二十二
更新空きました。
再開します。
秀に見送られた美沙は、家に帰るなり自分の部屋に入る。
服も着替えぬまま、ベッドに飛び込む。
「外の匂い……」
自分からいつもと違う匂いがすることに違和感を感じる。
今日はスイーツを食べてからはウィンドウショッピングをしていた。
美沙は基本的に商品はすぐに見終わる。
逆に秀は買い物が長い。
一般的に見ると、男女逆なのだが、二人ともそんなことを気にしていない。
むしろ秀がじっくりと商品を見ている様子に美沙は可愛らしさを感じるくらいである。
結局今日は何も買わなかったが、充実した一日だったと感じる。
「うーん……」
だが、美沙には気がかりが一つある。
今日は全然ゲームの話をしなかったのだ。
美沙はサライを始めて三日しか経っていいない。
だからこそ、秀のことをもっと知れると今日は生き生きとしてデートに臨んだ。
しかし、結果はいつも通りだった。
私の思い違いなのかなー、と美沙は思いながらベッドの上をゴロゴロと転がる。
新しく買った服がシワシワになっていることに美沙は気づいていない。
「あー、どうしたもんかのぉ」
おじいちゃん口調になりながら独り言を呟く。
そこで携帯が通知を知らせる。
秀もう帰ったのかな?
美沙が秀だと思ってその通知を見ると、そこにあったのは、『トイナ』の三文字。
「あ、トイナさんだ」
秀には言っていないが、実は昨日トイナと美沙はフレンド登録をして、メッセージのやり取りをしていた。
これ秀が見たらなんて言うかな? と美沙はクスリと笑う。
トイナ:お疲れ様です。
今日新しいイベントについて発表されましたけど、ミヤさんは出る感じですか?
【深き深きモノタチヨ】
井戸の底から溢れ出す『深淵のモノ』の意識。
人間は『深淵のモノ』に取り憑かれ、深淵の意思に従い、斬って、斬って、斬る。
君たちは選ぶ。
深淵を従うか、深淵を従わないか。
『深淵のモノ』と『地表のモノ』この2つがぶつかり合う時、戦いはハジマル。
今回のイベントの情報なのだが、イベントに関しての説明をまだ美沙は受けていない。
つまり、美沙はこのイベントについて全く何も分かっていない。
ミヤ:すいません、初めてのイベントだからあんまり分からないんですよ。
もしよかったら教えてくれるとありがたいんですが……
秀に聞いた方が早いのだろうが、なんとなくちょうどいいのでトイナに聞いてみる。
しばらく返信は帰ってこないだろうと美沙がベットから出ようとすると、またも通知が鳴る。
しゅー:帰ったよー
みさ:おつかれさまー
しゅー:今日は楽しかったぞい!
みさ:私もだよー
秀のこう言うところがいいんだよな。
美沙は少し照れているのを自覚する。
しゅー:あ、そういえばさ、イベントの話してなかったよね?
みさ:確かに
しゅー:今回のイベントは、二大勢力って分類のもので、基本的には普通の遊び方と同じなんだけど、様々な要因で勢力の勝敗を決めるんだよね。
それに、今回は新刀が出るから、多分かなり競争率高いよ。
それと最後に、二大戦力はチームに属さない、って選択肢があるから、それには気を付けて
いきなりの長文に文字打つの早くない? と美沙は内心思う。
しかし、これは美沙が知らないだけで、思考入力という、携帯の機能である。
もちろん美沙の携帯にもその機能はあるのだが、美沙が知るわけがない。
そこで、美沙の携帯が秀以外からの通知を知らせる。
美沙はトイナからの連絡かと思ったが、一瞬それが本能にトイナからの連絡なのか戸惑った。
トイナ:今回のイベントは、二大勢力という分類のものです。
基本的には普通の遊び方と同じで、様々な要因で勢力の勝敗を決めます。
それに今回は新刀が出るので、多分かなり競争率高いと思います。
それでどちらかの勢力につくのはいいんですが、二大戦力ではチームに属さない、って選択肢があるので、それには気を付けてください。
ほとんど同じ文言。
不思議に思う美沙は、携帯でサライの二大勢力について調べる。
そこには確かに二大勢力の説明があったのだが、どれもこれもが勝つためには……といった攻略サイトばかりだった。
そして追加で気になったのは、しばらく調べた後。
それは、秀とトイナが言った『どちらの勢力にも属さない』という項目。
どこを調べようが、そんな情報は見つからなかったのだ。
☆☆☆☆☆
次の日、秀はいつも通りに登校していた。
昨日は休みだが、それはあくまでも祭日。
次の日が金曜日で、それも祭日でなければ、普通に学校はある。
「だるい」
自分の席にたどり着くなり、秀は前にいる若葉に話しかける。
「なんだい秀」
「だるいと言っているのがわからんのであろうか」
「まぁ分からなくはないけど、明日休みじゃん?」
「……確かに」
若葉の発言に秀は納得する。
しかし、秀の口は止まらない。
「だけど、それで今日のだるさが消えるかと言われれば違うだろう」
苦笑いしながら話を聞く若葉に、秀はため息をつく。
「ま、茶番はこれまでにして」
「どうしたの?」
秀が真面目な顔をする。
若葉は話半分でペン回しをしている。
「次のイベント、どうしよう」
「あー、二大勢力のやつね」
「そう。
前の二大勢力で、次は不利そうな方に入ろうって思ったけどさ、美沙がいる手前そうもいかない……」
「確かに。
美沙ちゃんの初イベントは勝たせてやりたいもんね」
「今回は深淵の方が優位になるのは分かってるんだけど……」
話半分に聞いていた若葉も、いつのまにか真剣に話をしていた。
「おっは……って何二人して真剣な顔してんの?」
「おっす漣」
「おはよう漣」
そこに現れたのは漣。
いつもは二人で笑顔でいるのに今日は珍しく真剣な顔をしていたため、心配そうに聞く。
「別に、ゲームの話だよ」
「そっか、美沙は元気にやってる?」
「あー、それはもうバリバリに、ほんとに……」
苦笑いしながら話す秀。
漣はその様子に何かあったのかと勘ぐるが、
「美沙があのゲームをする才能があるのでは? ってくらい凄いんだよなぁ……」
そういうことではなかったらしい。
それに秀の苦笑いも、別に嫌そうな感じがしない。
仲良くやってんじゃん、と言いそうになるが、なんとなく言うのをやめる。
ちょっと負けた気がするからだ。
その会話が終わったのを察した若葉は、ゲームの話に戻る。
「それで今回の新しい刀はどんな感じ?」
「『視認されると相手の姿を発見できる』」
その言葉に若葉の表情が凍りついた。
当然、漣からしてみれば何を言っているのかさっぱりである。
だからこそ、気軽に質問する。
「どうしたのよ若葉。
その刀? がどうしたのよ?」
「あー、漣」
硬直した若葉に変わり、秀が漣に声をかける。
「今回のサライのゲームのイベント。
新しいアイテムが出るんだ。
そんでもって、プレイヤーは二陣営に分かれて、勝った方がアイテムをもらえる、オッケー?」
「う、うん」
「それで今回の新アイテム、分かりやすく例えると、携帯並みに便利過ぎる」
「は、はぁ……」
いきなり携帯を例えに出されて困惑したが、とりあえず秀の言葉を聞く。
「で、二陣営に分かれて、勝敗を決める。
報酬は年に一回あるかないかの超便利アイテム」
「もしかして人がすごいことになる、とか?」
「十倍」
一言、秀の言葉に漣は疑問符を浮かべる。
「いつものイベントの、十倍の人数が既に参加を表明してる」
ようやく漣にもこのイベントの重大さが伝わり、
この場に石が二つ出来上がった。
新刀について。
基本的にイベント(運営)では家紋(まだ出ていない要素)と刀が交互に新登場します。
ワンシーズンに2回行われるので、割と賑わいます。
しかし、今回のイベントではたぶんのその比にならないくらいやばいくらいの人が来ます。




