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ネコネコランドへようこそ  作者: 香月 深青
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第三十一話 ダンボール争奪戦にゃ!?


「なにこれにゃーーー!!」


広場の空気を切り裂くように、チャイの大きな声が響いた。


その視線の先にあったのは、ぽつんと置かれたひとつのダンボール箱だった。


四角くて、少しだけくたっとしている。

どこにでもありそうな箱なのに、不思議と目を引く存在感がある。


「……ダンボールにゃ」


ミルクが静かに言う。


「ダンボールだね」


リオンも同じようにうなずいた。


それだけのはずだった。


ただ、それだけのはずだったのに――


次の瞬間。


「入るにゃーーー!!」


チャイが勢いよく飛び込んだ。


「えっ」


すぽっ、と音がした気がした。


体がぴったり収まる。


ダンボールの中から、ひょこっと顔だけが出る。


「ここ、ぼくのにゃ」


満足そうな声。


「早すぎるよ!?」


リオンが思わず声を上げる。


そのとき、マロンが小さくつぶやいた。


「……いいな……」


視線は、まっすぐダンボールへ向いている。


ルナも、そっと近づいてくる。


「ちょっと……入りたい……」


その一言で、空気が変わった。


静かだった広場に、見えない火がついたみたいに。


「これは――」


ミルクがゆっくりと口を開く。


「戦いにゃ」


「なんでそうなるの!?」


リオンのつっこみは、すでに届いていなかった。


チャイは中で体勢を整え、ダンボールのふちに前足をかける。


「守るにゃ」


「要塞なの!?」


その直後だった。


「いくにゃ!」


ルナが思いきり飛び込む。


「ちょっと狭いにゃ!」


「当たり前でしょ!?」


中で体がぶつかり合う。


ぐい、ぐい、と押し合う音。


そこへ、マロンがそっと近づく。


少しだけ様子を見て――


「……入れる……?」


「無理だよ!?」


リオンが言った瞬間、マロンは静かに中へ入った。


ぎゅうっ。


三匹分で、完全に限界だった。


「せまいにゃーーー!!」


「出てにゃーーー!!」


ダンボールが、ぎしぎしと悲鳴を上げる。


その様子を、シロップは少し離れた場所から見ていた。


にぎやかで、楽しそうで。


でも、どう入ればいいのか分からない。


一歩、近づく。


また一歩。


そのとき、中からチャイの声が飛んできた。


「シロップもくるにゃーーー!!」


「えっ」


「今なら入れるにゃ!」


「無理でしょ!?」


リオンが即座につっこむ。


でも――


シロップは、少しだけ笑った。


小さく息を吸って、足に力を入れる。


ぴょん、と跳んだ。


「わっ!」


着地が少しずれて――


どさっ、とダンボールにぶつかる。


その瞬間。


べこん。


箱が音を立ててつぶれた。


しーん。


ほんの一瞬、時間が止まる。


そして――


「つぶれたにゃーーー!!」


チャイの叫びが広場に響いた。


中から、もぞもぞと三匹が出てくる。


「もう入れないにゃ!」


「どうするの!?」


混乱の中で、ミルクが静かに前に出た。


そして、つぶれたダンボールに前足をかける。


「広げるにゃ」


ぱたん。


箱を開く。


ぺたん、と平らになる。


「……ひろい……」


マロンがつぶやく。


さっきまでのぎゅうぎゅうが嘘みたいだった。


「みんなで乗れるにゃ」


ルナがうれしそうに笑う。


チャイがすぐに飛び乗る。


「新しい基地にゃーーー!!」


「形変わっただけだよ!?」


リオンが笑う。


シロップも、そっとその上に乗ってみる。


今度は、ぐらつかない。


落ちない。


ちゃんと立てる。


「……ひろい……」


小さくこぼれる声。


さっきよりも、少しだけ安心した響きだった。


インクが静かに言う。


「……最適化されたな」


「かっこよく言ってるだけだよね!?」


また、笑いが広がる。


ネコネコランドの広場には、今日もにぎやかな声が満ちていた。


ダンボールひとつで、こんなにも楽しくなる。


そんな時間が、ここにはある。


そしてその中で、シロップもまた――


少しずつ、自然に笑えるようになっていた。

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