11話
レイジはスサンダ村にたどり着いた。
ギーゲルトさんとこからの経緯は、あっさりなのでまとめると、
・[ギーゲルトさんとこ]から[ギーガさんとこ]に戻る。
・帰り道、モリマジロの鎧がない、ドロップ品はすぐに回収しないと、時間経過で消えるらしい。
・ギーガのお礼は、[ゴブリンのメダル]という妖精族の好感度が微増するアイテムだった。
《ちなみに、ゴブリンは妖精族ゴブリン種になりますが、人として扱うのが一般的です。》
・リーガは集落に戻るとレイジに別れの挨拶をして、友だちとどこかへ遊びに行ったため、見送りはギーガと何名かだけだった。([ゴブリンのメダル]の効果とはいったい…。)
・レイジがスサンダ村に帰りついたのはお昼前、とりあえず冒険者ギルドでクエスト完了の報告を終え、報酬を受け取り、宿屋に戻って一息を入れた。
で、今にいたる。
「……………」
《主、どうしたんですか、くそみたいな顔をして。》
「突然、口悪いなっ!!」
《いえ、どうせまたゲームだったら…って考えてるのかと思いまして、現実をお知らせしようかと。》
「いや、うん、てっきりリーガは仲間としてついてくるもんだと思ってたからさ。 …ねぇ、待って、現実の顔は『くそみたいな顔』だと聞こえるんだけど、かなり酷くないっ!?」
《まあ、それはさておき(待てやっ!)…まして、セーフティネットが補修されました。 これから先は、異世界の魂が迷いこむことはなくなりました。》
「お、おう。」
《ということで、これからはこの世界を主が浄化していけば、やがて正常になっていきます。》
「そうですね。(何が言いたい? なんだ?)」
《そこで、てっとり早く世界を浄化できる方法を主にお知らせします。》
「はっ!(このパターンは…) えっと、結構です!、間に合ってます、本当にだいじょう…《 『カクカクシカジカ(限定)』 》 ぶばばばばばばばばばばばばっ!!!!!」
《カクシカを使いますので、気をしっかり持ってください。》
「のおおぉぉぉっ、順番っ!! 後で言っても遅いのっ!!! 報連相は大事だってぇっ!!」
《で、やるべきことは伝わりましたか?》
「マジで、酷いぞっ!? 訴えたら勝てるレベルだからね! 魂の虐待反対っ!!」
レイジの苦情はコアにはもちろん通らなかった。
頭痛と引き換えに得たコア曰く、手っ取り早い方法は…
・神になって世界を救う。
「なにこれっ? アバウトすぎぃーーーーっ!!!!!」
《では、3秒後に転送いたします。》
3…2…待っ!説明をもとめーっ………………………
《さて、これで静かになりました。 非常に不本意ではありますが、スサンダ村で捜索隊が出されても面倒ですし、事後処理をしておきましょう。 【アバター・レイジ】》
部屋を片付けてたレイジとそっくりな男は、宿屋の受付で、チェックアウトの手続きと明日以降の予約キャンセルを行ない、冒険者ギルドで手紙の配達を依頼し、ただ一言「人外幼女に会いに行く。」と残し去っていった。
翌日、冒険者ギルドを通じてマンティス夫人の元に手紙が届けられた。
- マンティス夫人、デパリーさんへ
探し続けていた自分をやっと見つけました。
俺、神様だったんです。
世界のために馬車馬のように働いてきます。
短い間でしたが、お世話になりました。
差出人 レイジ・ルーサレス -
マンティス夫人は、手紙を握りしめ、ふぅっと息を吐いた。
(デパリーちゃんには、レイジ殿は長い、長い旅に出て、もう二度と会うことはない。と伝えておくざんす。)
--レイジ殿が早く(心の病から)お元気になられますように。 マンティス夫人は本当の神様に祈った。
□□□
パルラス帝国、かつてダンプスペース最大の勢力と人口を有する大国だったが、六柱の魔王同士の争いに巻き込まれ、衰退の一途を辿っていた。
終わらない魔王達の争いにより、ある町は半壊し、山の砦は山ごと吹き飛ばされ平地にされ、森沿いの村々は、濃い瘴気とともに現れた魔物に蹂躙されてゆく。
人々のやり場のない怒りや怨嗟の声はやがて黒く染まり、瘴気となる。
パルラス帝国の皇帝ゴーマ・パルラス12世は、魔法師団達に命じ、帝都とその周辺を瘴気から守る結界を貼らせた。
村や町からあぶれた難民達は帝都の庇護を求め、疲弊した身体にむちを打ち帝都へ向かった。
今、正門前は素性確認のため帝都に入れない難民で溢れている。
正門横ではテントの貸し出しや、炊き出しが行われているが帝都の食料も無限にあるわけではない。
「宰相、もはや猶予はならぬ。[勇者召喚]の準備をせよ。」
「はい、しかし陛下、[勇者召喚]は成功率が低いうえ、失敗した場合はこの国は………。」
「良い。」
「っ! しかしっ」
「良いのだ。 何もしなくてもこの国は滅ぶ、ならば少しでも民達が救える選択をせねばなるまい。」
「………、かしこまりました。 では、召喚の間に参ります。」
そう言って、宰相メイズは執務室をあとにした。
-- パルラス帝国 召喚の間 --
「扉を開けなさい、召喚士達は私が呼ぶまでそこで待機していなさい。」
重たい音が腹に響く、ゆっくりと扉が開いてゆく。
「っ!! これはっ!!!!」
メイズが召喚の間に入ると、召喚用の魔法陣は破壊されていた。
「なっ! 誰が入れる?、そして何故こんなことを……。」
「どうされました? メイズ様っ! うわっ、そんなっ」召喚士達も召喚の間の異常に気づいた。
「あぁ、終わりだ。 この国は終わってゆくのだ…」メイズはたまらずその場にへたりこんでしまった。
誰がやった? 魔王か? なぜ召喚の間のことを知っている? 陛下への報告どうしよう 少し小腹すいたな…はっ、いかんいかん
ぐるぐると思考がまとまらない、が、一つだけ分かったことがある。
「もう、勇者召喚は行えない……」この事実は、この帝国の終わりを暗示するものであった。
-なぁ、なんか罪悪感すごいんだけど、これで良いのか?
-はい、それより次に行きますよ。
-うぇ、まだあんのかよ……
-次は…………、ですよ。
□□□
時はレイジがコアに飛ばされたところに遡る。
「ごほっ、ごほっ! くさっ。 ここは汚部屋じゃねぇかっ!!」
《管理者のルーサレス様が失踪しました。》
「は?」確かに、人の気配がない。 ただただ汚い部屋だ。
《本来の仕事(世界の浄化)を主に押しつけ、セーフティネットの補修をすることがルーサレス様の役割でしたが、唯一…いえ、他の管理者が代わりに補修していただいたため、役割のなくなったルーサレス様には主とともに世界の浄化をしてもらうはずだったのですが…》
「いなくなったってか。 管理者いないと不味いんじゃねぇの?(あの女神、どんだけサボりなんだよ。)」
《はい、それで主を管理者として選定しました。》
「は?」
《管理者の能力を確認してください。 ステータスを表示します。 アクセス[レイジ・ステータス]》
「また無視して話進めるぅ。」口をとがらせてみるが、可愛くない。
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名 前 :レイジ・ルーサレス
担当世界:ダンプスペース(文化レベル3)
性 別 :男
年 齢 :18才0ヶ月(記憶保持継続期間100年)
職 業 :無職 ※無双にして全ての職を極めし者の略
能 力 :【武術の才】
【魔法の才】
【自然治癒速度アップ】
【精神耐性(限定解禁)】
【神級世界共通言語】UP!
【前世記憶(限定解禁)】
【世界の知識(限定解禁)】NEW!
【世界統廃合】NEW!
【プチご都合主義】
称 号 :【効率厨】【カンストしたもの】【ヘタレ】【チェリー】
【自殺者】【※※神の加護】【初級管理者】【ゴブリンの友だち】
【マンティス家の客人】
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「世界の知識!? あー、なるほど頭に流れ込んでくるわ。 つくづくルーサレス酷いな。」レイジはダンプスペースの歴史と管理者が行うべきことを理解していくと同時にルーサレスがぎりぎりのラインをキープしつつサボっていることに呆れてしまった。
《浄化の方法も分かりましたか?》
「ああ、ダンプスペースの中で瘴気発生の一番の原因である人族を管理者権限で根絶やしにするってのがコアからしたら手っ取り早い方法なんだな?」
《はい、人族が黒い感情を一番出しますので。 私の力は瘴気の浄化ですが限界があります。 大元を断って、瘴気が薄くなっていけば魔王も魔物も弱りますから、弱ったところで浄化しましょう。》
「…、その、なんだ。 簡単に消せると思うんだな。」
《私は世界ですから、魂を入れた生命体をしっかり育て、成熟させてゆくことが目的です。 汚れた魂は転生システム上、好ましくありません。 難易度の高い人族の魂を育て上げ、昇華まで上手く導くことが出来れば管理者の能力は評価されますが、私には関係ありませんので。》
「管理者の評価?」
《魂は転生を繰り返すことで経験値が刻まれていきます。 経験値が一定量を超えると、魂は昇華して管理者となり、魂管理センターで働く人材として扱われます。》
「俺は昇華してないけど管理者になってるが?」
《主は元々、前世で寿命を全う出来れば管理者へと昇華するはずでした。 しかし、寿命を途中で放棄したためエラーが発生しました。 通常、エラーの見つかった魂は転生回数をリセットして一から転生してもらうのですが、主の場合はストリアスの管理する世界でエラー扱いになる前に、この世界に来ましたので、転生回数もそのままです。 よって、私が例外的に昇華させて管理者にしました。》
「昇華って…、もしかして俺は死んだのか?」
《はい、痛みは感じないようにしました。》
「ちょっ! 人の命なんだと思ってんの? あっちこっちに世界を移して、若返らせたり、殺したり…ふざけんなっ!! 俺が何かしたんだよ!?」
《自殺しました。》
「っ!!」
《自殺はエラーを引き起こす要因でもあり、自殺者の周囲に黒い感情を発生させる行為であり、世界運営上では大罪扱いになります。 命を軽んずる者に権利はないんです。》
「そ、そんなこと…(知らねぇ…)」
《知らなければ許される行為ではありませんでした。 主にはしばらく管理者として働いてもらいます。》
「それで罪を償えるのか…(もうやるしかないのか)」
レイジが自殺するまでに至った経緯は簡単だった。
若い頃から、前々世の記憶によるチート行為で苦労せずに過ごしてきた。
ただ漫然と、そして、飽きた。
もちろん、レイジも自殺することについて悩みぬいた。
家族や友人、仲間達への影響、世間的な批判を心配したが、死んでしまえば終わりだと思っていた。
しかし、実際は違っていた。
しばらく、レイジは汚部屋で今までの事、これからの事を考えることにした。




