第三十三話 朝までぎゅうぎゅう事件にゃ!?
朝の光が、やわらかく部屋の中へ差し込んでいた。
白いカーテンが風にふわりと揺れ、そのすき間からこぼれる陽だまりが、床の上に丸い光をつくる。
窓の外では、小鳥たちが楽しそうにさえずり、どこかのお店からは朝の仕込みを始める軽やかな音が聞こえてきた。
ネコネコランドの朝は、今日も穏やか――
の、はずだった。
「……く、くるしい……」
布団の奥から、かすれた声がもれる。
「……重い……動けない……」
小さくうめく声の主は、リオンだった。
昨夜、みんなで「一緒に寝るにゃ」と集まった結果――
朝になった今、リオンは完全に埋まっていた。
お腹の上には、気持ちよさそうに丸くなるミルク。
胸のあたりには、小さくすぴすぴ寝息を立てるシロップ。
右腕には、ぴたりと寄り添うルナ。
左側には、安心しきった顔で眠るマロン。
足元には、なぜか横向きに長く伸びているインク。
そして、その全部の上に――
どーん。
チャイ。
「……なんで上に乗るの……」
声を絞り出すように言うと、ちょうどそのタイミングでチャイが、ぱちっと目を開けた。
眠そうに目をこすりながら、ひとこと。
「……おなかすいたにゃ」
「起きて最初がそれ!?」
リオンが思わず声を上げた、その瞬間。
ぐぅぅぅぅぅ……
静かな部屋に、立派なお腹の音が響いた。
一瞬、空気が止まる。
みんなの耳がぴくっと動いた。
そして、視線が一斉に集まる。
じーーーっ。
リオンはあわてて首を振る。
「ち、違うよ?」
すると、もう一度。
ぐぅぅぅぅぅ……
今度はさらに大きい。
チャイが目を丸くして、それから大笑いした。
「お腹がしゃべってるにゃー!」
その声につられて、ミルクがくすくす笑う。
ルナも口元を押さえながら肩を揺らし、マロンまで小さく声を漏らして笑っていた。
インクだけは静かに目を開け、ほんの少しだけ考えるように天井を見てから、低い声でつぶやく。
「……見事な二重奏だ」
「きれいに言わないで!?」
リオンのつっこみに、笑い声がさらに大きくなる。
みんなが笑って、体を揺らして。
揺れて。
また揺れて――
ベッドが、みしっと小さく鳴った。
「あ……」
リオンが気づいたときには、もう遅かった。
ぐらり。
次の瞬間――
どさどさどさーーーん!
全員まとめて、ベッドから転がり落ちた。
「にゃーーー!」
「わあっ!」
「きゃっ」
「……あ」
「……うわ」
「ふにゃっ」
床の上に、見事な山ができあがる。
結局また、ぎゅうぎゅうだった。
しばらくの沈黙。
それから。
ぷっ。
くすっ。
あはははは!
わははは!
部屋いっぱいに笑い声が広がった。
ミルクが笑いながら、しっぽをゆらりと揺らす。
「……ベッドより、こっちのほうが広いにゃ」
チャイは元気よく飛び上がる。
「じゃあ今日から床で寝るにゃ!」
「増えてる! むしろ悪化してる!」
リオンが叫ぶ。
でも、その声も、みんなの笑いの中に溶けていった。
朝の光は、そんな様子をやさしく包み込む。
あたたかくて、にぎやかで、ちょっと苦しいけれど――
ひとりで眠るより、ずっと心地いい。
ネコネコランドの朝は、今日も平和で。
そして、思いっきり――
ぎゅうぎゅうだった。




