゆっくりと流れていた。


やさしい風が花畑を渡り、色とりどりの花が、まるで誰かを迎えるように揺れている。


お城の丘では、ミルクとリオンが並んで空を見上げていた。


リオンが穏やかに微笑む。


「今日は来る日なんだね。」


ミルクは空を見つめたまま、小さくうなずいた。


「うん。」


「きっと、もうすぐ。」


その声には、新しい出会いを待つ優しさが込められていた。


そこへ、チャイが元気いっぱい駆け上がってくる。


「ミルク! リオン!」


「何してるにゃ?」


ルナも。


マロンも。


シロップも。


インクも集まってきた。


みんなが空を見上げた、そのときだった。


青い空の向こうに、小さな光が生まれた。


ふわり。


ふわり。


たんぽぽの綿毛のように、風に揺れながらゆっくりと近づいてくる。


誰も声を出さない。


風も。


花も。


鳥たちまで静かになり、その小さな光を見守っているようだった。


やがて光は丘へ舞い降りる。


やさしくほどけた光の中には、一匹の小さな子猫がいた。


白と茶色の、小さな子猫。


不安そうに体を縮め、知らない景色を見回している。


知らない空。


知らない風。


知らない匂い。


小さなしっぽだけが、不安そうに揺れていた。


チャイは思わず駆け寄ろうとする。


けれどミルクは、そっと微笑んで首を振った。


「大丈夫。」


その一言だけで、チャイも静かに足を止めた。


ミルクはゆっくり歩み寄る。


急がない。


驚かせない。


子猫と同じ目線になるよう、そっとしゃがみ込んだ。


「こんにちは。」


春の日だまりのような、やわらかな声だった。


子猫は少しだけ身を縮める。


ミルクは変わらない笑顔で話しかける。


「もう大丈夫。」


「ここには怖いことは何もないよ。」


「安心して。」


その声に包まれるように、子猫の肩から少しずつ力が抜けていく。


リオンはその様子を見つめ、ほっと息をついた。


「待っていたよ。」


ミルクはうれしそうに微笑む。


「うん。」


「会えてよかった。」


チャイはそっと前へ出た。


今度はいつもの元気な声ではなく、やさしい声だった。


「ぼくはチャイにゃ。」


「よろしくにゃ。」


ルナが微笑む。


「ようこそ。」


マロンは大切そうに花を一輪差し出した。


「きれいだったから。」


シロップはお気に入りのおやつを半分こ。


「一緒に食べよう。」


インクも少し照れながら口を開く。


「……安心していい。」


子猫はみんなの顔を見つめた。


どの顔も、あたたかく笑っている。


ミルクは子猫をそっと抱き上げた。


「この子は、日本から来た猫さんなの。」


やさしく背中をなでる。


「いっぱい頑張ってきたんだね。」


子猫は小さくうなずいた。


何度も後ろを振り返る。


誰かが呼んでくれる気がして。


誰かが迎えに来てくれる気がして。


でも、そこには青い空が広がっているだけだった。


ミルクは何も聞かなかった。


何があったのかも。


どうして一人になったのかも。


ただ、そっと抱き寄せる。


小さな体は、まだ少し震えていた。


「もう振り返らなくていいよ。」


「ここが、あなたのおうちだから。」


子猫の目に、小さな涙が浮かんだ。


けれど、その涙はもう寂しい涙ではなかった。


チャイがにっこり笑う。


「今日から、お友だちにゃ!」


「いっぱい遊ぶにゃ!」


そう言って駆け出した。


「待ってー!」


リオンも笑いながら後を追いかける。


ルナも。


マロンも。


シロップも。


インクも。


子猫は少しだけ迷ってから、一歩踏み出す。


そして、もう一歩。


やがて笑顔で走り出した。


「待って!」


その声は、さっきよりずっと明るかった。


振り返ったチャイが、大きく手を振る。


「こっちにゃーー!」


子猫は思いきり駆け出す。


風がやさしく毛並みを揺らし、小さな笑い声が青空へ広がっていく。


遠くからチャイの元気な声が聞こえた。


「ミルクー! 早く遊ぶにゃーー!」


ミルクとリオンは顔を見合わせて笑う。


「今行くね。」


ミルクはもう一度、子猫を見つめて優しく微笑んだ。


「おかえり。」


子猫も少し照れくさそうに笑う。


その笑顔は、もうネコネコランドの大切な家族の笑顔だった。


ネコネコランドには今日もまた――


「おかえり」のぬくもりが、新しい家族をやさしく包んでいた。

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