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百華ちゃんの話を聞いた余波で正直食欲も削がれていたけれども、とりあえず持参した焼きそばは完食した。美味しいなんてとても思えず、まるで輪ゴムでも噛んでいるような気分。それでも負けるわけにはいかないという意地から、私はその場に留まって食事を続けることを選んだ。
食事の間、私達は終始無言だった。百華ちゃんはどう思っているか知らないけれども、こちらは散々忌避感を刺激されて、とてもお喋りなんかする気になれなかった。
息の詰まるようなランチタイムを終えた私は、飲み物を買いに行くとかトイレに行くとか、ごちゃごちゃと理由をつけて教室を出た。ちょっとあからさまかなとは思ったけれども、百華ちゃんは意に介する気配なし。「そう、いってらっしゃい」と最後まで涼しい顔をして私を見送った。
ひとまず私は、残りの昼休み時間で珠里ちゃんの行方を捜すことにした。あの場を立ち去った時の、彼女のつらそうな表情が気がかりだったのだ。
珠里ちゃんは、恐らくずっと隠していたのだろう、百華ちゃんに対する心理的抵抗感を。
正義感が強い珠里ちゃんのこと。私が、嫌がらせの被害者として百華ちゃんに接していたから、彼女は自分の感情を棚上げするより他なかったのだと思う。
だけど百華ちゃんの挙動が引き金になって、珠里ちゃんは気持ちが抑えられなくなってしまったのだろう。私はそんな彼女を責めることはできなかった。むしろ、彼女の内心を全く察することができなかった自分をなじりたいほど。背景は知らなかったにせよ、これまでの会話や場を共にする時の態度で、何か示唆するものがあったかもしれないというのに。
今更どうにもならないし、私に何が出来るわけでもない。独りよがりな後悔だとか罪悪感だとかを胸に、珠里ちゃんの姿を追う。
居場所は大体目星がつく。恐らく部室。私が彼女の立場だったなら、人目を避けて静けさのなかに身を置きたいと思うから。
だから、他の場所は全く考慮に入れず、私はそこへ向かった。
相変わらず静かな北側の校舎。昼でもやや薄暗い廊下に光は漏れておらず、室内の電気は点いていない様子。それでも私は、珠里ちゃんがいるものだと思い込んで、扉の向こうへと飛び込む。
「――――珠里ちゃん!」
入口の引き戸は鍵がかかっておらず、勢いのまま音を立てながら開く。
だけど、そこにいたのは。
「な……!」
何でいるの、という言葉が口をついて出そうになる。
明かりも灯さず部室で一人、北上くんが昼寝を決め込んでいたのだ。しかも、机に突っ伏してなどという慎ましい寝姿ではなく、窓際の床に座り込んで壁に凭れ、見るからに堂々と眠り込んでいる。
そうとも知らず、ぞんざいに扉を開けた私。目を閉じた北上くんの眉がピクリと動いていることに気づく。
やばい、起こした……!
引き返そうとするけれど、動揺のあまり判断が遅れていた。
北上くんは欠伸をしながら目を擦ったかと思うと、眠気が残る赤い目を細めながら私を見る。
「――――よう、律子」




