第四十六話 だれかのためのお花にゃ
朝のネコネコランド。
花畑には赤や黄色、青や白の花が色とりどりに咲き、やさしい風がふんわりと吹いていた。
チャイは花の間をぴょんぴょん歩いている。
すると、足元で小さな黄色い花が揺れていた。
「わあ!」
「きれいにゃ!」
チャイはうれしそうに手を伸ばす。
そのときだった。
「待って。」
リオンがやさしく声をかける。
「そのお花、誰かにプレゼントしたら、もっと喜んでもらえるかもしれないよ。」
チャイは首をかしげた。
「プレゼント?」
「うん。」
「きっと、お花をもらった人も笑顔になるよ。」
チャイの目がぱっと輝く。
「笑顔になるにゃ!」
「じゃあ、お花を届けるにゃ!」
みんなも笑顔でうなずいた。
赤い花。
青い花。
白い花。
黄色い花。
ルナがきれいに束ね、
マロンが葉っぱを添え、
シロップは一番大きな花を見つけて大喜び。
「これ!」
インクも少し照れながら、小さな青い花を一本そっと加えた。
やがて、とてもかわいらしい花束ができあがる。
「誰にあげるにゃ?」
チャイが花束を抱えながら聞く。
みんなで町を歩き始めた。
パン屋さんかな。
魚屋さんかな。
おじいさん猫かな。
楽しそうに話していると、公園のベンチで小さな子猫がしょんぼり座っていた。
リオンがしゃがみ込む。
「どうしたの?」
子猫は小さな声で答えた。
「お母さんが風邪をひいて寝てるの。」
「元気がないの……。」
チャイは迷わず花束を差し出した。
「これ、どうぞにゃ!」
「お母さんに元気になってもらうお花にゃ!」
子猫は目をまん丸にした。
「ほんとに?」
「もちろんにゃ!」
子猫は花束を大事そうに抱えると、何度も「ありがとう」と言って帰っていった。
チャイたちは手を振って見送る。
「元気になるといいにゃ。」
「うん。」
リオンも笑顔でうなずいた。
その日の夕方。
みんなが広場で遊んでいると、小さな足音が聞こえてきた。
「みんなー!」
振り向くと、朝の子猫がお母さん猫と一緒に立っていた。
お母さん猫はまだ少し疲れた顔をしていたけれど、やさしく微笑んでいた。
「今日は本当にありがとう。」
「お花を見たら、心まで元気になりました。」
「それに、この子が嬉しそうに帰ってきた顔を見ていたら、私まで笑顔になれたんです。」
チャイは照れくさそうに笑う。
「えへへ。」
「ぼく、お花をプレゼントしたの初めてにゃ。」
お母さん猫は花束を胸に抱いた。
「お花も、とても嬉しかったです。」
「でも、それ以上に、こんなにやさしい気持ちを届けてもらえたことが、一番の贈り物でした。」
みんなの顔にも、自然と笑顔が広がる。
帰り道。
夕焼けが花畑をやさしいオレンジ色に染めていた。
チャイがぽつりとつぶやく。
「お花って、不思議にゃ。」
「もらうのも嬉しいけど……。」
「誰かにあげると、もっと嬉しいにゃ。」
リオンは微笑みながらうなずいた。
「うん。」
「優しい気持ちも、一緒に届くからだね。」
風が吹く。
花畑の花が、ゆらゆらと揺れた。
まるで「ありがとう」と手を振っているみたいだった。
ネコネコランドには今日もまた――
優しい気持ちが、花から花へと、そっと咲き広がっていた。




