第五十二話 かげふみにゃ!?
朝のネコネコランド。
青い空には、まぶしいお日さま。
広場には、やさしい朝日が降りそそいでいた。
チャイは鼻歌を歌いながら歩いている。
「るんるんるーんにゃ〜♪」
そのとき。
足元に、黒い猫が歩いていた。
「……にゃ?」
チャイはぴたりと止まる。
黒い猫も止まる。
右へ一歩。
黒い猫も右へ一歩。
左へ一歩。
黒い猫も左へ一歩。
チャイは目をまん丸にした。
「ついてくるにゃーーー!」
ぴょん!
走る。
黒い猫も走る。
「追いかけてくるにゃーー!」
「助けてにゃーー!」
チャイは広場をぐるぐる逃げ回る。
「どうしたの?」
リオンたちが慌てて駆け寄る。
チャイは足元を指さした。
「黒い猫に追いかけられてるにゃ!」
みんなは下を見る。
「あはは!」
リオンが笑った。
「それは影だよ。」
「……かげ?」
チャイは首をかしげる。
リオンが手を振る。
影も一緒に手を振る。
チャイも手を振る。
影もふりふり。
「本当にぼくにそっくりにゃ!」
シロップも足元を見る。
「黒いぼく。」
ルナもうなずく。
「ちゃんと同じ動き。」
マロンは影へ向かっておじぎ。
「こんにちは。」
もちろん影もぺこり。
「おじぎした!」
チャイは大喜び。
「遊ぶにゃーーー!」
リオンがにっこり笑う。
「じゃあ、影ふみしよう!」
「かげふみにゃ!」
みんなは一斉に走り出した。
「リオンの影、発見!」
チャイがぴょん!
「残念!」
リオンはひょいっとかわす。
「速いにゃーー!」
マロンもルナの影を狙う。
「えいっ!」
「惜しい。」
ルナはくるり。
シロップは自分の影を踏もうとして、その場をぐるぐる。
「踏めない。」
「自分の影は難しいよ!」
リオンは笑った。
チャイは今度はインクを発見。
「今にゃ!」
ぴょーん!
「……残念。」
インクは半歩だけ横へ。
「また逃げたにゃーー!」
その様子がおかしくて、みんな大笑い。
チャイは負けじと走り回る。
「みんなの影を踏むにゃーー!」
ぴょん!
「あっ!」
転んだ。
ころん。
「いたた……。」
すると影まで転んだみたいに見えて、
「影も転んだにゃ!」
みんなはまた大笑い。
そのとき。
ふわり。
白い雲がお日さまをかくした。
「あれ?」
影が消えた。
チャイは大あわて。
「黒い猫がいなくなったにゃ!」
「どこへ行ったにゃーー!」
きょろきょろ。
草むらものぞく。
木の後ろものぞく。
リオンは笑いながら空を指さした。
「見て。」
雲がゆっくり流れていく。
ぱあっ。
お日さまが顔を出した。
「あっ!」
影が戻ってきた。
「帰ってきたにゃーー!」
チャイは影へ向かって手を振る。
「おかえりにゃ!」
影も元気に手を振っていた。
夕方。
お日さまが西の空へ傾くと、みんなの影はながーく伸びていた。
「見てにゃ!」
「足が長くなったにゃーー!」
チャイは大はしゃぎ。
リオンが笑う。
「影だけね。」
「えーーー!」
チャイは長い影を追いかけて走り出す。
「待つにゃーー!」
影も逃げる。
「また逃げたにゃーー!」
リオンも。
ルナも。
マロンも。
シロップも。
インクまで小さく笑いながら後を追いかけた。
夕焼け色に染まった広場には、今日も元気な笑い声が響いていた。
ネコネコランドには今日もまた――
夕焼けにのびた影と笑い声が、仲良く並んで家路についていた。




