エピローグ 1
エリアスト王国が平和になってから……それなりの月日が流れた。だから、それなりの変化もある。
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国としての変化は、エリアスト王国と獣王国の結び付きが強くなり、獣王国の王女がエリアスト王立学園に留学しに来た。それには当然ナリの姉も居て、他にも数名。こちらからも上の学年の数名が獣王国の学園に留学した。両国の繋がりの証として。ちなみに、獣王国の王女とナリの姉は上の学年だが面識があるということで、一年Aクラスのロヒ、コンゴ、ミネエリア、一年Eクラスの俺、サーフェ、ナリ、カレリナとよく一緒に過ごす。そこから同クラスの者にも。
まあ、獣王国の王女は戦い大好きっ娘で、俺は散々戦いを仕掛けられた。もちろん、全部勝利。対抗するようにロヒも戦いを仕掛けてくる。それも全部勝利。別にいいが、何故こうも戦いを仕掛けられるのか、と愚痴のようなものを錬金小屋でおっちゃんに零すと、勝利するから余計に戦いを吹っかけられるのでは? とタオに言われた。そういうものだろうか? ただ、一つ悩ましいことがあるというか、獣王国の王女と戦う際、「全適応」さんはいつもラッキースケベに見える意図的なスケベを提示して誘惑してくるので、それだけはどうにかして欲しい。言っても止めてくれなかった。……もちろん、断固とした意思で、一度もやっていない。
あとは、獣王国の王女経由で、獣王国では獣王国の王さま主動の下、ゴルブルワ帝国の影響は完全に消し去ったそうだ。良かったと思う。まあ、ゴルブルワ帝国はゴルブルワ小帝国と言われるくらいに力を落とした上に、周辺国もまた何かやらかすのでは? と警戒しているそうなので、もうどうしようもないだろうけれど。
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ゴルブルワ帝国関連だと、捕らえた泥棒勇者と黒いローブの男性についても、少しだけ話を聞いた。どちらも苦しめながらの尋問を行い、ゴルブルワ帝国の内情や自らが行った悪行について聞き出しているらしい。まだまだ聞き出すことはあるそうなので、まだまだ苦しめられることだろう。その聞き出した情報の中には、泥棒勇者によってスキルを奪われた人たちについてもあった。泥棒勇者はスキルを奪うと大抵相手を殺していたのだが、中には生き延びている人も居る。
それで、「全適応」さんによる「スキル適応」を施すと奪われたスキルが戻った。近くに被害者が居て、それで確認したので間違いない。ただ、今のところは戻ったのがその一度だけなので、他の人にも試してみないと確実とは言えない。まあ、「全適応」さんが言うには《――問題ありません――》だったが。でも、対象が他国の人であったり、内容が内容だけに、施す際には秘密保持契約とか色々と面倒な手続きもしないといけないと思う。マウマウ先生とも相談して、前向きに話は進んでいる。いつか……は、そう遠くないと思う。
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身近なところだと……まあ、変化があったり? なかったり? ……よくわからない。とりあえず、又聞きだが、二年生代表のリーダーだったゼカス先輩は、美人教師との秘密の関係を公開というか、無事に婚約発表をした。おめでたい。ただ、二年生男性の中には美人教師に心を奪われている人が多くいたらしく、婚約発表された日は涙を流したり、放心したりと、まともな状態ではなかったそうだ。その後、「ゼカスを実際に爆発させる秘密の会」なんてのができたとか、できなかったとか……。
他に、コンゴについてだが、泥棒勇者がコンゴを襲ったのは、補欠だったサーフェを出すためだけではなく、スキルを奪う目的もあったのだ。獣王国での治療後に、コンゴがスキル「超剛体」を使おうとして発動しなかったので、奪われたことが発覚したのである。そう。近くに居た被害者とは、コンゴのことだ。スキルが戻ると泣き喜び、強く抱き締められた。いや、ステータス的に力強く抱き締められても問題ないが、精神的に……ちょっと……。今も一年Aクラスで日々頑張っている。
一年Aクラスで言えば、ミネエリアとロヒもそうだ。
ミネエリアは一年Eクラス……というか、カレリナの前によく現れるようになった。仲良くしたいようである。「全適応」さんが《――どういう意味で仲良くなりたいのでしょうかね――》と意味深な言い方をしていたが、どういう意味なのだろうか? 謎だ。それはともかく、最近はカレリナと二人で王都へお出かけ――ただし護衛付き――しているようである。あと、カレリナに「家の方は私がどうにかするから二年はAクラスに上がりなさい」と誘っているそうだ。カレリナから聞いた。カレリナは何故か断っているそうだが、ミネエリアも諦めない。
まあ、何にしても、前よりもカレリナとの関係が改善しているのは間違いないだろう。俺にも偶に話しかけてきて、時々Aクラスに誘われる。堅苦しそうなのでEクラスのままでいいです。
ロヒは……まあ、変わっていない。相変わらず、俺に戦いを挑んできては負けている。ただ、本当に天才肌というか、戦う度に強くなっていっているのは確か。いつか追い付かれ……いや、適応すれば問題ないか。でも、独力で泥棒勇者をいつか超えると思う。あと、俺、サーフェの他に、留学中の獣王国の王女もライバルとして加わり、日々楽しそうである。勝率は俺に負け越しているが、サーフェと獣王国の王女だと勝ち越しているらしい。ただ、それ以上に俺以外とはどちらも動けなくなるまで戦うので引き分けの方が圧倒的に多い、という感じである。
今は、祖父であるグランさんに一回でも勝つことを目的としているそうだ。一回でも? と思ったが、未だ一回も勝てていないそうで……ということは、グランさんはロヒに一回も負けていない訳で……グランさんヤバいな。
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一年Eクラスの方も、変化があったり? なかったり?
今回の件で大きく変化があったのは、ハインサだろう。「聖女」認定されて、本人は聖女なんて荷が重いと言っていたが、教会が出している孤児院への運営資金や、お布施が増えたことには素直に喜んでいた。孤児院のためになるのなら、まあ、別にいいかな? と最近は聖女であることを受け入れつつある。
ちなみに、俺の半裸状態については……やはり俺だと認識していたのだが、口を噤んでくれたので感謝しかない。
ナリは毎日ご機嫌だ。獣王国の王女と共に、姉がエリアスト王立学園に来たからである。助け出すことができて、本当に良かったと思う。今は、姉のような護衛……は難しいが、裏から守る隠密的な護衛を目指しているようで、日々努力している。姉と一緒に獣王国の王女を守りたいそうだ。立派な目標だと思うので、俺も手伝っている。「スキル適応」も行った。……スキル「NINNJYA」とは?
でも、俺が妹を大事にしているように、ナリは姉を大事にしている、ということを伝えると、今でもそれは何か違う、と首を傾げられる。何か違うだろうか?
カレリナは今よりもっと強くなろうと努力を続けている。ミネエリアとの関係も、二人でお出かけ――ただし護衛付き――したりするようになったので、以前と違って良好になったようだ。ただ、俺も誘われることが多くなった。ミネエリアとのとは別で、一人で行きづらいとか、男性の意見を聞きたいとか、誰かと行きたくて丁度良かったとか……まあ、理由は色々と。なので、カレリナと出かけることが増えた感じだろうか。
ただ、それはサーフェやナリでもいいと思うのだが、何故かそういう時は二人共用事ができて、俺が付き合うことに。……いいんだけどね。
タオは……正直に言えば変わらない。今もおっちゃんの錬金小屋に来ていて、おっちゃんの指示の下で錬金術を学んでいる。おっちゃんが言うのは、才能もあって熱意もあるので、いずれ世界に轟くものを作り、名が知れ渡りそうだ、とのことだ。本当に? と少し訝しんだ。でもなあ、レスキューハンドなんてのをおっちゃんと共同とはいえ作った訳だし……本当に未来ではそうなっているかもしれない。これからに期待、である。
いや、変わったことが一つあった。やたらと俺に中指の着ぐるみを着させようとしてくる。それから逃げるのが少し面倒になった。
サーフェは今も変わらずグランさんの下で日々訓練している。グランさんは覚醒した状態でも倒し切ることができずに、覚醒状態でいられる時間が切れて負けるそうだ。だから、今のサーフェの目標は、ロヒと同じくまずはグランさんに一回勝つことだそうだ。素直に応援できる。というか、応援している。まあ、先は長そうだが……「全適応」さんが言うには、将来的に覚醒状態がもっと維持できて強まれば、俺を超える、かもしれないらしい。それでも応援している。
ナリと一緒で、サーフェとは仲良しなままなので、いずれ「一年Eクラス男性トリオ」と呼ばれるようになる……だろうか? いや、初めて三人で組んだまま「一年Eクラス・男性組」の方がいいかもしれない。
ともかく、一年Eクラスはなんだかんだと目立つことが多かったので、各方面から注目されるようになったと思う。




