気分がいいからお土産買っちゃう
紂王伝 第50話 羑里からの帰り道、私の足取りはいつになく軽かった。悪いやつにちゃんとお仕置きができて、化けの皮も剥いでやれたのだ。胸のすくような大成功に、気分は最高だった。「そうだわ。せっかくこうして外に出たのだから、嬴風お姉様と禄父君にお土産を買って帰りましょう!」思いついた名案に、私は馬車の窓からお付きの侍女たちへ向けて声を弾ませた。「行き先を市場に変えてちょうだい。旦那様のおかげで、今の朝歌の市場に行けば、本当に色んなものが買えるものね」ついでに、私は懐から貝貨を取り出すと、彼女たちの手に握らせた。「少ないけれど、今回の面倒事を手伝ってくれたお礼よ。取っておいて」「えっ、いえ、そのような、私たちはただお供をしただけで……」「いいから、もらいなさいな」恐縮する彼女たちに無理やり受け取らせて、私はふふっと微笑む。協力してくれた人には優しく、が私の信条なのだ。到着した市場は、活気と熱気に満ちあふれていた。以前に比べて、並んでいる商品の品揃えが明らかに違っている。旦那様が頑張って国中の流通を整えてくれたおかげで、最近では北の果てで採れた珍しい果物もよく見かけるし、東の海から運ばれてきた魚の干物なんかも並んでいる。「うーん、悩んじゃうわね……」お姉様と禄父君が喜んでくれそうなものはどれかしら、とあちこちの露店を覗いて回る。これでもない、あれでもない、と小一時間ほど賑やかな買い物を心ゆくまで楽しんだあと、両手にお土産をたくさん抱えて、私はようやく邸宅へと帰宅した。「ただいま戻りました、嬴風お姉様! 禄父君!」お土産を差し出す私を見て、二人は目を丸くしたあと、すぐに優しい笑顔を咲かせてくれた。「あら、妲ちゃん。今日は一段とご機嫌ね。まあ、素敵なお土産をありがとう」「妲姉、ありがとう! これ、僕が欲しかったやつだ!」「ふふ、喜んでもらえてよかったわ!」二人の笑顔に囲まれて、私は心の底から楽しいひと時を過ごしていた。自分が旦那様のためにしたお仕置きが、どれほど凄惨な事件として宮廷を揺るがしているのか。そして、大好きな旦那様がどんな表情で報告を受け取ったのかすら、この時の私はまだ、何も知らなかった。




