第3話 力の証明
「おい、ザウス、銀貨5枚だぞ?」
「わかってる」
「パーティー追放されて気が狂ったか?」
「俺は好きで請け負ってるんだからほっといてくれ。おい、外野はほっといて一旦ギルドを出よう」
俺たちはギルドを出る。
「わ、私、イルマといいます。このたびはよろしくおねがいします」
イルマはペコリと頭を下げる。
「イルマね。私はラミアよ。ちゃんとご挨拶できて偉いわね」
「俺はザウスだ。よろしくな」
その時、イルマの傍らにいる黒猫が二足歩行になって突然口を開いた。
「おいイルマ。こいつらほんとに大丈夫なのかニャ?」
「せっかく依頼を受けてくれたんだから、ムギは黙ってて!」
「驚いた……化け猫か」
「誰が化け猫だニャ! ムギはこう見えても、元は伝説の魔獣ニャ!」
「伝説の魔獣ね、はいはい」
「くっ、信じてないニャ? お前らムギを舐めたら承知しないニャ! それにザウスお前、ほんとに我が主の依頼をこなせるだけの実力があるニャ?」
「もうムギは黙ってて! 折角依頼受けてくれたのに!」
「依頼を受けても早々に死なれたら、話にならないニャ。見た感じはショボそうだニャ」
随分な言われようだな。
まあ、ほんとに実力があるのかという懸念は当然だが。
なんせSランク相当の依頼だ。
「おい、ザウス。何か力を証明してみろニャ」
「そうだな……」
夜空には満月の月が怪しく輝いていた。
「あの月をちょっと近づけてみようか」
「月を近づける? はん! そんなことできる訳がないニャ!」
俺は両手を月にかざす。
そして見えざる手、『魔法手』を発動する。
巨大な『魔法手』が月を掴む。
「んんーーーーっ」
流石に少し重い。
俺は月を引き寄せる。
「にゃにゃにゃ! 月が近づいてきてる!?」
「ほ、ほんとだ! すごいザウス!」
「にゃにゃにゃーーーッ! ぶつかるぶつかる! もういいニャ!」
「きゃあーーーー!」
目の前まで引き寄せた月はとんでもなく巨大に見える。
月ってこんなに大きかったのか。
夜空の異変に気がついた人々によって、騒ぎになりはじめてる。
「これでわかったか?」
「わ、わかった……腰が抜けちゃったニャ……」
「じゃあ、戻すぞ。んんんーーーーっ」
月は今度はどんどん遠ざかる。
これぐらいか?
引き寄せる前より微妙に小さい気もするが……まあいいか。
「どうです、ご主人様はすごいでしょう?」
なぜかラミアが誇らしげにいう。
「ま、まあ、認めてやってもいいニャ」
「またムギはそんな偉そうにいって!」
「今日はもう遅いから明日から依頼着手でいいか?」
「はい!」
「ところで宿はとってるのか?」
「いえ、お金ないんで野宿しようかと……」
「……出してやるから、俺たちが泊まってる宿に泊まってけ」
「じゃあ、お言葉に甘えてやるニャ」
「またムギは偉そうにいって!」
月の一件は翌日には世界中で騒ぎになったようだった。
幻覚を見たと主張するもの。
神の警告だと主張するもの。
世界の終わりの前兆だと主張するもの。
どれも見当違いで、真相は俺たちだけが知っている。




