二十一
「おーはよ」
「お、おはよ」
お昼前。
木曜日の今日は祭日で、明日は学校があるという、学生からしたら嫌な休日である。
待ち合わせの場所は駅の前にあるオブジェ。
そこはこの街でもかなり有名な待ち合わせスポットである。
休日ということもあり、カップルが多く見られる。
そこにいるカップルのうちの一組……秀と美沙は待ち合わせをしていた。
「待ったー?」
「ニヤニヤしながら言うなよー」
待ち合わせ時間にぴったりについた美沙。
基本的に秀が待ち合わせの15分前に着き、その数分後に美沙が着く。
つまり、今日は美沙はいつもより遅く待ち合わせに来ている。
そのため、秀は美沙に何かあったのではないだろうかと心配していた。
実のところ美沙がいつもより遅れた理由は、デートだということで気合を入れてしまったために遅れてしまった。
「時間通りだったから良かったんだけど」
「秀ちゃんは心配だったのかなー?」
「だからニヤニヤしっぱなしだっての」
「えへへ、ごめんね」
まだニヤニヤしながら話す美沙に秀は呆れたようにため息を着く。
美沙は秀が心配そうに連絡していたのを知っていた。
少し意地が悪いとも思ったが、待ち合わせ時間には間に合うと分かっていたため、連絡をしなかった。
その結果、待ち合わせ時間にちょうどたどり着いたのに、秀が少し機嫌が悪くなってしまった。
「ごめんごめん。
お詫びにここら辺で最近できたスイーツのお店に行こ!」
「……和?洋?」
「……和だねぇ」
美沙の言葉に反応する秀。
秀は基本的に味音痴で、かなり『美味い』の範囲が広い。
そのくせに甘いものには目が無い。
といっても死ぬほど好き、なんてことはない。
あくまで好きなものは? と聞かれたら、くらいだ。
それでも好きなものは好きなものである。
「それじゃあ、お昼食べてから行こう」
「じゃあお昼は軽めでいい?」
「マックかな」
「マックだね」
秀の提案により二人は学生御用達のファストフード店に行くことになった。
美沙は秀に対して手を差し伸べる。
その差し伸べられた手に、秀はまるで分かっていたかのように、美沙の手を取った。
☆☆☆☆☆
お昼を食べ終わり、店からしばらく歩いたところにある細い路地。
「本当にこんなところにあるの?」
「本当にこんなところにあるんですよー」
美沙は携帯を見ながら歩いていく。
本当ならば携帯を見ながらならば、信頼してついて行ってもいい。
だが、美沙は基本的に機械音痴だ。
それも、秀がサライを起動できるかどうか心配になるくらい機械音痴である。
今の時代は多くが機械化が進んでいる。
便利になっていく時代の中、ここまでの運動音痴はそうそういない。
秀はそんな人物に、携帯を使って道案内をされている。
ここまで不安なことはないだろう。
「ここだね」
「……確かに、ここだ」
横から美沙の携帯を覗き見て、秀は美沙の言ったことをが正しいと分かった。
そして自信満々に美沙が店内に入ろうと、ドアをスライドする。
そこで、秀が突っかかる。
「待って」
「ん?」
「なんで今、ドア開けれたの?」
「……?」
美沙からすれば当然のような質問。
それはドアがスライドするのが分かったから。
それ以外ない。
そのはずなのに、秀は質問している。
「いやさ、普通ドアって外開きか内開きだよね。
なのに今美沙は普通にスライドのドアを簡単に開けていた。
それってさ、おかしいことだよね」
美沙は凍りつく。
その様子に秀も表情が凍りつく。
二人の間に流れる沈黙。
秀が名探偵気取りをしたために起きてしまった事件である。
☆☆☆☆☆
「適当に言っただけなのかい!」
「あ、うん」
店の中。
店の定番メニューである饅頭詰め合わせを頬張る秀。
それに対して和の店なのに抹茶パフェを頼む美沙。
二人はそれぞれ頼んだものを食べながら、先ほどの沈黙について話をしている。
「別に最初から疑っていたわけではないんだよ。
ただあんまりにもスムーズにしているからさ、ちょっとカマかけてみようかなって……」
「なんでこんなタイミングでカマかけるのよ……」
美沙がむくれながらパフェを口に運ぶ。
その様子に秀は苦笑いしつつ、飲み込む。
「まさかここの店主が美沙の親戚で、店を作る時に何回も来ていたから迷わなかったって、思いもしないよ」
「秀からの信頼がないことがわかりましたー」
美沙がよりむくれるのを感づいた秀は、自分の手元にある饅頭を美沙の口元にまで持っていく。
美沙は秀が渡してきた饅頭をちらりと見て、しばらくしてから食べた。
「……美味しい」
「それは良かったでございます」
秀は美沙の雰囲気が柔らかくなったのを感じて、ホッとしている。
「そういえば」
秀がホッとしたのも束の間。
「トイナさんに会った」
秀の耳にとんでもない話が聞こえてくる。
「トイナに会った!?」
秀は立ち上がりそうになるのを抑え、美沙の方に身を乗り出す。
美沙はその様子に少し驚きながらも、話を続ける。
「え、うん。
昨日一人でプレイした時にたまたま知り合って、一緒に『白兵戦』やったんだよね」
「…………『白兵戦』をしたって?」
「それに、『夜中』って人たちとプレイしたからっとっても強くてさぁ」
「…………『夜中』……」
秀の空いた口が塞がらない。
美沙はその様子がなんだか面白く感じる。
「うーんと、多分なんだけどトイナのやつから『夜中』の説明受けた?」
「うん。
『夜中』はイベントに一切顔を出さないのに強いから知名度が高いって」
「あーっと、美沙さんや」
そこで秀が小さく手をあげる。
美沙はその秀の様子に、発言を促す。
「『夜中』ってのはあのゲームの中ではすごい存在なのよ。
勝てない、やばい、って言われているんだよ?
毎回違った武器に、練度の高い連携。
さらには確定で【真夜中】がいる。
あんなやばい奴らのオンパレードだよ。
それをそんな楽しそうに戦ったって話すのは……」
「私、そんな人たちと戦っていたの?」
「ちなみに、どうだったの?」
「うーんと、確か4ー4で引き分けだったはず……」
その言葉で、秀が口元まで持ってきた饅頭が皿に戻る。
「……その時に同じチームだったのは?」
「えっと、トイナさんと……よくわからない打刀使いの人と……あ、そういえば炎を纏った大太刀を振るうちょっと老けたおじさんだったよ」
「……炎を纏う……ってのは多分体に身に纏っているように見える人……?」
「あ、そうそう。
大太刀から出ているはず……なんだけど、まるで体に纏っているように見えたね」
その言葉に秀は驚いた顔をしている。
まるでそのセリフに聞き覚えのあるような、そんな表情。
美沙は明らかに何かあるというのを悟って、秀の顔を見る。
「それはねぇ、うん、あの人だわ」
「あの人?」
「うーんと、別にすごい有名でも二つ名持ちでもないんだけど、有名な人ってかなりいるんだよね」
「それじゃあ、さっき行った炎の大太刀の人が?」
「そうだね。
スイさんっていう人で、結構いい人」
「炎なのにスイさんなんだ」
「……スイさんの持ち武器は炎の大太刀じゃない」
「えっ」
「スイさんの持ち武器は、『流麗』。
水の大太刀使いの中では最高峰。
刀を扱う中で最高峰の美しさと言われるほどの実力者」
美沙は秀の真面目な話ぶりに、嘘や冷やかしでは無いように見える。
そして、美沙は疑問に思う。
「あれ? でもトイナさんは知らなかったよ?」
「そりゃそうだ。
あの人も基本的にはイベントには出ない。
トイナは逆にイベントに盛んに出る。
巡り合わないんだよ」
「確かに、そうだね」
秀の話に納得する美沙。
そのタイミングで、秀の携帯の着信音が鳴る。
「ん?
……あ、もうか」
「どうしたの?」
秀の何やら楽しそうな様子に、美沙は話しかける。
秀は、自分の携帯の画面を美沙に見せ、
「新しいイベント!」
そこに表示されていたのは、【深き深きモノタチヨ】という文字だった。
何を書こうか思いつかないので今回はお休みです。
感想とかで書いてくれれば書きます。
感想くれると嬉しいです。




