「ゴルブルワ帝国に天の裁きが落ちた日」
国境でのエリアスト王国軍とゴルブルワ帝国軍の戦いは、俺とマウマウ先生が参戦してから直ぐに決着が着いた。これについては俺の活躍というよりもマウマウ先生が落とした隕石の影響が大きかったのである。ゴルブルワ帝国軍の戦意を見事に挫いたのだ。エリアスト王国軍の完勝と言ってもいい結果である。俺としても暴れられてスッキリしたし、ちょっと使ってみるかと使ってみた聖剣も途中からやる気になったのか、剣身が光を纏い、その光が大きくなって大剣のようになったり、斬撃が光り輝く形となって飛んでいくようになって、さらに大剣状態だと剣身部分が七つくらいに分裂して俺の周囲に浮遊したあとに、その分裂したのは俺の意思一つで敵へと斬りかかると、なんか聖剣の本領発揮? みたいなものを体験した。いや、聖剣、凄いわ。
そんなこんなで直ぐに戦いは終わったので、もうここに居ても意味はないので王都に帰ろうかな、と俺は考えた。そう、俺は、ね。でも、マウマウ先生は違う。
「思ったよりも早く終わりましたので魔力がまだまだ残っていますね……余力があることですし、もう少しわからせておくのもいいかもしれません」
「うむ。その通りだな。いい加減ゴルブルワ帝国からのちょっかいは面倒になってきたからな。ここらで一つ、どかんと一度強めの警告をやっておいた方がいいのは間違いない。やってくれるか? マウマウ殿」
「ええ、任せてください」
マウマウ先生に同意して意気投合しているように見えるのは、俺ではない。エリアスト王国軍の総大将の顧問という肩書き持ちの、白髪短髪の精悍な顔立ちの六十代くらいの男性である。名は「グラン」。聞けば、この人がサーフェの師匠で、ロヒの祖父、だそうだ。実際、先ほどの戦場で見かけたのだが……いや、強いわ、この人。覚醒サーフェや「英雄の武器」使用のロヒにも、なんだかんだ勝てそうな気がする。まあ、今後はわからないが。
ともかく、このグランさんはどうやらエリアスト王国軍で立場がかなり上――というか、総大将も頭が上がらないようで、マウマウ先生へのお願いを止めようがなかったようである。というか、何をお願いしたのやら……と他人事のように見ていたのだが――。
「行きますよ、アルンくん」
「えっと、どこに?」
どうやら、俺も巻き込まれるようである。
「転移しますよ」
王都に戻るのかな? と言われるがまま、俺の魔力で、マウマウ先生が指定する場所へ転移した。
―――
転移した場所は、エリアスト王国の王都ではなかった。代わりに、エリアスト王国の王都にも負けない巨大な都市が見える小さな丘の上、といった場所だった。巨大な都市の中心には、高くそびえる巨城がある。
「えっと、マウマウ先生。ここはどこですか?」
わからないので尋ねると、マウマウ先生はいい笑顔で答える。
「あれに見える都市は、ゴルブルワ帝国の帝都です。城は帝城ですね」
「へえ~、あれが………………え?」
思わず帝都を二度見する。ゴルブルワ帝国の帝都? あれが? というか何故ここに? と疑問に思っている間に、マウマウ先生が「では、いきますよ」と行動を起こす。
帝都周辺に隕石が雨のように落ちた。
マウマウ先生は魔力がなくなるまで落とし続けるようで、何発も落ちる。一応、狙いは正確というか、帝都には一発も落ちていない。帝都には普通の住民も居るだろうから、そちらの配慮をしたのだろう。でも、帝都周辺の地形は凸凹だらけで恐怖しかない。
「……ふう。国境の方は手応えがありませんでしたからね。漸くスッキリしました」
いい笑顔を浮かべるマウマウ先生と共に、今度こそエリアスト王国の王都へと転移で戻った。
これが、国境での隕石落下を含めて、のちに「ゴルブルワ帝国に天の裁きが落ちた日」と呼ばれる日の締めくくりとなる。この日がきっかけとなり、頼りとしていた勇者も居なくなり、ゴルブルワ帝国はエリアスト王国だけではなく他の周辺国にもこれまで強気の態度に出ていたが、それが嘘のようになくなった。それで、だからというか、当然のように周辺国に攻め込まれて国土を大きく減らすことになる。まあ、元々周辺国に攻めて奪った国土だったようで、奪い返されたということだ。
それで、ゴルブルワ帝国は「ゴルブルワ小帝国」に名を変えた方がいいのでは? と言いたくなるくらいの小国となる。
―――
こうして、エリアスト王国とゴルブルワ帝国の争いは、エリアスト王国の勝利で幕を閉じた。また、エリアスト王国は、今回の件で獣王国を攻めるようなことはせず、寧ろこれまで以上に手を取り合うこととなって、漸く平和を取り戻したのである。




