訓示
紂王伝 第121話 並み居る重臣たちの反対の声を力ずくでねじ伏せ、私は九国を迎撃する大軍の全権指揮を執ることに成功した。供回りとして、悪来が指揮を執る親衛隊五千。本隊として、商の重鎮・子期が指揮を執る正規軍四万。そして――私。漆黒の軍装に身を包んだ私は、悪来、子期を左右に従え、朝歌の広場に整列した四万五千の将兵たちの前に堂々と姿を現した。視界の果てまで埋め尽くす槍の林と、鍛え上げられた兵たちの鋭い眼光。私は深く息を吸い込むと、腹の底から響く圧倒的な覇気を帯びた声を全軍へと叩きつけた。「兵士諸君! ――愚かなる九国が、我が商王朝に反旗を翻し、この都・朝歌へと迫らんとしている! その数は二万!」私の力強い先口に、兵たちの間に張り詰めた緊張が走る。「だが、恐れることは何一つない! ここ朝歌、そして近隣の相、庇といった主要な軍事都市より集結した我が将兵の数は、実に四万! さらにこの私自身も、誇り高き親衛隊五千と共に戦場へと立ち、最前線で諸君らと泥を共にする!」全軍の視線が、私の一挙手一投足へと完全に釘付けになる。「我が商の軍勢が求めるものは、ただの『勝利』ではない! ――立ち向かう敵を骨ごと粉砕する、圧倒的な勝利のみだ! 諸君らの勇猛なる奮戦に期待する!」私が激を飛ばし終えると、続いて本隊を率いる子期、そして親衛隊を率いる悪来が、それぞれ地を震わせるような怒号で兵たちを鼓舞した。「「「おおお、おおおおおおおおおーーーッ!!!」」」三人の指揮官の激が重なった瞬間、広場を埋め尽くした四万五千の将兵から、地響きのような割れんばかりの咆哮が沸き起こった。突き上げられる無数の槍が、陽光を浴びてギラギラと眩しく輝く。よし――。実に良い士気だ。私は兵たちの命を懸けたその熱量に深く満足すると、重厚な戦車の台座へと飛び乗った。手綱を握り締め、前方を見据える。九国を跡形もなく叩き潰してすべてを吐き出したいという兇猛な飢えは、いまや最高潮に達していた。「全軍、出陣せよ! 愚者どもに商の武の恐ろしさを刻み込んでやるぞ!」私の号令と共に、商の誇る大軍勢は、乾いた大地を鳴動させながら不敵な迎撃へと向けて出征するのだった。




