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微子の憂鬱外伝 紂王伝  作者: 日和見


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ちょっとそこは愛してるでしょ

紂王伝 第40話 不器用な王の帰還忙しさを理由になかなか帰ってこなかった旦那様が、今日、本当に久しぶりに奥の館へと帰ってきた。「ふふっ……」私は嬉しさを噛み締めながら笑みを零し、そっと廊下の柱の影へと身を隠す。いつも私たちに寂しい思いをさせている罰だ。帰ってきた瞬間に思いっきり驚かしてあげよう。足音がだんだんと近づいてくる。うん、あと少し、あと一歩。「わあ!」タイミングを見計らって柱の影から飛び出すと、旦那様は一瞬、見たこともないような変な顔をして硬直した。悪戯が大成功して心の中で快哉を叫んだのも束の間。「あ、こら……!」旦那様は大きな両手を私の脇に入れて、まるで軽い荷物でも扱うかのように、ひょいと私の身体を持ち上げたのだ。「子供扱いするな!」足をばたつかせて抗議するけれど、旦那様はただ楽しげに目を細めるだけ。悔しくなった私は、そのまま旦那様の首にぎゅっと抱きつき、その広い胸に顔を埋めた。懐かしい、大好きな匂いが鼻腔をくすぐる。「あらあら、大王様、おかえりなさいませ」「父上、おかえりなさい!」私たちの騒ぎに気づいた禄父君と嬴風姉さんも、嬉しそうに笑顔を輝かせてこちらへと駆けてきた。みんなで旦那様を取り囲み、館の中が一気に賑やかになっていく。ふふ、やっぱり辛様がここにいるだけで、みんなの元気が何倍にも膨らんでいくのがわかる。私は旦那様の胸にしがみついたまま、耳元でそっと囁いた。「辛様、愛してる」すると旦那様は、少し照れくさそうに私の頭を大きな手でぽんぽんと叩くだけだった。ちょっと、そこは「私も愛してる」って返すべきでしょ!相変わらず言葉が足りなくて不器用な旦那様に、私は胸の中で小さく文句を言いつつも、離したくない愛おしさに満たされて、さらに強くその身体を抱きしめていた。

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