処理をしてみよう
"ギルの宿"というのは通称で、あのデカイ主人が"ギルキル"という名前で、そう呼ばれているだけという単純な物だった。
現在、そんな通称"ギルの宿"の裏手にある、馬房と井戸が存在する裏庭的な場所に、各人が持ち寄った簡易的なテーブルと椅子がズラリと並べられ、総勢数十名がひしめき合って肉を食べ、酒を呷っているという状況になっていた。
数十名とは言ってはみたが、目で見える範囲で4・50人近くが所せましと屯っており、さらには席が足りないという事で、宿の食堂にも人があふれており、それらの数も加えればもっといそうではある・・・
その集まりの構成としては、港湾工事の人たちにその家族みたいなのに、近所の家族子供連れまで集まってはしゃいでおり、あとから合流してきた親方と、見るからにお偉いと思える方々まで来られては、こちらへと事情聴取が終わった後から酒の席を楽しみ始めている始末。
なにせ、手に入れた肉が荷台4台分。
総重量にすると目算で1tクラスかな?
これを一人で処理は・・・出来ないこともないだろうが、正直飽きると思える。
特に見た目による満足感が多大な影響を及ぼすことは容易に想定できる。
それに、生の肉の為に、加工しなけりゃ日持ちもしない。
自身の倉庫に格納する事も考えれない事もないが、そうやって仕舞ったとしても、毎日毎日、同じ肉、肉、肉、肉・・・駄目だ、無理だ、精神的に耐えられる自信がコレっぽっちも思い浮かばない。
という事で、解体手数料に調理手数料などコミコミ含めて、腐る前にふるまっちまえと思った次第である。
もちろん、宿の客も含めてと一部は宿に食材として提供するという形にもしている。
そうしたら、この裏庭を提供してもらう形になり、亭主と女将さんにも協力をしていただく話もついて、さらに一部の肉を分ける事で話がまとまると、その際に「売り上げが上がるわ!」と、商魂たくましいお返事をいただき、その後は家族総出にプラスアルファとして近所の主婦たちを集めては調理に勤しむ恰好にと、あれよあれよという間にこんな宴会じみた状況になっていた。
酒代も、酒屋が「肉と交換していただけるなら・・・」という形で、肉をだいたい40kgほど持って行ったが、その代わりに酒樽を5つほど置いていった。
それでも儲けが出るらしい。
どんだけ高級食材なんですかね、その肉。
まぁ、そんなこんなで酒盛り開催中な裏庭で、先ほどの事情聴取と武勇伝もどきの話と、それ以外の下心が顔に現れている集団を華麗にスルーしては、その作られた席の隅っこに逃げる様にしてその肉を食していた。
で、この肉、確かに旨かった。
霜降り肉とでもいうシロモノで、レアであればあるほど甘味があり、その中に少量の塩味がさらにうまさを引き立てくる。
そしてその口当たりも柔らかく、まるで溶ける様に消えていく。
正直、"美味い"という表現以外、何も出て来ない。
しかも、軽く炙る様に焼いた薄い肉でコレ。
肉厚なステーキなんて、もうそれ以上にとろける美味さ(物理)であった。
本当にマヂで美味しかったが、大体50kgぐらい食ったらぐらいから、もういらない・・・満腹で入らないとかではなく、その食感と味と脂っこさにホトホト飽きたという理由が正直な話である。
これはあれだな、大トロも食べ続けたら飽きてしまうという贅沢な問題というヤツなんだろうな。
ただ、この旨さも1stキャラだと、あの異物混入という嫌悪感と戦う必要があるのかと思うと、あまり喜べもしなかったりもするが・・・いや、今はそれは考えないでおこう。
そういえば、休みなく食ってた時に周りからは「いったいどこに消えたんだ?」「胸だろ?胸」「ああ、なるほど…」という言葉が聞こえたり、いかがわしい視線があったりもしたがそこは無視である。
しかし、これだけ大量に消費したかと思っていた酒盛りだったが、それでもまだ荷台に二台分ぐらいが残ってるときている・・・ウゲェッ・・・もういらん・・・
そんな状況にうんざりしていたら「残りそうなら、保存食用に加工しましょうか?」という女手衆の提案により、その手間賃も加工肉を分けるという事で、先ほどから空いた酒樽を利用しては塩漬け作業を始めていた。
ほんと、逞しいというのはこういう事を言うのだろうかね。
そんな宴をよそに「後は任せます」と告げては早々にその場を離れ、自身にあてがわれている宿の部屋へと戻ってきた。
寝具の上へと座り込み、確認しておきたかったエネルギー残量は、高級食材なのかそれとも摂取量が多かったためかは解らないが、満タンという状況ではないが、半分以上を指し示しており、7,8割といったところまで回復はしていた。
とりあえずの目的は達成できてるなと確認しつつ、いまだ警告表示がなされている左腕の状況と腹部の穴をどうにかしなければと。
ここまでの破損状態となると、オートリペア機能での修復はほぼ不可能。
そうなると修復機材ともいえるあいつを呼ぶ必要に迫られるんだよな・・・2ndキャラで。
一応、ソロプレイ用にと随伴させる為に、修繕・修復専用のメンテナンスやリペアに特化させたサポートユニットを製作はして育ててはある。
製作してあるのだが・・・2ndキャラ以外では、プロというか職人的な機械的作業で工程を消化する様は、「まさにパーフェクト!」と、いいたくもなる程に拘りをもって製作したために完成されおり、個人的にも使い勝手がとても良い相棒ともいえるぐらいなのだが、何故か2ndキャラの時に呼び出すとちょっとした・・・いや、かなりおかしな挙動をし始めてくる為に、2ndキャラでプレイする時はメンテナンスを行おうと思えばサポートユニットを呼び出さず、ホームに戻ってからそこに設置されているメンテナンスキットで補修を受けたりしていた。
だが、今だとそのホームにすら戻る事すらかなわない。
しかし、現状の破損状況でボロを纏っているというのも気が済まない。
いやまてよ?戦闘でボロボロになって勝利!という王道パターンは消化したのだから、次の話の時には修繕が終わってなければおかしいだろうが、ボコボコの状態で、ある程度の機能が確保されていない状況というのもあるか?
こう肩から布をかぶせて破損部を隠している状況というのも、ある意味アリだよな。
好都合的に破損部は左側に集中してあるわけだし、って、まてまてまて、それはやはり2ndキャラ以外でないと格好つかないのではなかろうか?下手に生物に寄せて作ってあるキャラでは、破損部を隠しているというのはナシだ。そう、ナシだな。
しかし、修理を行うとしても、今はホームに戻る事などできない。
そうなると、やはり2ndキャラのままであのサポートユニットを呼ぶんだよなぁ・・・
気が滅入るというか、絶対アレな状態になるんだろうなぁ・・・
背に腹は代えられない、とはいえ、ちょっとなぁ・・・
けど、呼ぶしかないよなぁ・・・
諦めの境地の心境で、しぶしぶとメニューから"call"を選択し、表示される幾つものサポートユニット名の中から"See"を選択する。
その項目が選択されると、座っている目の前に光る円陣ともいえるリング形状の代物が現れ、その円陣がリングが下から上へとスライドしていく。
そのスライドがなされた後に現れたのは、背丈150から160cmぐらいの女の子的な体躯をしており、その頭部にはバイザー形状になっている被り物、その身体は白衣姿に近いコートの様な衣装をまとい、その衣装にはリペア系統といえば、ナース的な医療従事的な何かを組み込まなければと
赤い十字のマークを所々に付けた姿の人型のユニットが現れていた。
この登場の仕方もゲームの時と同じなのね、と少し感心していたのだが、ただ・・・ただね・・・これから対面をするのかと思うと、ちょーっとねぇ・・・その姿を確認して、さらに気が滅入り始める。
「お呼びになられましたか?アーネスト様」
「あ、ああ」
右腕を胸元に構え、まるで執事風な綺麗な一礼のままでのご挨拶おいうだったのだが、こちらの心境など一切考慮しないまでの挨拶に対し、それはもう感情すらないままに返答を返すと、その礼の姿勢から一変、ガバッという風な感じで勢いよく顔を上げたかと思えば、バイザーで隠れているはずの目が、まるでクワッ!とでもいう目を見開く擬音が聞こえてきそうな感じでこちらを確認し、確認したかと思えば肩をワナワナと震わせ・・・あ、嫌な予感がする。
「や、やっぱり!そのお声はアーネストお姐様だァァァァァ!!
シー!お会いしとうございましたぁぁぁ!!」
と、叫びながら勢いよく抱き着いてきた。
かと思えば、自分の胸元にある二つの山の間に顔をうずめては、身体全体をくねらせて頬ずりしつつ、なおかつその両の手はしっかりと此方の後ろに回しては、尻をこねくり回す様に触っている人型の物体が、
「スーハースーハー・・・あぁ・・・お姐様のカ・オ・リ・・・ハゥ・・・」
と、どこかトリップしたかの様なモノとして存在していた。
・・・2ndキャラの時だけ、どうして性格がコウナルノ?




