第四十二話 王女さまの変装にゃ!?
朝のお城。
ミルクは鏡の前で、自分の姿を見つめていた。
「たまには、普通の猫として町を歩いてみたいな。」
そこへリオンがやってきた。
「どうしたの?」
「町へ行くと、みんな王女さまって気をつかってくれるでしょう?」
「もちろん嬉しいの。」
「でも今日は、気をつかわずに、みんなと遊んでみたいな。」
リオンは少し考えると、ぱっと笑顔になった。
「じゃあ、変装しよう!」
しばらくして、お城の部屋から出てきたミルクは、大きな麦わら帽子をかぶり、ふんわりしたマントを羽織っていた。
「どうかな?」
リオンは思わず拍手する。
「かわいい!」
「これなら誰にも気づかれないよ!」
ミルクも嬉しそうに笑った。
「行こう!」
広場では、チャイたちが元気いっぱい遊んでいた。
「おーい!」
チャイが駆け寄ってくる。
帽子をかぶったミルクを見ると、目を丸くした。
「……誰にゃ?」
ミルクは心の中で小さくガッツポーズ。
(やった! 変装成功!)
ところが次の瞬間。
シロップが、くんくんと近づいてきた。
「ミルク。」
「えっ?」
「ミルクのにおい。」
ルナが小さく笑う。
「帽子をかぶっても分かるよ。」
インクがぽつり。
「……三秒だった。」
「早すぎるにゃー!」
リオンは思わず笑い出した。
ミルクも照れくさそうに笑う。
「すぐにばれちゃった。」
それでもチャイは大張り切りだった。
「変装したまま遊ぶにゃ!」
「見つからないように歩くにゃ!」
みんなで町へ出かける。
パン屋さんの前を通ると、お店のおじさんがにこにこ笑った。
「今日は帽子がおしゃれだね、ミルクちゃん。」
「やっぱり分かっちゃうんだ。」
魚屋さんでは、新鮮なお魚を見せてもらう。
「王女さまにも、おすすめですよ。」
ミルクは笑いながら首を振った。
「今日は王女さまじゃなくて、変装中なんだけどな。」
「それでもミルクちゃんはミルクちゃんだからね。」
魚屋さんも優しく笑った。
そのあとも、花畑を歩いたり、公園で鬼ごっこをしたり。
みんなはいつもと変わらず笑って遊んだ。
夕方。
オレンジ色の空を見上げながら、ミルクがぽつりとつぶやく。
「今日は、とても楽しかった。」
「誰にも気をつかわせずに遊べた気がする。」
するとリオンが優しく笑った。
「ううん。」
「みんな、最初から気づいてたよ。」
「え?」
「でも、ミルクが楽しそうだったから。」
「変装したまま付き合ってくれたんだよ。」
ミルクは少し驚いてから、ふわりと笑った。
そのとき、チャイが元気よく飛びついた。
「そうにゃ!」
「王女さまでも!」
「変装してても!」
「ミルクはミルクにゃ!」
そのひと言に、みんなが笑顔になる。
ミルクは帽子を脱いだ。
夕日に白い毛がきらりと輝く。
王女さまだから大切なんじゃない。
ミルクだから、一緒に笑いたい。
ネコネコランドのみんなは、ずっとそう思っていた。
ネコネコランドには今日もまた――
笑顔という名の宝物が、ひとつ増えていた。




