露才
紂王伝 第63話 呂望による情勢分析の弁は、淀みなく続いていた。「人頭税の真の目的は、単なる税収増にあらず。家や職場にくすぶっていた非効率な人員を引っ張り出し、将来的な人口増加を促すための一手。まずは農業から着手し、段階的に拡大。今や、ほぼすべての民がその枠組みに組み込まれています」「ふむ、よく見ている。続けよ」私が先を促すと、呂望の言葉はさらに熱を帯びていく。「そして軍政改革。かつては有事の際、貴族や大夫が号令のもとに私兵や徴募兵を率いて参集していました。それを王朝による直接雇用へ切り替え、民の受け皿とした。……この真の狙いは中央集権化。地方貴族の力を削ぎ落とす、あまりに恐るべき辣腕です」「聞かせてくれまいか。何がそれほどに恐ろしいのだ?」悦に入って自説を語る呂望へ、私は静かに問いを投げかけた。刹那、呂望の表情が「あっ」と強張る。辣腕の王を前にして、我を忘れて語りすぎていた。確かに溢れんばかりの才気はあるが、そのあたりは言葉通りにまだ若い。「失礼いたしました……! ですが、貴族や大夫はその土地に根差し、領地が潤えば己も潤う運命共同体。されど、中央集権化によって派遣されただけの官僚(役人)ならばどうでしょう。彼らは『己の任期中』さえ凌げれば良いと割り切るはずです。誰が、目先の評価を落としてまで、見えぬ未来へ投資などしましょうか。最悪の場合、任期中に吸い上げるだけ吸い上げて去る、そんな奸臣を呼び込むやもしれません」(なるほど、見事な洞察だ)私は内心で深く膝を打った。御前であることも恐れず、我が政策の生む歪みと罪を的確に突いてみせたのだ。――この男、何としても手に入れたい。




