神々の庭園へ (1)(Side:ジェスミン)
ジェスミンは少しためらってから、このところずっと胸の奥を巡っていた言葉を口にした。
「私たちを助けてくださって、本当にありがとうございます。もし私に恩返しができることがあるなら、どうか遠慮なくおっしゃってください。」
昨年、巡礼の旅の終わりに、ジェスミンとセリーナ、そして隊列に身を潜めていた三人の女性は、ようやく《果てなき部族》へと辿り着いた。
エイデンでさえ、彼女たちをジェスミンが雇った侍女や看護係だと思っていた。だが実際には、ジェスミンがようやくセリーナを見つけ出したとき、同じ場所から共に救い出した女性たちだった。
《果てなき部族》は彼女たちを保護すると申し出ると、ジェスミンが差し出そうとした金銭や宝石による謝礼を、すべて断った。
それはジェスミンを、ほとんど恐慌に陥らせた。
もし金銭も、宝石も、商業上の利益も、あるいは後から返せる恩義さえ代価にならないのなら――自分は何を差し出せばいいのだろう。
《果てなき部族》の三人の最高女祭司――キャロライン、ジュリア、そしてアンナは、部族の掟として、助けを必要とする女性を守るのは当然の務めなのだと告げた。
もちろん、いつの日か代価を求めることはあるかもしれない。
だが、それすらも豊穣の女神の御意思であり、すべては女神の導きによって行われるのだという。
……ならば、助けを必要とする女性を保護することが部族の務めなら、「婚儀」を執り行うこともまた、その務めなのだろうか。
「心配しなくて大丈夫よ。女神には女神のお考えがあるわ。」
ジュリアは慈愛に満ちた笑みでジェスミンを慰めた。
「使徒様はすでに女神様から神託を賜り、三日前にはこちらへ到着されています。婚儀の準備も、すべて整えてくださっていますよ。」
アンナが明るく微笑む。
―使徒。
ジェスミンがずっと胸の内で警戒してきた存在だった。
昨年までは、その呼び名すら聞いたことがなかった。
一度パール王国へ戻った際にも、文献を隅々まで調べたが、その存在を記した記録はどこにも見つからなかった。
その後リタール王国へ渡って初めて、豊穣の女神の神官たちから、その名を聞かされたのだ。
『闇が世に満ち、聖女が倒れし時、女神は使徒を選び、自らの意思を代行させる』
そんな存在までもが自分を助けようとしている。
ならば、自分は最後に何を代償として差し出すことになるのだろう。
セリーナのためなら、ジェスミンはどれほど大きな代価でも惜しまない。
けれど、その代償が家族やセリーナ、そしてエイデン――自分にとって大切な人たちに及ぶのだとしたら、それだけは耐えられなかった。
「さあ、セリーナのところへ案内するね!」
アンナはジェスミンの手を引いて歩き出した。
前回ここを訪れたときも、案内役を務めてくれたのは、この明るく元気なアンナだった。
ジュリアは二人を見送りながら、穏やかに微笑む。
「セリーナとゆっくり遊んでいらっしゃい。昼食の準備ができたら、迎えに行くわ。」
二人の後ろでは、キャロラインがいつの間にか現れた椅子へ腰掛け、暖かな陽射しを気持ちよさそうに浴びていた。
「セリーナは今、お庭にいるの。最近はあそこがお気に入りなのよ。」
アンナはそう言うと、村の道を歩きながら、あちこちの景色を紹介してくれた。




