仲良くなれるといいな
紂王伝 第104話――初めて迎えた、大好きな旦那様との二人きりの添い寝の夜。朝、パチリと目を覚ますと、隣にいた旦那様が眩しそうに目を細めて、私の頭を優しく何度も撫でてくれた。「よく眠れたか、妲己」「はい……っ!」えへへ……。嬉しさと温かさで、胸がいっぱいになってどうにかなってしまいそう。私はすぐに侍女たちを呼び、旦那様の朝の身支度を整えてもらった。その後に私も素早く身支度を済ませると、急いで玄関へと向かい、仕事へ向かう旦那様を笑顔で見送った。旦那様の姿が見えなくなった後、私は一目散に嬴風お姉様の元へと走った。夕べの御礼と、この溢れんばかりの幸せな気持ちを、一刻も早く伝えたかったのだ。「まぁ! 本当に良かったわね、妲ちゃん」私の報告を聞いたお姉様は、我が事のように顔を輝かせると、愛おしそうに私をぎゅっと抱きしめてくれた。優しいお姉様の腕のなかで、私は今、この上ない幸福感に満たされていた。そうして、お姉様と二人で穏やかに朝の雑談を交わしていた時のこと。あの傅華さんが、忙しい合間を縫って、お姉様への挨拶のためにこちらの屋敷を訪ねてきたという。「王后陛下。入内初日の御挨拶以来、日を跨いでのお目通りとなりましたこと、誠に申し訳ございませんでした」傅華さんはお姉様の前に進み出ると、名門の姫らしく、実に優雅に深く頭を下げて謝罪を述べた。「ふふ、気にしないで頂戴、傅華さん。大国から大人数で来られたのですもの、荷解きや家具の搬入で目の回るような忙しさだったのでしょう? 今だって、まだ無理をしてこちらへ来てくれたのではないかしら」お姉様はどこまでも優しい声音で、彼女の労をねぎらうような言葉を返していた。お姉様の完璧な対応を隣で見つめていると、傅華さんが私の方へと視線を向けてきた。「妲己さんも、よろしくね」「はい! 私こそ、これからどうぞよろしくお願いします」お互いに笑顔で挨拶を交わす。(良かった……。やっぱり、とっても綺麗で素敵な人そう!)これから同じ後宮で暮らす大切な家族になるのだ。何があっても仲良くしたい。夕べ、旦那様が私に注いでくれたたっぷりの温もりのおかげで、私の胸の中にあった傅華さんに対する醜い嫉妬の心は、もう跡形もなく綺麗に霧散していた。お姉様の屋敷を辞し、自分の屋敷へと戻る道すがらのことだった。後ろを歩いていた傅華さんが、ふと私を呼び止めてきた。「妲己さん。もしよろしければ、少しお話しいたしません?」「はい、喜んで! どういたしましょうか? 私の屋敷になさいますか、それとも傅華さんの屋敷へ伺いましょうか?」私が声を弾ませて尋ねると、彼女はふっと柔らかく微笑んだ。「私の屋敷は、まだ客人を招き入れられるほど準備が整っておりませんの。だから……もしよろしければ、妲己さんのところにお邪魔させていただいてもかしら?」「はい! では、喜んでご案内させていただきますね!」えへへ……。歳も近いし、おしゃべりをすれば、傅華さんともきっとすぐに仲良くなれるはず。私はこれから始まる女の子同士の楽しい対話に胸を膨らませながら、大好きな旦那様の温もりが残る私の屋敷へと、彼女を案内するのだった。




