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微子の憂鬱外伝 紂王伝  作者: 日和見


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全部、私の所為だった

紂王伝 第112話 ――傅華(ふか)お姉様が、死んでしまった。今朝、屋敷の寝室へ入った侍女が発見したときには、すでに天井から首を吊っていたのだという。なぜ……? どうしてそんなことになってしまったの?旦那様はあんなに寛大な温情を用意してくれていたし、これ以上お姉様の心が酷い傷を負わないようにと、嬴風(えいふう)お姉様と私からも、何度も何度も「大丈夫だからね」とその優しさを伝えていたはずなのに。お姉様の急死を受け、後宮は一気に凍りつくような厳戒態勢へと突入した。残された四十九名の九国の侍女たちには、基本的には自邸の屋敷内に留まるよう命令が下された。買い物などのやむを得ない外出時にも必ず事前の許可を取り、我が商の親衛隊たる近衛兵の方々を同行させなければならないという、極めて厳しい制限措置だ。やがて、部屋に隔離された侍女たちへ一人ずつ、徹底的な尋問が開始された。その捜査の過程で、ある侍女が漏らしたという、お姉様の遺した言葉が私の耳にも入ってきた。「傅華様は……周(しゅう)の姫昌(きしょう)様が幽閉され、その解放に赴いた後継者の伯邑考(はくゆうこう)様が凄惨に殺害された事件のことを、ひどく恐れておいででした。我が九国も、今回の不祥事をきっかけに、周と同じように商によって破滅させられるのではないかと、夜も眠れずに怯えていらしたのです」――っ。「だから、傅華様は自ら命を絶たれました。『父である九侯(きゅうほう)にまで王朝の罰が及ばないよう、私が先に命をかけて謝罪をすれば、いかに王とて、それ以上の追及をすることは難しくなるはずだ』と……そう言い残して……っ」お姉様の、命がけの、あまりにも哀しい誤解。その真実を知らされた瞬間、私の頭の中は真っ白になり、足の先から全身の血の気が一気に引いていくのを感じた。周の、伯邑考の、殺害――。そんな……。じゃあ、全部、私のせいじゃない。あの日、あの時、私が深く考えずに、何も考えずに微子啓(びしけい)の唆しに乗って、伯邑考を拉致して無残に殺害してしまったから。あの時、私が犯してしまった取り返しのつかない大罪の因果が、巡り巡って、この奥にやってきた。そして、私を本当の妹のように愛してくれた、優しくて不器用な傅華お姉様を恐怖のどん底に突き落とし、その命を奪い去ってしまったのだ。「ああ……っ、ああ、あああ……っ!」激しい過呼吸のなか、私は立っていられなくなり、そのまま床へと膝から崩れ落ちた。「妲(たん)ちゃん! 妲ちゃん、しっかりして!」嬴風お姉様が慌てて私を抱きしめ、背中を何度も擦りながら必死に慰めてくれる。だけど、お姉様のどんなに優しい温もりも、今の私の耳には何も届かなかった。どう考えても、私のせいだ。私が、あの伯邑考の死という呪いを生み出したからだ。大好きだった、新しい私のお姉様。傅華お姉様を殺したのは、他でもない、この私だ――。私は自分の醜い手を見つめながら、涙さえ枯れ果てた絶望の底で、声にならない悲鳴を上げ続けるのだった。

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