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微子の憂鬱外伝 紂王伝  作者: 日和見


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うん、もう大丈夫

紂王伝 第79話 ――連日の喧騒を極めた諸侯会議の見送りも無事に終わり、平穏を取り戻した奥の宮殿に、最愛の旦那様が帰還される。「妲ちゃん。どうやら、あの一時の体調不良もすっかり治ったようね」出迎えの身支度を整えていると、嬴風お姉様が慈愛に満ちた眼差しで、そっと私に語りかけてくれた。「はい。本当にお姉様には、多大なるご心配をお掛けしてしまいました……」「本当に妲姉ちゃんのこと、みんなで心配したんだからね」隣に控えていた十一歳の禄父が、心底安堵したように小さな胸をなでおろす。お姉様や禄父が注いでくれた無条件の愛のおかげで、私の心は前を向けたのだ。愛おしさが込み上げた私は、「えへへ」と無邪気な笑みを浮かべ、禄父の小さな身体へと勢いよく抱きついた。しかし、当の禄父は、十一歳という多感な年齢ゆえか、「うわっ……!?」と情けない声を漏らし、顔を林檎のように真っ赤にして、私の腕から慌てて逃げ去ってしまった。「あ、ちょっと禄父くん! 姉の抱擁から逃げるなんて、少し失礼ではないかしら!?」照れ隠しに足早に歩き出す禄父を、私は笑いながら追いかける。その微笑ましい姉弟(親子)の戯れを、嬴風お姉様がすべてを包み込むような、温かい微笑を浮かべて見守ってくれていた。ふと我に返り、少し子供っぽくはしゃぎすぎてしまったことに気恥ずかしさを覚え、私は大人しくお姉様の傍らへと並んだ。禄父もまた、やれやれと言いたげな顔で、私の反対側の隣へと収まる。その時、廊下の向こうから、待ち焦がれた旦那様の威厳あるお姿が現れた。居並ぶ三人の家族。私たちは揃って、一ヶ月の政務の労をねぎらう最敬礼の挨拶を捧げた。眼前に進み出た旦那様は、この屋敷の温かい恒例行事として、愛おしげに一人ひとりをその大きな腕で抱きしめていく。そうして、ついに私の番が訪れた。引き締まった逞しい旦那様の胸に、私の華奢な身体が包み込まれる。その肌から伝わる圧倒的な慈愛の熱量が、私の胸に残っていた最後の不安を優しく解きほぐしていった。――うん。もう、私は大丈夫。恐怖に身を竦めることもなく、私はかつてと変わらぬ穏やかな笑みを浮かべ、旦那様の温もりに身を委ねることができた。大好きな家族の愛が、私にいつもの日常を取り戻させてくれたのだ。「さあ、立ち話も何だ。皆で屋敷に入ろう」旦那様の包容力に満ちた声音に促され、私たちは幸福な我が家へと歩み出す。私はその広い背中を見つめながら、声にならぬ愛と感謝を、胸の奥底でそっと紡いでいた。(えへへ……旦那様、私を待っていてくれて、本当にありがとうございます)と。

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