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維新〜総員決起せよ〜  作者: 棚瀬 賢
乙章
12/18

第11話 不測事態

2023年 2月2日 07:30


朝になっても都内の送電は回復しないばかりか、さらに追い討ちをかける非常事態が発生していた。

午前2時頃から都内では雪が降り始め、今朝になっても勢いが止まず雪に慣れない人々は玄関を開けた瞬間から「戦場」が待っていた。その量は雪国や雪が積もることが当たり前の住民にとっては「積もってない」レベルであったが、慣れない都民にとっては十分すぎた。

都内の一部停電により信号がつかない地点もあり、警察による交通整理が行われるとは言っても、普段通りの交通ができるわけはなかった。おまけに、ただでさえ送電が一部で止まったことにより打撃を受けた都内の交通網は、さらに雪によってほぼ壊滅的状態。地上を走る全ての物は不馴れな雪という障害に邪魔されていた。

ちなみに、都内の主要各鉄道は自前の送電設備があるため走行に問題はなかったが、停電によって駅設備に一部問題が発生している私鉄があったり、そもそも雪が邪魔していた。

唯一頼みの綱の地下鉄も、同じように停電が邪魔になっていたり、雪の副次的被害として普段地上にいるべき人間までなだれ込んで来るという状況のため混乱していた。まして乗り切れない人間がホームに溢れその後ろからも地上を捨てた人々が追加され、列車が入線すれば乗降客が入り乱れるという結果、地下鉄もまた遅延し交通網は麻痺していた。


人々は会社や学校に遅れることを気にし、停電を憎み雪を恨んだ。いくら送電が「今日の午後にはある程度回復する見込み」と言われても今回復してくれない限り意味はないし、そもそもこの年度末の忙しい時期にこんな大雪を歓迎できるはずもない。

「温暖化なんて本当にしているのか?」とも言いたげな目をして睨むしか彼らには出来なかった。



08:13 総理官邸総理執務室


総理大臣になって最も嬉しかったことは日本の頂点に立ったことでも、政敵を除いた誰もが自分に媚を売ることでも、政治家を志した時の夢が叶ったことでもなく、家から仕事場まで歩けばすぐに着くことであった。私邸に帰らず公邸に暮らしていればだが。そして、地下にある発電装置によって安定的電気が保証されることだ。それでも、テロは御免だ。

谷垣武雄は今朝も自分のみが座ることを許されている椅子に腰を下ろしていた。メモ魔の秘書官が今日の予定を読み上げる声に耳を傾けつつ、面倒な案件を思い出していた。


尖閣沖中国艦砲撃事件からしばらくして行われた党総裁戦において立候補を辞退した当時の総理に成り代わり就任した彼であるが、就任から3年近くもすると閣僚人事を改めて考えたくなる。だからこそ、月末までに素案をまとめて、4月の頭に改造内閣を立ち上げたかった。

本来なら閣僚にはその分野に精通した人間を置くべきなのは理解している。しかし、各派閥との関係や女性議員の入閣調整、そして連立与党の公明党を考えるとそうも言ってられない。例え無能でも時には入閣させなくてはならない。女性が少なければ「女性の活躍機会が失われている」と叩かれ、派閥を無視すれば母体の自民党執行部から圧力がかかり、公明党議員が少なければ「連立解消」を迫られる。そして満遍なく配置したのに不祥事を起こされれば今度は国会で「任命責任」を追求される。何をしても叩かれる運命なのか、という考えも浮かぶ。頭が重かった...。

重い、といえば瞼だ。深夜に発生した「共同溝同時多発爆破事件」によって深夜にNSCを招集する羽目になったおかげで、とっても眠かった。

昨日はすでに寝ていた。が、第一報を聞いた時、とりあえず「情報収集」だけは指示した。が、起きるつもりはなかった。明日から組閣についてある程度協議して行きたかったし、委員会や地元での有識者相手の演説と予定がてんこ盛りであったからだ。

が、今度は警察庁長官から「電気会社からの連絡で単なる共同溝内の事故ではなく、爆発物によるテロの可能性が高い」という連絡が来たのが午前0時20分。

ここでも、起きる気はなかった。とりあえず「警察手動で操作」を言っておいた。が、警察庁長官は納得せず、「完全に国民的危機であり、ここで無視すれば支持率に影響する!」との発言を受話器越しに聞けばNSCを招集するしかなかった。せっかく1年超えたのに、また前みたいに年おきの辞任総理になりたくはなかった。

それで、招集してから法務大臣より電話が来たのが5分後。招集することを伝えると、「公安調査庁にハッパをかけるか?」との返答。

あまりことを大きくしたくはなかったが、それでも相手が自分よりも重鎮議員である法務大臣だから止む無く「お任せします」とだけ言って切った。

そして、NSCを始めれば今度は何をするべきか思いつかない。情報だけが集まる中、とりあえず「情報収集に専念し、いかなる事態にも対応できる態勢を」と如何にもな一言を言って会議を閉めたかったが、それでも1時間は開けとかないと不味いと思ったので、念のため情報収集として1時間。のはずが、色々と情報が入り使われた爆弾がそんじゃそこらの過激派セクト関係が使うものじゃないとわかると、警察庁長官が「海外テログループの可能性もあるから、都内の警官全員を警戒に当たらせるか」とまで言い始めた。

しかし、そんな事をすればまた民進党や共産党、社民党の連立野党軍団から叩かれるだろうし、それだけは勘弁願いたかった。だから「あまり警官ことを騒ぐと国民生活に影響しかねない」とまた如何にもな一言を言って納めて解散した。それが3時半過ぎ。

もはや眠かった。


「総理....お体が優れませんか?」と秘書官が声をかけてきた。慌てて背筋を伸ばす。

「いや、ちょっと考え事をしていただけだよ。続けてくれ」と極めて平静を装って答える。

「深夜の会議はやはり堪えましたか?」と秘書官。

「まぁね、しかし今日はまた忙しいからしっかりとやっていかないと」

谷垣は諦めたようにつぶやいた。


そのとき、激しく執務室のドアがノックされた。

許可を出す前にドアを開けて飛び込んできた総理補佐官に只ならぬ気配を感じつつも、冷静に谷垣は応対した。

「なんですか?補佐官?」

「総理!これを!」と差し出した来た1枚の紙。受け取りつつも、胡散臭そうな表情をしてから目を向けて読み始めると谷垣の表情は変化していった。

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