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微子の憂鬱外伝 紂王伝  作者: 日和見


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貰った財宝と生首、どうしよう?

紂王伝 第55話 床にへたり込み、子供のように泣き叫んでいる私を、旦那様は無表情のまま冷たく見下ろしていた。「ああ、安心せよ。その者たちはな……」その声音には、私を宥めるような温かみなど微塵もなかった。ただ機械のように平坦で、冷え切った言葉が紡がれる。「この私が直々に、伯邑考へ朝歌での滞在と面会の許可を出したというのに、それを無視して今回の蛮行に協力した不届き者たちだ。我が王命を軽んじた罪により、先ほど全員の首を刎ねさせておいた」静まり返る会議室のなかに、旦那様の放つ圧倒的な圧迫感が満ちていく。息をすることすら許されないような、重苦しい沈黙。「先ほど申した通り、お前たち二人に罰は無い。この盆の上の財宝はすべて、お前たちのものだ。大いに受け取るが良い。……が」旦那様はそこで言葉を区切ると、私と啓叔父さんを射殺さんばかりの鋭い視線で睨みつけた。「――我が商において、王命を破ればどうなるか。それだけは、その脳髄にしかと刻んでおくことだ」言葉の裏にある意味を、私たちは本能で理解した。(――次にお前たちが私の命令を無視して勝手な真似をすれば、この盆の上に並ぶのは、お前たちの首だ)それは、身内であろうと容赦なく切り捨てるという、絶対的な『死』の警告だった。「は……ははっ……! あ、ありがたき、幸せ……に、ございます……!」沈黙を破ったのは、啓叔父さんの消え入りそうな声だった。いつも優雅だった叔父さんが、今は矜恃も何もかも投げ捨てて床に平伏している。私も、恐怖でガタガタと震える身体を必死に動かし、床に額を擦り付けた。床にこぼれた涙と冷や汗、そしてお小水が混ざり合って私の顔をぐしゃぐしゃに濡らしていく。「あ、ありがと……ございます……っ!」呂律の回らない震える声で、必死にお礼を捧げる。今ここで旦那様の機嫌を損ねれば、本当に殺されると確信していたから。その後、私たちはどのようにしてあの部屋を出たのか、よく覚えていない。ただ分かっているのは、生きた心地のしない地獄のような空間から、命からがら逃げ出したということだけだった。宮殿の廊下へ出ても、私の震えは止まらなかった。旦那様を困らせる悪いやつにお仕置きをして、褒めてもらうはずだったのに。どうして、どうしてこんなことになってしまったの――。私はただ、啓叔父さんと二人で、血の匂いが染み付いた財宝の箱を抱えながら、絶望の闇の底へと突き落とされていた。

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