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ネコネコランドへようこそ  作者: 香月 深青
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第三十四話 ミルクのひみつの昼寝場所


お昼のネコネコランドには、のんびりとした時間が流れていた。


朝の大騒ぎがうそのように静かで、広場にはぽかぽかとした陽だまりが広がっている。

風が吹くたび、木々の葉がさわさわと揺れ、草の青い香りがふわりと鼻をくすぐった。


遠くでは、小さなお店から食器の触れ合う軽やかな音が聞こえ、どこかで鳥たちが楽しそうにさえずっている。


あたたかくて、やさしくて――

なんだか眠たくなってしまいそうな午後だった。


そんな中、リオンはふと首をかしげる。


「あれ……?」


広場を見渡しても、いつも真ん中にいるはずの姿が見えない。


「ミルクがいない」


そのひと言に、近くでごろんとしていたチャイが、ぴょこんと起き上がった。


「ほんとにゃ!?」


耳をぴんと立てて、きょろきょろと辺りを見回す。


ルナも静かに顔を上げる。


「……さっきまでいたのに」


マロンは少し不安そうに、しっぽの先をそわそわと揺らした。


「どこ行ったんだろう……」


そのとき。


みんなの少し後ろで、静かに空気のにおいをかいでいたシロップが、小さく口を開く。


「……におい、する」


「え?」


リオンが振り向く。


シロップは、すっと顔を上げて遠くを見た。


「ミルクのにおい」


その言葉に、チャイの目がきらんと輝く。


「探検にゃーーー!」


ぴゅーっと走り出す。


「あ、待って!」


リオンもあわてて追いかける。


石畳の道を抜け、小さな花畑の横を通り、きらきら光る小川にかかった木の橋を渡る。


風が少しひんやりして、葉っぱの影が道の上で揺れていた。


そして、たどり着いた先で――


みんなは思わず足を止めた。


そこには、大きな一本の木が立っていた。


枝は空へ向かって大きく広がり、青い葉のすき間から、木漏れ日がきらきらとこぼれている。

吹き抜ける風はやさしく、葉が触れ合う音は、まるで誰かが静かに子守歌を歌っているみたいだった。


その太い枝の上に――


ミルクがいた。


ふわふわのしっぽを体に巻きつけて、小さく丸くなり、気持ちよさそうに眠っている。


胸が、すぅ……すぅ……と静かに上下していた。


「わぁ……」


リオンは思わず声をもらす。


「すごく気持ちよさそう……」


チャイは目をまんまるにして見上げる。


「空の上で寝てるみたいにゃ!」


ルナは目を細める。


「……ここ、落ち着く」


マロンも木漏れ日の揺れる光を見上げながら、ふっと笑った。


「……なんだか、心まであったかい」


シロップはそっと木の幹に頬を寄せる。


「……好きなにおい」


みんなの声に気づいたのか、ミルクの耳がぴくりと動く。


ゆっくりと目を開けて、下に集まったみんなを見る。


それから、少し照れくさそうに笑った。


「……見つかったにゃ」


「秘密基地だったの?」


リオンが聞くと、ミルクは枝の上でゆっくり起き上がり、背中を気持ちよさそうに伸ばした。


太陽の光を浴びて、その白い毛並みがふんわり光る。


「ここはね――」


ミルクは、木漏れ日の向こうを見ながら言った。


「ひとりで眠る場所じゃないにゃ」


みんなが首をかしげる。


次の瞬間、ミルクはにっこり笑った。


「みんなで眠る場所にゃ」


一瞬の静けさ。


それから。


「乗るにゃーーー!」


チャイが勢いよく木を登る。


「早いよ!?」


リオンも慌てる。


ルナは静かに、でもしっかりと後を追う。


マロンも恐る恐る。


シロップは身軽にぴょんっと枝へ飛び乗った。


いつの間にか、インクまで静かに座っている。


そして最後に、息を切らしながらリオンも枝の上へ。


……広そうに見えた枝は。


気づけばまた、ぎゅうぎゅうだった。


「せまい……」


苦笑するリオンの肩に、ミルクがこてんと頭をのせる。


「これが落ち着くにゃ」


風が吹く。


葉が揺れる。


木漏れ日がみんなの上で、きらきら踊る。


少し狭くて。


少し重くて。


でも、胸の奥がぽかぽかあたたかくなる。


ネコネコランドには今日もまた――


みんなだけの、ひみつの居場所がひとつ増えたのだった。


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