新たな側室と抑えきれない嫉妬
紂王伝 第99話 九侯の息女が、ついにこの朝歌の宮廷へと嫁いできた。盛大を極めた都でのお披露目の式典を終え、彼女は旦那様に付き従い、五十名もの膨大な数の女官たちを引き連れて、私たちの待つ奥(後宮)へとやってきた。私と嬴風お姉様、そして禄父くんの三人で並び、帰還された旦那様を恭しく出迎える。そこで、新しい側室となる彼女を紹介された。名は、傅華。まだ、瑞々しさを残す十五歳の少女。旅の疲れを癒やすための七日間の猶予が過ぎれば、彼女はすぐに初夜の儀を迎え、旦那様からの本物の寵愛を受けることになるのだろう。(――旦那様の、本物の寵愛……)胸の奥が、鋭い刃で抉られたようにズキリと痛んだ。私がこの宮殿に嫁いできてから、もう三年もの月日が流れている。それなのに、私は未だに幼さゆえに夜のお相手すらしてもらえず、ただの形式上の側室のままだ。それなのに、新しく来たばかりの彼女は、すぐに旦那様の本当の妻になる。政略のための婚姻なのだから、年齢的にも仕方のないことだとは、頭では痛いほど分かっている。だけど――どれだけ理屈で言い聞かせても、私の心の中にどす黒く湧き上がる、激しい嫉妬の炎を抑えつけることがどうしてもできなかった。(ダメ……! そんな醜い感情を抱いちゃダメ……っ!)必死に己の心を叱咤する。そんな身勝手な嫉妬に囚われてしまっては、私がこの後宮の和を乱す原因になってしまう。大好きな旦那様が命がけで守ろうとしている、この温かい家族の場所を、私のせいで壊すわけにはいかない。後で、嬴風お姉様の屋敷へ行こう。そして、この胸の中にある醜くて抑えきれない嫉妬の気持ちを、包み隠さず正直にお姉様に打ち明けるんだ。間違った道へ進みそうになった私を、お姉様ならきっと全力で叱ってくれる。そのお叱りを受けて、この狂いそうな気持ちをもう一度きれいに整理しなければ。私を無条件の愛で優しく受け入れてくれた、嬴風お姉様や禄父くんのように。今度は私が、新しくやってきた傅華を、温かい家族の一員として優しく受け入れてあげるために――。私は自分のなかに芽生えた不穏な感情に必死で蓋をしながら、消え入りそうな善意を振り絞って、新妃の美しい姿を見つめ続けるのだった。




