最終話
あの日、タマカンに呼びつけられてから、世界を渡り歩いたレイジは、黒幕である唯一神にお仕置きをするため、タマカン本部に殴り込みをかけ、警備員やその場に居合わせた管理者達に、唯一神がやったことを映像を交えて説明した。
そして今、唯一神に剣を向けていた。
「いい加減気づけよ、お前ら! 今までの事は全部こいつの仕業なんだよっ! 俺が世界を救ったのも、邪神になったのも、俺が俺を終わらせられないのも、こいつの孤独感を埋めるためのマッチポンプなんだよっ!!
これで終わりだっ! クソゲーは1人でやってろ、ぼっち野郎ーー!!」
そのままゴッドイーターを一気に振り下ろし、唯一神を斜めに斬りふせた。
神の身体が斜めにずれ崩れ落ち……。
ふふっ、パチリッ♪
---そのとき、不思議なことが起こった---
「嘘だろ……っ!」
『あはははは♪ 言ったじゃないか無駄だって♪ ゴッドイーターだっけ?少しは期待したんだけどね、残念だよ。』
何事もなくそこに佇む唯一神
『ぼっち…、そうだね、ボクは孤独だ、だからキミたちを創ったんだ。 でもキミたちはボクに従順で全然逆らわないからつまらなかった。 なにせボクは唯一の存在だからね。』とつまらない表情で呟く。
「そんな……、お父様っ!」「唯一神さま…」「うそだっうそだっうそだっ!!」
唯一神の無慈悲な言葉に管理者達の動揺は隠せない。言われたことが理解できない、いや、理解したくないのだ。
『うん、ごめんね。 あ、世界を管理してくれてるのは助かってるよ。 増やしすぎて面倒くさくなってきてね。 それにキミたちが管理を頑張ってくれたおかげで、ほら、ボクはこの子で遊べたんだからさ♪』
愉しげに笑みを浮かべながら、種明かしを続ける
「そ、それなら初めから邪神を創ってしまえば良かっ『それは違うよ、違うんだよね。 わかってないなぁ、それだとキミたちと変わらない人形さ、キミたちの中から生まれたイレギュラーであることが大事なんだよね。』
ちっちっちっと指を振り、舞台の真ん中で観客に話すかのように語り出した
『あがき、もがき、しぶとく生き抜き、魂の限界を超えて、初めてボクにたどり着ける。
そして、ボクと並び、ボクを超えた存在になれば、ボクは初めて孤独じゃなくなるんじゃないかなって考えてね。
だけど、間違ってた。
ボクを超えられる存在なんてイレギュラーがあっても出来ないんだ。
だってボクの力の一部で動いてるキミたちはボクの全てに勝てるわけがないのだから。
始めからやり方を間違っていたんだ。
だからさ、一度全ての世界をリセットすることにしたよ。
母親が言うだろう?、「遊んだらおもちゃは終わったら片付けなさい」ってさ。』
やれやれと肩をすくめる仕草は、煽っているように見える。
「ふざけんなっ! さんざん世界を荒らして、みんなを引っ掻き回してっ! それで今さら間違いだからリセットするだと!? なんなんだよ、それじゃあ、俺は…俺たちの存在は……」
その場にへたりこみ、うつむき地面を見つめるレイジ。
「レイジ…」
かける言葉が見つからないのか、言葉に詰まるリリス。
「あの?お父様…? 私たちはどうすれば?」
『あれれ? 聞いてなかったの? ボクは管理を辞めて世界を片付ける。 もちろんキミたちも消えるよ。』
「っ!」「そんなぁ…」「今までこんなに尽くしてきたのに……」「いやだ」「消える?ははは」「………」
思い思いにつぶやき崩れ落ちる管理者達。
「お、お父さまぁ、わ、私はあなたの右腕です! あなたを想い、あなたを信じ、あなたのために行動してきました!! どうか、どうか私も新しい世界に連れていってください! ずっとおそばに!!」「なっ! 私もです!!」「おい、ずるいぞ!」
ベアトリスを皮切りに唯一神の救いを求め、押し寄せ……
『え?、無理だよ。 キミたちの魂はどうやったって変わらない、さすがのボクでも無理なんだよ。』
無慈悲な言葉に、立ち上がりかけた希望が潰え、管理者達はもはや茫然自失になった。
『もう、いいかな? ほら、痛みは感じないから安心しておくれ。 最後の慈悲だよ。』
パチリッ♪ 指を鳴らす。
---そのとき、不思議なことが起こ………………………………らなかった---
一瞬の静寂、辺りを見回すが誰も消えていない。
『んー?』 パチリッ♪
『あれ?』 パチリッパチリッ♪
『…』 パチッパチッパチッパチッパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパッ!!!!!
ついに両手で指を鳴らし始める唯一神、その速さ、回数は世界一の演奏のあの人も顔負けである。
『ぜぇっ、ぜぇっ、ぜぇっ! なぜだっ! なぜ力が使えないっ それにボクが息切れ?どうゆうことだい!?』あと指も痛い。
「くっ、くくくく、はははっ、あーはっはっはっはっ!!」
「ぷくくっ、『なぜだっ!なぜ力が使えないっ』あはははは♪ ちょっとレイジ、笑ったらダメじゃない くすくす」
「リリスだって笑ってるだろ? てか我慢できねぇよ、ははっ♪」
《主の演技は下手すぎて逆に自然でした。》と自然にレイジをディスるコア
『うーん、やっぱりキミが何かしたのかな? ボクにも教えてくれないかい?』
「何か?、俺はゴッドイーターで切っただけさ、お前のスキル【ご都合主義】だけをなっ!!」
『そんなことはあり得ないんだけどなぁ。 じゃあ、ボクの身体が切れていなかったのは…』
「そりゃー、身体を切ってなければねぇ♪」
悪戯ッ子の笑みを見せるリリス。
『だけどそれだけじゃ世界の管理権はなくならないはずだよ。 主はボクだよ、おかしいじゃないか。』
「こっちはさ、賭けだったんだ。 お前さっき認めたろ? 『ボクは管理を辞めて世界を片付ける』だっけ。」
《唯一神が管理者を辞任したため、次点の代表管理者の選定、権限の移行手続きを開始しました。》
レイジの言葉を引き継ぐように、コアが代表管理者の変更を告げる。
「えっ? じゃあ私たちは…」「「「助かったのか?」」」
ようやく事態の変化に追いついた管理者達だが…
「おう! 命は助かってるよ。 管理者の地位がどうなるのか分からんがな。」
「そんなっ!」「勝手なことをっ!!」「おいっ!」「なっ!」
「まあ、お前らのことは置いておいて、さて、なあ、今どんな気持ちだ?無能ぼっち君?」
『あはははは♪ 最っ高だよぉ♪ なるほど!そうか、キミがボクのところに来るんじゃないんだ!! まさかボクをキミのところにまで落とすなんてっ!! そうか、そういう方法があるんだ。 やっぱりキミに決め…選んでほんと良かった!!』
ハイテンションではしゃぐ唯一神、なお、レイジは邪神であって雷が得意なモンスターではない。
「へぇー、存外余裕なんだな?」
『そりゃあそうさ、ボクはボクの願いが叶ったんだ。 ボクはもう孤独じゃないんだ。』
「ははは…、こいつダメダメすぎる。 えーと、お騒がせぼっち神は【不老不死】のスキルだけを持たせてダンプスペースに転生させる。 お前は老いず、死なない。 みんなが年老いて寿命を向かえ転生していく中、お前だけはずっと世界で生き続けるんだ。 お前を知っている存在がいなくなったとき、初めて真の孤独を知るだろう。 それがお前に対する罰だ。」
(どうやっても罰にならないとか最強かよ。)
『ふふふ、かまわないよ。 キミたちに怨まれようと、憎まれようとかまわない。 ボクはずっと寂しかったんだ。 どんな想いであれ、ボクに向ける感情はボクを認識しているってことだよね。 ボクは間違えた。だけど、この結果に後悔はないよ。』
「だあーっ! スキルがなくてもご都合主義かよ。 ぼっちを拗らせた構ってちゃんには何をやっても勝てないか。」
予想通りとはいえ、悪びれない元唯一神の態度に何も言えることはない。
言った分だけ、構ってもらえると受け取るぼっち様にはご褒美なのだから。
「はあっ、こんなヤツがあたし達の創造主だなんて…」
がくっとリリスは肩を落とした。
「やめだ、やめ。 あとの処理はコアと新しい代表管理者がうまくやってくれるさ。」
「うん、そうね。 世界はだいぶん減ったけど、魂達は消滅したわけじゃないし、これからやり直せばいいんだよね。で、レイジはこれからどうするの?」
「そうだな、新しい代表さんが俺たちに危害を加えないなら、世界が正常になるまでは一管理者としてコアを手伝おうかと思ってる。 んで、リリスにはそばで俺を支えてほしい……。 だぁー!まどろっこしい!! リリスっお前が好きだ、これからも一緒にいてほしい!!」
(この場で告白?ってのはあるが、いつも誰かに邪魔されるし、今言わないとまたチャンス逃してしまうし)
「っ!! ………はいっ!!」
目にいっぱい溜まった涙が、リリスが頷いた拍子に零れ出す、真っ赤な顔には笑顔が咲き誇る。
二人は見つめあい、顔が触れる距離まで近づき………
『「「「「あのボク(私)たちのこと、忘れてない(ませんか)?」」」」』
《次点代表管理者の選定、権限の移行が完了しました。》
「ちょっ!!、今めっちゃ良いところだろ! 映画のラストシーンじゃん、チューからの夕陽でしょ!!」
「ひ、ひええええぇぇぇっ! あれ?、あ、あたしったら何を!?、こんなとこで……ひぇ、ひえぇ~」
顔を隠しうずくまり、小さい声で「どうしてどうしてどうして…」と繰り返すが、リリスはにやけが止まらない。
「ええっと、リリス、そのあとでな。」
レイジはうずくまるリリスの耳元でささやき顔を上げコアを見る
『あははっ、キミたちってホント面白いよね。 で、本人は気づいてないみたいだけど、スキルが発動してるってことは彼で決まりかな?』
《代表管理者はレイジ・ルーサレス》
「ちょっ!!」「ふぇっ!?」
「「「「えええええええぇっ!?」」」」
元唯一神とコア以外はめっちゃ驚いた。
『ふふっ、おめでとう。 世界を、子ども達を、ついでにボクを頼んだよ♪』
「いや、こらっ、おかしいだろっ!! 俺、邪神じゃんか真逆じゃん! おい、コアっ!、どうゆうことだよ!?」
《はい、代表管理者の条件は二つ。 【管理者】であること、唯一神のユニークスキル【ご都合主義】を有することです。 邪神とはご存知のとおり唯一神に逆らう管理者の呼称であり、主は世界の管理者の一人であり、また唯一神のスキルを保持しています。》
「俺のスキルは【プチご都合主義】だろっ! ってあれっ?【ご都合主義】に変わってる、なにこれ?」
ステータスを確認して青ざめるレイジ。
『ボクのスキルを封印できてしまうほど、キミのスキルは成長したんだね。 キミのゴッドイーターは同等以下の存在しか切ることが出来ないはずだから、上位であるボクのスキルを切れるはずがないんだ。 だけどそれが切れたってことは、キミの【ご都合主義】が空気を読んで-不思議なこと-を起こしたんだと思うよ。 なんたって【ご都合主義】はボクでも予測不能だからね♪』
「ああ~っ! もしかして普通だったらツッコミどころ満載のレイジの告白に素直に頷いたのも……(みんなの前で告白とかあり得なさすぎるのに受け入れるとか…いや、確かに嬉しかったけど)」
『うん、キミの心が素直になるようにスキルが働いたのかも♪』
「おい、ぼっち野郎、やめろや。 はあぁっ!、違っ、あのリリスさん誤解です。 スキルの発動はわざとじゃないんだ、です。 いや、ゴッドイーターをなぜ掴む?素振り始めないでえぇっ!!」
「だまれ、くそ邪神っ!! こんなとこで告白するんじゃないわよっ!!もううっ!!」
顔を真っ赤に染めながら、リリスがぶんっとゴッドイーターを振りかぶると、斬撃がレイジの頭部をかすめる
パラパラと落ちる髪の毛。
「ちょ! 髪の毛ぇ!! おい!今こそ【ご都合主義】の働きどころだろおおぉぉっ」
うまく斬撃をかわしながら逃げるレイジをゴッドイーターを片手に追いかけ回すリリス。
-いま、シリアスの呼吸が停止しました-
「この茶番、私たちっていったい…」
「唯一神様も力を失い、新しい代表管理者がこいつ…」
「俺たちのしてきたことってなんだったんだ?」
「言うな。考えたら負けだ。」
暴れまわる二人を生暖かく見守りながら、管理者達は立ち尽くし、元唯一神はそれを楽しそうに眺める。
-茶番はまだまだ続くようだ-




