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ネコネコランドへようこそ  作者: 香月 深青
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第三十五話 虹の下には何があるにゃ!?

雨が上がったあとのネコネコランドは、いつもより少しだけ特別だった。


空気は洗いたてみたいに澄んでいて、草の先には小さな雫がきらきらと光っている。

石畳にはまだところどころ水たまりが残り、空の青さをそのまま映していた。


木の葉から落ちるしずくが、ぽとん、ぽとん、とやさしい音を立てる。


風はひんやりしているのに、どこかあたたかい。


そんな空を見上げたチャイが――


ぴたり、と動きを止めた。


丸い目が、みるみる大きくなる。


「……みて」


小さくつぶやいた次の瞬間。


「にじにゃーーーーー!!」


大きな声が、広場いっぱいに響いた。


空には、大きな虹がかかっていた。


赤、橙、黄、緑、青――

やわらかな色の橋が、空の端から端へとゆっくりと伸びている。


その美しさに、みんなもしばらく言葉を失った。


ルナがそっと目を細める。


「……きれい」


マロンは、空を見上げたまま胸の前で手を組む。


「絵本みたい……」


シロップはきらきらした目で、虹をじっと見つめていた。


「……あそこ、行きたい」


そのひと言に、チャイが勢いよく飛び上がる。


「行くにゃーー!!」


しっぽをぴんっと立てて叫ぶ。


「虹の下には宝物があるにゃ!!」


「えっ、そうなの!?」


リオンが思わず聞き返す。


チャイは胸を張る。


「あるに決まってるにゃ!」


「決まってるんだ……」


半分あきれながら笑うリオンの横で、ミルクが空を見上げていた。


やわらかな風に白い毛が揺れる。


そして、にこっと笑う。


「……行ってみるにゃ」


「ミルクまで!?」


リオンの声が裏返る。


でも、その顔はどこか楽しそうだった。


インクが静かに虹を見る。


「……宝物がなくても、悪くない旅になりそうだ」


そのひと言で、もう決まりだった。


「出発にゃーーー!!」


チャイが先頭で走り出す。


「待ってってば!」


リオンも笑いながら追いかける。


そのあとを、みんなが続いた。


石畳を駆け抜け、花畑の横を通り、小さな丘を越えていく。


途中、大きな水たまりを勢いよく飛び越えようとしたチャイが――


つるっ。


「にゃーー!?」


見事におしりから着地。


びしゃん。


水しぶきが飛んで、近くにいたリオンまでびしょぬれになる。


「冷たっ!」


「あははは!」


笑い声が広がる。


そのあと、シロップがふわふわ飛ぶ白い蝶を追いかけて、危うく道をそれそうになり、

マロンは草むらの中で四つ葉のクローバーを見つけて大喜びし、

リオンは低い枝に気づかず頭をごつん。


「いたっ!」


「前見て歩くにゃ」


ミルクがくすくす笑う。


インクだけは、最後まで静かに、でも少しだけ口元をゆるめながら歩いていた。


やがて、みんなは高い丘の上へたどり着く。


そこで、思わず足を止めた。


目の前いっぱいに――


七色にきらめく花畑が広がっていた。


雨粒をまとった花びらが、陽の光を受けて宝石みたいに輝いている。

風が吹くたび、赤も青も黄色も紫も、きらきら揺れて光る。


まるで、虹がそのまま地上に降りてきたみたいだった。


「……わぁ……」


誰も、すぐには言葉が出なかった。


チャイも静かに見つめている。


シロップはそっと花に鼻を近づける。


「……いいにおい」


ルナは目を細める。


「……ここ、好き」


マロンは胸の前でぎゅっと手を握る。


「宝箱より、すごいかも……」


その声に、ミルクがやさしく笑った。


「宝物って――」


風が吹く。


花が揺れる。


みんなの毛も、やさしく揺れる。


「見つけるものじゃなくて、出会うものかもしれないにゃ」


その言葉に、みんなが静かにうなずいた。


虹の下に宝箱はなかった。


金貨も、宝石も、秘密の鍵もなかった。


でも――


胸の奥がきらきらするような景色と、

大好きな仲間たちとの笑い声が、そこにはあった。


それはきっと、どんな宝石よりも大切な宝物。


ネコネコランドの空には、まだ虹がかかっている。


まるで「よく来たね」と笑ってくれているみたいに、やさしく大きく――


みんなを包み込んでいた。


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