陣頭
紂王伝 第123話 全軍の総指揮官は私だが、四万の本隊(正規軍)は子期が、五千の親衛隊は悪来がそれぞれ実戦の指揮を執る。物別れに終わった九国との最終会談ののち、私は本陣へと戻り、二人を呼び寄せて作戦の最終確認を行った。「あの生意気な九侯を今すぐ叩き潰してやりたいが、予定通りに、期よ、お前が合図を送れ。悪来、親衛隊の指揮は全て任せる。――が、私も共に突撃するからな?」私の言葉に、二人はいつものように難色を示した。何時までも君主自ら突撃するのは如何なものかと、国を預かる身の上の自覚を促したいのだろう。私は改めて彼らに己の意思を宣言しておく。王である私が先陣を切って突撃することにより、総指揮を委ねられた期の『全軍突撃』の決断が、どうしても慎重になりすぎてしまうという弊害があることは重々理解している。王を死地へ飛び込ませるわけにはいかないという重圧が、将の判断を鈍らせるのだ。だが、後方で指示だけなどできるものかよ。もちろん、無謀な突撃は御免だが、数で勝る我が商軍がわざわざそのような真似をする必要もあるまい。「さて、期と悪来の指揮、見せてもらうぞ。願わくば、此度の戦が私の大いなる賞賛で終わることを期待している」二人はそれぞれに一礼し、己の配置へと付くために散っていった。私は、本陣中央に配置された戦車の上へ立ち、陽光を浴びてギラギラと輝く広大な平原を静かに眺めた。対峙する九国の二万の軍勢。その布陣を冷徹に見据えながら、私は商の圧倒的な武の嵐を呼び起こす、最初の一打の合図をじっと待つのであった。




