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微子の憂鬱外伝 紂王伝  作者: 日和見


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応諾

紂王伝 第73話 ―― 一ヶ月という期間の果てに、私はようやく愛する者たちの元へと帰還した。玄関口には、私の帰りを待ち侘びていた三人の家族が並んで佇んでいる。視線を落とせば、禄父と妲己が互いの手を小さく握り合っていた。飛廉たちの報告通り、まだ大人の男に対する警戒はあるのだろうが、こうして子供同士が睦まじく支え合ってくれているのなら安心だ。「やあ風、禄父、妲己。久々だな。――立ち話も何だ、とりあえず屋敷に入ろうか」私は相好を崩し、溢れんばかりの愛惜を込めて、一人ずつをその腕の中へと抱き込んでいった。私の胸に収まった妲己の笑顔には、未だどこか強張った硬さが残っている。だが、焦る必要はない。今夜はただそっとしておき、流れる時間が彼女の傷を癒やすのを静かに待とう。邸内へと移動し、温かい茶が用意されるまでの間、私は買い求めておいた土産の数々を披露した。一人ひとりの顔を思い浮かべながら吟味した煌びやかな装飾品を手渡すと、それぞれの個性にあった輝きが並ぶ。さらに、我が領地の外の北方で収穫された、今が盛りの瑞々しい果実をも卓上に並べさせた。「見事な果物ですね、陛下」「父上、これ、すごく美味しいです!」弾んだ感謝の声と、美味に綻ぶ彼らの笑顔。その至福の光景こそが、政務の泥に塗れていた私の魂を、何よりも深く浄化していくようだった。しかし、一国の王といえど、私もまた一人の不器用な男に過ぎない。歓談の最中、私は子供たちの目を盗んで、隣に座る正妻・風へと密かに視線を送った。ひと月もの間、冷徹な仮面を被り続けてすり減った精神は、最愛の女性ひとの温もりを、激しく渇望していた。私の視線に込められた無言の請願を正しく受け止めたのだろう。風はほんのりと美しい頬を朱に染め、慈愛に満ちた眼差しで、静かに一度だけ頷いてみせた。――応諾。今夜、彼女は私の孤独をすべて受け止めてくれる。胸の奥で、小さく快哉かいさいを叫んだ。愛しい我が子たちの笑顔に囲まれながらも、私の心は、早くも夜の静寂が宮廷を包み込む刻限を、今か今かと待ち焦がれるのだった。

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