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十二

「ま、この様にチビだなんだと煽るとすぐ切れるので要注意」

「だーれがチビなんでしょうかねぇ……」


 現在ヒデヨシはダテに胸ぐらを掴まれて振り回されている。

 その様子にミヤはオロオロとするが、当の本人がのほほんとしているので手を出すことができない。


「あ、そういえば、昨日質問のところに試しに書き込みをしたんですよ!」


 そこでミヤはダテに関しての話を思い出す。

 それに思い当たる節があったのか、ダテがヒデヨシを振り回すのをやめる。


「昨日、その質問に沢山の答えが押し寄せられて、その中に『ダテさんは器の大きい素晴らしい人だって書いてましたよ!」

「お、おうそうか」

「それに他の人たちもダテさんは優しい人だって言っている人もいましたよ!」


 話して行くと案外覚えていたらしく、ミヤの話は止まらない。


「一個だけ否定的な意見もあったんですけど、本当にすごい人って敵も作るって聞いた気がしなくもないんですよ。

 つまりダテさんは人気あるんですよ!

 しかも大体の内容が内面に関する内容でしたよ。

 それってダテさんに人望があるってことじゃないんですか?」


 本人的には一生懸命記憶を掘り返すことによって、ヒデヨシへの被害を減らそうとしている。

 それなのに、ダテの顔は曇っている。

 そっと地に降ろされたヒデヨシは、口元に手を当てて笑いをこらえていた。

 ヒデヨシが下されたことに安堵したミヤだった。


「えっと、ちなみにその質問の内容って『強くなりたいです、どうしたらいいでしょうか』ってやつ?」

「え、はい。

 できるかな、って思ったら勝手に投稿しちゃって……」

「あ、ね。

 あそこの質問板確認がないからね」

「あ、それで……あれ?見たんですか?」

「た、たまたま見たんだよ」


 ミヤの話に不自然な様子で質問をしたダテ。

 多少の違和感をミヤは感じたが、特に気にしていない。

 だが、その男は違う。


「あら、ダテくんどぉしたのかなぁ?」

「ん? ヒデヨシくんどうしたんだい?」


 明らかにふざけた様子でダテに話しかける。

 ダテはヒデヨシの明らかな変化に気づく。


 そう、ヒデヨシは気づいていた。

 それはここにログインする前に見た質問板。

 そこで見たのは、ダテが複数持っているアカウントで『祖先』に引き込もうと、ダテが自身のことを売り込んでいる様子。

 つまり、


「うーん、いったい誰がそういうことを書き込んだのかなって」

「あ、いや、多分俺のファンかなんかじゃないかな?」


 ダテは今、自分で自分のことを褒めたという恥ずかしい行為を、まるで他人が褒めてくれていたよ、という様にミヤに教えてもらっている。

 ただでさえ恥ずかしい行為なのに、それを他人が必死に報告してきてくれている。

 普通の人からすればかなり恥ずかしい話だろう。


「ファン……ねぇ、はてダテちゃんにいたっけなぁ?」

「た、多分どっかで見つけてくれたんじゃないかなぁ?」

「そっかぁ、なら俺会ってみたいなぁ」

「そ、そりゃどうしてよ?」

「こんな奴のどこがいいのってなぁ?」

「もうヒデヨシ、失礼じゃないの?」

「あぁごめんねミヤ。

 実際、付き合い長いけど知らなかったからさ」


 ダテはサライにおいてランカー(変態の中の変態)である。

 だがランカーの中でもダテは性格がまともで、チビ関連のこと以外であれば普通の人である。

 そのことをヒデヨシが把握していないわけはなく。


「ごめんなさいダテさん。

 ……ヒデヨシも」

「ごめんね、ダ・テ・く・ん」


 明らかに悪意のこもった言い方。

 ダテは努めて大人な対応で、気にしていないよと返す。

 そこでヒデヨシはポン、と手を叩き、


「話変わるけど、今ミヤがどの武器を使っって行くか決めようとしてるんだよ」


 そこでヒデヨシはダテの近くまで歩いていき、


「そこでさ、ランカーのダテくんには手伝って欲しいわけよ」

(分かっているな、手を抜け。

 だがしかし、程よく相手をするんだ)


 無茶なお願い。

 ダテはそこでヒデヨシの狙っていることに気づく。

 ヒデヨシはこのミヤに関してのこのアホみたいなお願いを通すためにダテの自演行為を見過ごしていた。

 いつもなら率先してバラシにかかるはずなのに今日は動かなかったのはこれが理由か、とダテは苦笑いを浮かべる。


「え、手伝ってもらっていいんですか?」

「あ、あぁ、俺もいきなり押しかけた様なもんだからな」

「ありがとうございます!」


 ミヤの真っ白い髪がふわっと舞った。

 その横ではヒデヨシが少し疲れた笑みを浮かべている。


 このゲームにおいて、手を抜く……いわゆる舐めプというものは難しい。

 基本的にここにいる人たちは本気で斬りかかってきているわけで、それに対処するためには本気でいなければならない。


 さらにランカーというものは余計に人目につくものであるので、対策されていうことが多い。

 そこで多くのランカーはより一層実力をつける。


 手抜きを簡単にできるのなんてヒデヨシくらいだろうに……。

 しかもヒデヨシだったらどの武器でも簡単に操れるのに……。


 ダテは心の中でヒデヨシに悪態をつきながら、自分の持っている『独眼竜』を仕舞おうとして、


「あ、武器はそのままでいいよ」

「はい?」

「え、変えようとしてくれたんですか?」


 ヒデヨシに止められる。

 ダテは手を抜けといったのにそれ用の武器を使わせようとしないというのはどういうことか、と思ったが、


「いやね、短刀の能力を体感してもらおうかなって思って」

「あ、確かに、ダテさんが使っているものだったら本当の試合でも慣れることができそうだしね」


 本当にそんな意味だろうか。

 疑い深くなってしまったダテは、ヒデヨシの方を見るが、当の本人はどこ吹く風という様な様子でいる。


「分かったよ。

 だけど、俺の短刀の能力は普通に危険だから、食らったらすぐに教えて欲しい」

「は、はぁ」


 いまいちよく分かっていない様子のミヤだが、食らえば分かるだろうとダテは『独眼竜』をしまうのをやめた。



☆☆☆☆☆


 

 ミヤとダテは道場の中央に立ち、おたがいに距離を取る。


 ミヤが持っているのは『憂』。

 ヒデヨシが短刀の能力をしっかりと素の状態で確かめて欲しいとのことで、『憂』になった。

 ヒデヨシは道場の端で楽に座っている。

 そんな様子にダテは横目で見ながらため息をついた。


「おいこらやるといったなら真面目にやらないかー」


 ゆるい感じでかかるヒデヨシからの声にダテは正面を見る。

 ミヤはどう構えたらいいのか分かっていないのか、とりあえずと自然体で抜き身の刀を持っている。

 初心者にしては堂に入っている立ち居振る舞いだな、とダテは分析しながらも、ちらりとヒデヨシの方に視線をやると、


「じゃ、始めっていったら始めてねー」


 ゆるい感じで話すヒデヨシに、ダテは集中する。

 まずはどう動こうか。

 とりあえず、初心者だから『踏み込み』は多分やめたほうがいい。

 それに立ち回りも本気のやつじゃなくていつも使わないやつにして、と考えていると、


「始め!」


 声が聞こえた。

 ダテはとりあえず前に進む。

 短刀持ちの基本的な走り方くらいはやってもいいだろうと、ダテは忍者の様に姿勢を低くし、音を立てずに近づく。

 しかし見られているため、無駄なことはぜずに下から斬りつける。

 ダテの予想では後ろに下がれば簡単に避けれるものだったので、気を抜いていた。


 ゾクリ


 ダテが確かに感じた、危険の予兆。

 サライランカーは伊達ではなく、ダテはそのまま身を捩ってミヤから離れようとする。

 その瞬間、


 床に刀が突き刺さる音とともに、ダテの顔面すれすれを刀が過った。

 驚き。

 しかし体はしっかりと回避行動を終える。


「くっ」


 ダテは思考を整理する時間を得ようと距離を取ろうとするが、


「逃がしません」


 ミヤは床に突き刺した刀を引き抜き、下からの袈裟斬りを仕掛けてくる。

 思ってもいなかった反撃にダテは足に力を入れ、


 ミヤの目の前から消え去る。


 そしてミヤの背後に現れるダテ。


 やってしまったという感情とともに、やってくれたなという感情を抱きながらも、ダテは決着をつけるためにその短刀をミヤに突き刺そうとして、


 いつのまにか後ろを向いていたミヤと目があった。

ダテについて

変態揃いのランカーの中では人格的にまともな方で、サライでは割と有名。

ヒデヨシとよくいるし、実力もかなりの物のため、ネットではゴリを交えてセットで扱われることが多かった。

中の人はいたって普通のサラリーマンで、独身。

実は最初に意味もなく否定したのはやっかみという面もあったりする(本人が自覚していないため本編では省略)

現実でもよく同じ会社の女性社員から可愛がられているが、理想の女のタイプは『自分の身長を気にしない人』であるため、かなりハードルが高い。

だが、身体能力はサライ同様普通に高いので、おそらくもう少し自分の身長に寛容になれば彼女はできる。

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