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微子の憂鬱外伝 紂王伝  作者: 日和見


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う゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛……ッ!

『紂王伝』第69話昨夜から、私はただひたすらに嗚咽を噛み殺し続けていた。宮殿の誰一人にも、この身に起きたおぞましい現実を悟られてはならない。私は「体調を崩した」という見え透いた偽りを吐き、外界を拒絶するように自室の闇へと引きこもっていた。「妲ちゃん、少し良いかしら?」静かなノックの音とともに、扉の向こうから嬴風お姉様の案じるような声が届く。いつもならば、何よりも救いとなるはずのその温もり。しかし、今の私にはあまりに眩しすぎた。今の私がお姉様と対面すれば、その鋭くも優しい瞳に、すべてを見透かされてしまう。「嬴風お姉様、申し訳ありません……。今日は本当に、身体の芯が辛くて動き出せないのです。お願いです、今だけはそっとしておいてください……」涙で掠れそうになる喉を必死に理性で抑え込み、懇願の言葉を紡ぐ。一瞬の沈黙の後、扉の向こうで微かな落胆の気配が揺れた。「……無理をさせて悪かったわね。何があったかは問わないけれど、もしも苦しくて堪らなくなったら、いつでも私の胸に飛び込んできなさい」衣擦れの音とともに、優しい足音が遠ざかっていく。お姉様のその無条件の慈愛が、今の私の汚れた胸を鋭く抉った。ごめんなさい、お姉様。ごめんなさい……!緊張の糸が切れた途端、喉の奥から獣のような慟哭どうこくがせり上がってきた。「うう、う゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛……ッ!」泣いたところで、失われた純潔が戻るわけではない。泣き喚くことに何の意味もないことなど、自分が一番よく分かっている。泣くな。泣き止め。私――そう己の魂を叱咤しったするが、涙は溢れ、しゃくり上げは止まらない。せめて、声だけは漏らしてはならない。布団に顔を押し付け、必死に音を押し殺す。万が一にでもこの泣き声が外の護衛に聞かれれば、不審に思われ、ひいては旦那様の耳に入ってしまうだろう。あのおぞましい出来事が露見することだけは、死んでも避けたかった。ここで絶望のまま膝を屈していれば、あの男の脅迫に、己の運命に完全に敗北したことになる。けれど、心と身体に刻まれた傷はあまりに深く、私の幼い足では立ち上がることすらままならなかった。ごめんなさい。大好きな旦那様。どうか、今日だけは、この無様な涙を流し尽くすことをお許しください――

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