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ネコネコランドへようこそ  作者: 香月 深青
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第二十四話 ちょっとだけ静かな夜にゃ

ネコネコランドの夜は、やわらかく広がっていた。


昼間のにぎやかな声はどこかへ消えて、かわりに、風の音がゆっくりと通り抜けていく。


石畳は月の光を受けて淡く白く染まり、遠くからは、かすかな虫の声が重なって聞こえてきた。


世界が、そっと息をひそめているみたいな時間だった。


リオンは広場の真ん中に立ち、空を見上げていた。


丸い月と、そのまわりに散りばめられた小さな星。


昼とはまったく違う顔のネコネコランドが、そこにあった。


「今日は……ちょっと静かだね」


ぽつりとこぼす。


その声も、夜に溶けていくようにやわらかい。


隣では、ミルクがしっぽをゆっくりと揺らしていた。


「たまには、こういう夜もいいにゃ」


その言葉は、静けさを壊さずに、そっと重なる。


広場には、みんなが集まっていた。


チャイも、ルナも、マロンも、インクも。


いつもなら、まだ笑い声が響いている時間。


でも今夜は、誰も騒がない。


ただ同じ場所で、同じ空気を感じている。


風が、やさしく頬をなでる。


その中で、チャイが小さくつぶやいた。


「……こういう夜、前はちょっと苦手だったにゃ」


リオンは、ゆっくりと顔を向ける。


チャイは空を見たまま、少しだけ言葉を探すようにしてから続けた。


「静かすぎるとさ……なんか、ひとりみたいで」


その声は、いつもより少しだけ低くて。


でも、無理に隠していない分だけ、やさしかった。


ルナがそっと近づく。


草を踏む音が、かすかに響く。


「……わたしも……」


小さな声。


でも、その中に、確かな気持ちがあった。


マロンも、少しだけうつむきながら言う。


「……ぼくも……ちょっと、怖かった……」


指先が、そっと草に触れる。


その仕草が、言葉よりも気持ちを伝えていた。


夜の静けさが、少しだけ深くなる。


けれど、それは冷たいものではなかった。


ただ、昔の気持ちが、ほんの少し顔を出しただけ。


リオンは、その空気を壊さないように、ゆっくりとうなずいた。


「でも今は?」


やさしく問いかける。


チャイは少しだけ考えて――


ふっと笑った。


「今は……うるさいにゃ」


「それいいの?」


思わず笑う。


「いいにゃ!」


チャイはいつもの調子に戻っていた。


その声に、ルナもくすっと笑う。


マロンも、ほんの少しだけ口元をゆるめた。


ミルクが前足をそっと置く。


「ひとりじゃないにゃ」


その言葉は、夜の中に静かに広がった。


インクが、少しだけ目を細める。


「……静けさは、変わらない」


風が、葉を揺らす。


そのあとに、言葉が続く。


「……感じ方が変わるだけだ」


リオンはもう一度、空を見上げた。


同じ夜。


同じ静けさ。


それなのに、さっきとは少し違って感じる。


胸の奥が、あたたかい。


「また、こういう夜もいいね」


小さく言う。


「いいにゃ」


ミルクがうなずく。


風が、もう一度やさしく通り抜けた。


ネコネコランドの夜は、今日も静かで。


そして――


ほんの少しだけ、やさしくなっていた。

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