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十一

「どうしたの?」


 ヒデヨシの目の前に現れたメニューをミヤは覗き込む。

 ウィンドウは他の人には基本見られないが、ヒデヨシはミヤにそういった権限を大体認証しているため、ミヤは覗き込める。

 そこに書いてあった内容にミヤはあぁ、と何やら納得したような表情をする。


「そのダテって人、ヒデヨシと仲がいいの」

「ん? ダテちゃんの話したっけ?」


 ヒデヨシはそんなミヤの話しぶりに疑問を覚える。


「あ、別に知ってたわけじゃなくて、ヒデヨシについて調べてたら、結構名前が出てきたから、仲がいいのかなって」

「ま、確かに付き合いは長いね」


 中高と同じ学校だったヒデヨシとミヤは、大体お互いの知り合いは把握している。

 そんなミヤから見ると、自分の知らない友達について話す姿は、なんだか新鮮に見えた。


「じゃあそのダテって人呼んでもいいよ。

 私もヒデヨシの周りの人と知り合ってみたいし」


 気のせいだろうと流した。

 ヒデヨシはミヤの顔を少しみた後、渋々といった様子で承認のボタンを押した。

 その瞬間、道場の戸が勢いよく開いた。


「ヒデヨシ! 試合しようぜえぇぇぇ…………」


そこにいる男は、高らかにそう言い放った後、ヒデヨシに連れられ、道場を出て行った。



☆☆☆☆☆



「お前、今日、俺の、言う通り、しろ」

「絶望的に語彙力がないぞ」

「了承しろ」

「は?」


 いきなりの拉致にダテはすこし不機嫌そうだが、ヒデヨシの今までにない様子に疑問を覚える。


「ま、分かった……なんて言うと思ったか?」


 そこでダテはとりあえず否定から入ってみる。

 ニヤリと悪い顔で笑うダテにヒデヨシのこめかみには青筋が浮かぶ。


「理由はわからんけど、とりあえず拒否しよう。

 もしそれが重大な理由であるならなおさら拒否…………だ?」


 言葉を言い終わる頃には、ダテはうつ伏せで地面に這いつくばっていた。

 そこでダテは気づく。

 ヒデヨシがダテの背中踏みつけていることに。


「おい、ヒデヨシ。

 許してやるから足をどけろ」

「五……」

「おい、離せ。

 俺は別に屈しないぞ」

「四……」


 ダテは立ち上がることなく抗議の声を出す。

 そこで力づくで逃げようとするが、ヒデヨシの足はビクともしない。


「三二一」

「急に早くなった?!

 待ってそれ狡……」


 急にカウントのスピードが早くなったヒデヨシに、ダテはツッコミをするが、その瞬間ダテの視界にはとある表示がされる。


『人体稼動範囲限界超過:左腕』


「待って本気じゃん!」

「五……」


 ヒデヨシはゆっくりと、カウントを五に戻す。

 ダテは自身の左腕の感覚がない(・・・・・・・・)ことに驚愕すると同じに、ヒデヨシのいつもと違う雰囲気を察する。


「なんだ?!

 俺がなんかしたってのか?!

 あれか?!

 俺がさっき掲示板で自分のことかっこよくて器が大きい人! っていったのがバレたのか?!

 それともあれか?! この前のゴリさんのイベの奇襲に関してか?!

 あれはニンニンさんから頼まれたんだよ!

 新作を試してくれないか!って!

 だからはよ離して……」


『人体稼動範囲限界超過:右腕』


「あぁぁぁあぁ?!」


 ヒデヨシの声をかき消すように弁明するダテは、右腕すら動かなくなったことに悲鳴をあげる。

 『人体稼動範囲限界超過』とは、その名前の通り、人体稼動範囲を超えた動きをした部分は動かなくなる。

 これはVRゲーム特有の、自分の体の可動範囲を超えての動きを規制するためである。


 そのため、人体の可動範囲を超えると、感覚すらなくなってしまう、という機能だ。

 治し方は簡単で、人体稼動範囲に戻すと、感覚は戻ってくる。

 それでも体の感覚がないというのは嫌なものであるので、ダテは抗おうとする。


 ヒデヨシのカウントが五に戻った。

 ダテはどうやって逃れようかと頭をフル回転させ、


「ヒデ…………ヒデヨシ?!」


 そこにちょうど現れたミヤは、地面を舐めるようにしているダテと、それを思い切り踏みつけているヒデヨシを見た。

 更にはダテの両腕は背中でクロスしていて、とても人間のできる動きではない。

 勿論常識的に考えて、それを行なったと考えるのはヒデヨシに見える、が


「もしかしてそういう性癖の方?」

「どういう思考回路だったらそんな考え方になるの?!」


 ミヤは最初にヒデヨシから教えられた『ここにいる人たちは変態だから』という言葉を思い出し、声をかけてみる。

 それに対してのダテの激しいツッコミ。


 瞬間、ダテは上からかかる圧力がさらに増したのを感じた。

 ダテがもしかして、と無理やり首を動かしヒデヨシの方を見ると、


「あっ」


 察した。

 どういう経緯であっても、ヒデヨシにとってこの女の子はなんか大事な人なのね、と驚異的な頭の回転を成し遂げる。

 そしてそれと同時にダテはこれ幸いと、


「ご、ごめんなさい。

 この前のことは謝るからさ」


 芝居を打ち始めた。

 当然だが、ミヤとダテに一切の面識はない。

 だが、ダテはヒデヨシの圧力の変化からミヤがヒデヨシにとって大事な人だということは分かった。

 その予想から、ヒデヨシはこの女の子の前では”悪い人“でいたくないのでは? という予想をした。

 そのため、多少なりとも自分が悪いことをしたという嘘をついてでも、この現場が明らかにやりすぎだとこの女の子に伝えることを優先した、が。


「何言ってるんだ?

 この前のことはもう許したじゃないか。

 これはさっきお前が頼んだことじゃないか」

「なっ?!」


 裏切られた。

 そう感じたダテは、咄嗟に否定の言葉を返そうとするが、


「ま、ダテちゃんがそういう人だってわからない人からしたら驚くよね。

 ほら、立ちなよ」

「ヒデヨシ……」


 ヒデヨシの優しさの言葉に思わず自分の味方をしてくれたのかと思ってしまったダテ。

 ヒデヨシの差し伸べた手を取ろうとしたその瞬間、


「そっか、そういう人なのだ。

 よろしくね」


 ミヤの声に、ダテは気づく。

 あっ。

 脳内で感じたことはそれくらいだったが、言語化できない思考をダテはしていた。


 そうしてダテが立ち上がるまでに現状を整理して分かったことは、


・このヒデヨシの大事な人である女の子に、ダテが変態だという認識をされてしまった。

・そしてその需要と供給(?)を行なっていると思われた。

・そこでヒデヨシは嘘をついたダテの“やっていない悪事”を許したいい人だと思われた。

・優しいヒデヨシはダテの欲望を叶える優しい人(?)となった。


 そこでダテは疑問を浮かべる。

 これ、ヒデヨシも変態になっている説ないか?

 そう思ってヒデヨシの方を見ると、


「さ、ちょうどダテちゃんの力も借りたかったところなんだ」


 悪どい顔をしていた。

 もしや…………。


 リア友か?!


 現実で知り合いであればいくらでも訂正のチャンスはある。


 そうして、ヒデヨシとダテのちょっとした小競り合いは幕を閉じた。



☆☆☆☆☆



「じゃあダテちゃんに紹介するけど、この人はミヤ。

 俺のリア友でこのゲームに興味持って、ちょっくら上を目指してみたいっていう人」

「え、ちょっと待って、女の子でランカーになるの?

 ええ、待ってそれ以前にお前みたいなやつにリア友がいたなんてなぁ……」

「それ失礼すぎん?」


 ヒデヨシの紹介にダテは自身の推測と予想が当たっていたことを確認する。

 それと同時に素直な感想を述べると、ミヤは微妙な顔をしてヒデヨシの方を見た。


「どういうことですか?」

「いや何、このゲームにおいてヒデヨシって言えば、意見が真っ二つでさ。

 肯定的に見る奴は多いんだけど、一部のやつからは烈火の如く嫌われててな」

「一部の人?」

「俺のプレイスタイルは特殊すぎて、原理知らない人達からするとずるく見えちゃうんだと」


 話を聞いている限り、ヒデヨシは本当に強いのだろう、とミヤはしっかりと感じる。

 普通の人だったら羨んだりするのが普通なのに、逆にうらやまれる対象だという口ぶりである。


「後『剣聖の乱』もな」

「あれは……俺が悪い」

「ヒデヨシが悪いってどういうこと?」

「あー、それに関してはヒデヨシが許可しないとおいそれと言えないなぁ」


 ダテはチラチラとヒデヨシを見るが、ヒデヨシはギロリとダテを睨みつける。


「だから本人から聞いてねー」


 その言葉にミヤはヒデヨシの方を見ると、ヒデヨシは苦笑いをしながら首を横に振った。


「流石にあれは言いたくなさすぎる」


 その言葉にミヤは後で学校で聞こうと切り替える。


「で、本当にランカー目指すの?」

「え、はい」


 ダテはずずいとミヤに近寄り尋ねる。

 ミヤは少し体を後ろに引きながらも、確かに返事をした。


「それじゃあ、あいつらと一緒になるってのか……」

「それは俺が阻止するから」

「あいつらは黙っちゃねぇぞ」

「だからこそだよ」


 ミヤとダテの間で飛び交う話に、ミヤは着いて行けない。


「あ、ミヤさんはついて行けないか」

「確かに、まだわからないだろうな。

 何気にあいつらネット上には情報出さないし」


 そこで二人はミヤが話について行けないことに気づく。


「あいつら、っていうのはこのゲームにおいて、唯一の女性プレイヤーによって構成された同盟。

 奴らは自分たちのことを『美衆びしゅう』って呼んでいる。

 けど、他のプレイヤーたちからは『アマゾネス』って呼ばれている」


 ダテの説明を聞いたヒデヨシは身震いしながら、


「あいつらは狡猾なんだ。

 最初は別に脅威でもなかったくせに、時が経つに連れて一人一人のプレイヤーに即した対処法をしてくる」


 そうなんだよなぁ、とダテは付け足し、


「ヒデヨシは基本的に集団戦に弱い。

 そうだと分かったのなら集団戦。

 しかもヒデヨシが苦手な小手持ちを大量にこさえて、だ。

 それで今度は俺だったら純粋にリーチの長い武器で攻めてきやがる。

 おかげで『祖先』……あ、その他先行プレイヤーって分類の人たちがいて、その人達は辛酸を舐めさせられているって事情」

「ふーん、ヒデヨシ達でも苦手な人はいるんだね……」


 その後にでも、と付け足したミヤは、


「別にその人達が女の人ばかりだからって私がそこに入ることとは関係なくない?」

「あー、それは大いに関係しているんだよ……」


 ダテは話し終えると同時にヒデヨシの方を見る。

 ヒデヨシは頰を掻きながら、


「あそこ、可愛い人を引き込もうとするんだよね」

「可愛い人? なんで?」

「……そこのリーダー格のやつが……女なんだけど、女の方が好きっていうやつでね」

「何をどうしたらそうなるのかは知らないけど、あそこに入ると途端に男を敵視するやつが多いんだよ。

 この世に男は必要ない、ってな

 女だけの楽園で十分だ、ってね。

 スザク様だけで十分だー、ってね。

 それで幹部とかになってくるともう手がつけられない。

 あいつら獣じみた動きをするし、連携が気持ち悪いし、スザク様スザク様うるさいし。

 だから尊敬の念を込めて『アマゾネス』」


 ヒデヨシの変態しかいないという言葉を思い出し、身震いするミヤ。

 なんだか話が逸れたため、ミヤは話を変えようと、


「そういえば、ダテさんの弱点ってリーチが長いの、って言ってましたけど、武器は何使っているんですか?」


 ミヤのその言葉にダテはそういえば、と立ち上がり、


「俺の自己紹介をしていなかったな!

 俺の名前はダテ!

 ヒデヨシと違ってしっかりとしたランカーで、みんなからは【政宗】って呼ばれているんだ。

 得意な武器はこの短刀『独眼竜どくがんりゅう』。

 よろしくな!」

「ちなみに【政宗】ってのはダテ、とか『独眼竜』から来ていなくて、たまたま入ったトップテンに入ったイベントで、運営の人がボソッと『あ、伊達政宗と同じ身長だこの人』っていう発言からそうなったんだよ」

「ま、俺の威厳もあるがな」

「ちなみに、このゲームかなり体を動かす観点から身長体重の変更はできないわけで……」

「ま、それでも俺の威厳……」

「最初【宰相(最小)】って二つ名だったんだけど、本人がガチで気にしているって言う話から、前代未聞の二つ名改名が行われた最初の人」


 ミヤはその話に苦笑いしている。


 当然ながら、ダテは『独眼竜』を構えてヒデヨシに襲いかかった。

吉 秀について

現在高二

二年三組

名簿番号三十五番

身長178センチ

体重59キロ

『七』にある様に、割と頭のいい学校に通っている。

勉強は上位三十パーセントに入るくらい、運動は長時間じゃなければできる方。

字面だけで見ると割とスペックが高いが、六歳離れの姉のスペックがその三倍高いため、家族内の地位は低い。

割となんでも食べる方だが、味音痴のため何食わせても一緒とよく言われる。

趣味は『サライ』と言ってもいいほどにやっている。

中学の頃一時期サライにのめり込みすぎて成績不振に陥ったが、なんとか回復した。

本人曰く、あの時は一番バカだった、と言っている。


ちなみに、

・秀と美沙の付き合い始めた時期

・秀のサライ歴

・美沙と秀が出会う前(中学の頃はそんなに面識がなかった)の話

・美沙と秀の馴れ初め


に関してはかなり今後展開に関わってくるので、おいそれといえない現状であります。

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