どんな罰だというのよ
紂王伝 第101話 ―崇国の軍事的な大膨張。あの獰猛な『虎』が、商の最新戦車と練兵技術を手に入れ、我が九国の喉元を脅かすほどに勢力を伸長させている。その圧倒的な軍事的脅威に恐怖し、危機感を覚えた父上(九侯)によって、私は一ヶ月前、半ば無理やりに商の王へと嫁がされることが決まった。商王朝への牽制、そして我が国の生き残りをかけた婚姻外交。そのための生贄として、二百年の名門たる傅氏の血を引く私――傅華が選ばれたのだ。父上は、九国としての絶対的な威信とプライドをかけるため、実に行列三千人にも及ぶ圧倒的な規模の使節団を組織した。そして王宮の奥(後宮)へ入る際にも、私の身の回りを世話する侍女を五十名も随伴させ、新参の諸侯とは格が違うのだという大国の面目を、これでもかと見せつけながら入内した。都でのお披露目の式典を終えた後、私は商の王に伴われて奥へと向かい、そこで待ち構えていた者たちと対面した。正妻であり王后の嬴氏の風。その息子で王太子の禄父。そして――私よりも先に嫁いでいたという、側室の己氏の妲。お互いに表面上は、宮廷の法度に則った丁寧な挨拶を交わし合った。その後、荷解きや屋敷の体裁を整える時間を考慮され、私には七日間の猶予期間が与えられた。王宮の連中は「身体を労るための王の慈悲」だとでも思っているのだろうが、私に言わせれば、地獄への秒読みでしかない。(……一体、私が何をしたというの? どんな罰だというのよ)国許にいた頃は、二百年の名門の姫として何不自由なく、誇り高く暮らしていた。それなのに、ある日いきなり父上から離縁の命令を下され、生まれ育った故郷から四百キロも離れた、こんな見知らぬ商の朝歌へと拉致同然に連れてこられたのだ。しかも、その婚姻の相手は、周辺の罪なき国々を容赦なく侵略し、奪い尽くし続けている野蛮極まりない残虐な王。数えてみれば、年齢はとうに三十を超えているという、私から見ればただの薄汚い『爺』ではないか。噂によれば、さすがに最近は廃止したようだけれど、ほんの数年前までは祭祀の度に、捕らえた人間を生贄として容赦なく惨殺していたおぞましい国だという。そんなバケモノの寝所に、あと数日で私は生贄として差し出されるのだ。恐ろしい。反吐が出る。七日間の猶予の間に、ここから逃れる方法はないものかと、私は屋敷の暗がりのなかで毎日虚しい夢想を繰り返していた。(――絶対に、あの野蛮な爺にだけは、この身体を安易に許したくない。何とかして、私の気高さを見せつけて遠ざけなければ……)王宮のすべてが気に入らなかったけれど、とりわけ、昼間に挨拶を交わしたあの女たちが目障りで仕方がなかった。正妻の嬴氏(風)は、夏王朝の時代から続く超名門の血筋。癪だけれど、あの王后にだけは、格の違いを認めて大人しく従うしかない。――だが、あの、私の隣に並んでいた己氏(妲己)とかいう『ちび助』は何なの?己氏? 冀州侯?どこの馬の骨とも知れない、新参の弱小諸侯の娘ではないか。あんな格下の泥泥の田舎娘が、二百年の名門であるこの私と「同じ側室」として、平然と同格の面面をして並んでいるなんて。それ自体が、我が九国に対する最大の侮辱だわ。「ふん……。ちょうどいいわ。退屈な待ち時間の気晴らしに、今度からあの小娘に、名門としての本物の『身の程』というものをたっぷりと教えてあげなくてはね」私は冷え切った豪華な調度品に囲まれた部屋で、一人、どす黒い歪んだ笑みを浮かべる。




