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ネコネコランドへようこそ  作者: 香月 深青
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第十話 かくれんぼ大会

ネコネコランドの空は、その日もどこまでも青く澄みわたっていた。


風はやさしく、木々の葉をさらさらと揺らし、花の香りを町いっぱいに運んでいる。


そんな気持ちのいい昼下がりのことだった。


広場の真ん中で、チャイがぴょんっと高く飛び上がり、大きな声で叫んだ。


「今日は、かくれんぼ大会をするにゃー!」


そのひと言で、広場にいた猫たちが一斉に振り向く。


「やるにゃ!」


「負けないにゃ!」


「優勝したら魚もらえるにゃ?」


最後の子だけ、目的が違う。


あっという間に広場は大にぎわいになった。


リオンは思わず笑う。


「楽しそう」


その横で、ミルクがふふんっと胸を張った。


「ミルクは、かくれんぼの天才にゃ」


「そうなの?」


「一度も見つかったことがないにゃ」


それを聞いたチャイが、きょとんと首をかしげる。


「だってミルク様、隠れる前に寝ちゃうにゃ」


静かに黒歴史が暴かれた。


「それは休憩にゃ!」


言い訳になっていない。


ルナは少し離れた場所で、そのやりとりを見て小さく笑っていた。


以前のような寂しそうな影は、もうほとんど見えない。


金色の瞳には、やわらかな光が宿っている。


その表情を見て、リオンは胸の奥がほっとあたたかくなった。


「じゃあ鬼は誰にする?」


リオンがそう言うと、猫たちが一斉にルナを見た。


「黒いから見つけるの得意そうにゃ」


「目がいいにゃ」


「なんか静かで強そうにゃ」


勝手な理由ばかりだ。


突然の注目に、ルナは少し目を丸くした。


けれど、少し考えてから、静かにうなずいた。


「……やってみる」


その声に、チャイが飛び跳ねる。


「ルナが鬼にゃー!」


みんな一斉に走り出した。


右へ。


左へ。


木の上へ。


箱の中へ。


なぜか畑の土に埋まり始める猫までいる。


隠れ方が自由すぎる。


ミルクも慌てて走り出す。


「完璧に隠れるにゃ!」


そう言って飛び込んだ先は、大きな花壇のうしろ。


しっぽだけが、ぴょこんと見えていた。


丸見えだった。


しかも、しっぽがわくわくして、ぱたぱた揺れている。


隠れる気配がまるでない。


リオンは笑いをこらえる。


チャイはというと――


「ここに隠れるにゃ!」


大きな木のうしろへ、ぴたっ。


……しっぽ。


……耳。


……半分以上見えている。


しかも隠れたつもりで満足して、鼻歌まで歌っていた。


「ふんふふーんにゃ」


隠密性ゼロ。


けれど、本当に見つからないのはルナだった。


数を数え終わったあと、静かに歩き始める。


ひとつひとつ、丁寧に探していく。


「ミルク、見つけた」


「早いにゃ!?」


しっぽでばれている。


「チャイ、見つけた」


「まだ歌の途中にゃ!」


最初から見えていた。


次々と見つかる猫たち。


けれど最後の一匹だけ、どうしても見つからない。


「……あれ?」


リオンが首をかしげる。


ルナが鬼なのに、最後の一匹って誰だろう。


その時だった。


近くの木の上から、声がした。


「みんな、なにしてるにゃ?」


見上げると、枝の上で丸くなって眠っている猫がいた。


いつの間にか参加していた知らない猫だった。


しかも、ずっと寝ていた。


みんな一瞬静まり返り――


次の瞬間、大笑いになった。


ルナも、声を出して笑っていた。


肩を揺らしながら、目を細めて笑っていた。


その笑顔は、とても自然で、あたたかかった。


リオンはそんなルナを見て、ふっと微笑む。


チャイが元気いっぱいに叫ぶ。


「優勝は、寝てた猫にゃ!」


「ずるいにゃ!」


「才能にゃ!」


意味の分からない称賛が飛ぶ。


その横でミルクは、しっぽをぱたぱた揺らしながら胸を張った。


「ミルクも、ほぼ隠れてたにゃ」


ほぼ、ではない。


まったく隠れていなかった。


青い空の下、笑い声が広がる。


追いかけて、転んで、また笑う。


そんな何気ない一日が、ネコネコランドでは何より大切な宝物だった。


ネコネコランドは、今日も平和だった。


……たぶん、明日も。

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