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微子の憂鬱外伝 紂王伝  作者: 日和見


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新たな家族

紂王伝 第28話 重苦しい謁見の間から、促されるままに案内された場所――宮廷の最奥に位置する王の私邸は、私の想像を遥かに超えるものだった。そこには、軍馬さえも全力で走らせることができそうなほど、果てしなく広大な庭園が広がっていた。手入れの行き届いた緑の向こうには、朝歌の富と権威を象徴するような、荘厳で美しい建物がそびえ立っている。あまりの広大さに圧倒され、思わず足がすくみそうになったその時、建物の前で私たちを待っていた二人の人影が、そっとこちらへ歩み寄ってきた。一人は、気品溢れる柔和な笑みを浮かべた美しい女性。もう一人は、私とさほど歳が変わらない、どこかあどけなさの残る男の子だった。「いらっしゃい。新しく私たちの家族となるお嬢さん。私は嬴風と言いますわ」女性は、まるで実の妹でも迎えるかのように、にこやかで温かい声をかけてくださった。この商の国に来てから、初めて向けられた敵意のない言葉に、胸の奥がじんわりと熱くなる。「……ようこそ、僕は禄父」隣の男の子は、慣れない女の子を前にして緊張しているのだろうか。少しだけ声を震わせながらも、一生懸命に私を歓迎しようと、真っ直ぐな瞳で挨拶をしてくれた。王の冷徹さに絶望しかけていた私の心が、二人の温もりに触れて、みるみるうちに解きほぐされていくのを感じた。「はい……。これから、どうぞよろしくお願いいたします。私は有蘇の地より参りました、妲己と言います」私は精一杯の礼を尽くし、けれど今度は偽りの従順ではなく、心からの言葉を返した。冷酷無比な侵略者の王が統べる、恐るべき呪われた都。けれど、この人たちとなら――この温かな「家族」のなかでなら、私はきっと打ち解け、生きていくことができる。張り詰めていた身体の力がふっと抜け、私は旅に出てから初めて、安堵の息を小さく漏らしていた。

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