表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
微子の憂鬱外伝 紂王伝  作者: 日和見


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
85/98

よみがえる悪夢

紂王伝 第84話 夕食の後、大好きな旦那様や嬴風えいふうお姉様、禄父ろくふくんととりとめのない話をしていた時のこと。――あの男が、この邸宅へとやってきた。家族みんなで出迎えに行くと聞き、私の心臓が嫌な音を立てて跳ね上がる。うぅ……本当に嫌だけど、ここで拒むわけにはいかない。仕方ないと自分に言い聞かせ、みんなの隣に並んで出迎えた。旦那様とあの男が気さくに言葉を交わした後、あの男はこちらにも贈り物を持って挨拶に来た。視界に入るだけで、あのおぞましい記憶が蘇る。ガタガタと震えそうになる膝を精一杯に力を入れて誤魔化し、なんでもないような顔を取り繕った。怖い、本当に怖い。でも、大丈夫。ここは旦那様のいる宮殿の奥で、お姉様も禄父くんもいる。ここなら絶対に安全なはずだ。家族の誰にも怪しまれないように、必死に理性を保ちながら、以前と変わらないお淑やかな態度で挨拶とお礼の言葉を述べた。あの男が屋敷に入った後、すぐに大人たちの酒宴が始まった。そのため、子供である私と禄父くんは席を退出し、それぞれの屋敷へと帰ることにした。廊下に出た瞬間、隣を歩く禄父くんが私の顔を覗き込んできた。「妲姉、大丈夫? なんだかすごく顔色が悪いよ……?」「ごめんね、大丈夫。……ちょっと、お酒の匂いにあてられちゃったかな?」咄嗟に嘘を吐いて、バクバクと脈打つ不安な心を宥めるために、私は禄父くんにぎゅっと抱きついた。前はおませさんになって逃げ出した禄父くんだったけれど、今の私のただならぬ様子を察してくれたのか、「もう、なんだよ」と口では言いつつも、今回は私を気遣って逃げずにその小さな身体で受け止めてくれた。その優しさに、心の中で涙を流しながら深く感謝する。「ありがとう、禄父くん。……おやすみなさい」そう言って彼と別れ、自分の屋敷へと戻った。これでやっと、一人の安全な場所へ帰れる。そう安心したのも束の間だった。あろうことか、あの男が、私の屋敷にまでわざわざ「帰りの挨拶」と称してやってきたのだ。来なくていい。来ないで。お願いだから私の視界に入らないで――!引き攣る私に、あの男は他の侍従たちに聞こえないほどの掠れた小声で、そっと一枚の竹の破片を渡してきた。「妲己様。後日、この場所に……」何事もなかったかのような、澄ました顔で立ち去っていくあの男の後ろ姿。渡された竹の破片には、次の密会の場所が記されているのだろう。私は手の中の禍々しい竹を握り締めながら、恐怖のあまりその場にへたり込のを我慢して、寝室に向かうと、悲鳴をあげそうになる喉を必死に手で押さえて、ただガタガタと震え続けることしかできなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ