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死者を繋ぐ糸、生者を繋ぐ糸

三歳ほどの幼い女の子は、うつ伏せのまま床に倒れていた。

彼女が地面へ落ちた勢いで、植物の根も、茎も、そこから伸びていた葉も、すべて一緒に引きずり出され、床の上へ散らばった。


周囲にいた者たちには、はっきりと見えた。


その植物は―幼い女の子の脊椎から生えていた。


「まだ生きてる!」


誰かが悲鳴を上げた。

その一言が、何かの封印を打ち破ったかのように、全員の視線が一斉に幼い女の子へと集中した。


使節は激しく振り返り、声を上げた者を睨みつけた。

あの女があんな大声で叫ばなければ、まだ誤魔化せたかもしれない。

これは余興なのだと。

あまりにも精巧に作られた、魔法人形なのだと。


だが、もう遅かった。


女の子の唇が、かすかに動いた。


「……ママ」


その小さな声は、静まり返った大広間の中で、異様なほど鮮明に響いた。


女の子の呼吸は次第に浅く、速くなっていった。

胸の上下も、ほとんど見えないほど弱々しい。


そして数秒後。

女の子は、息をしなくなった。


大広間から、すべての音が消えた。


華唐国の使節団ですら、誰一人として動こうとしなかった。


「そんな……あり得ない……」


使節の唇が震え始めた。


あり得ない。

この《羊の花》に使われたのは、健康で血統にも問題のない三歳児だった。


先天性の疾患もない。

魔力にも欠陥はない。

種子を植えつける前の検査でも、何一つ異常は見つからなかった。


研究院は確かに保証していたのだ。

栄養さえ正常に供給されれば、少なくともあと八十年、九十年は維持できると。


それなのに、なぜ今日に限って死ぬ?

まさか、従者の中に他派閥の送り込んだ者がいるのか?


この使節は、ソロモン王太子の派閥に属していた。

もしエリカ王妃を説得し、ティム王太子と華唐国の皇女との婚姻を成立させられるのなら、彼はソロモン王太子の実妹を候補として推すつもりだった。


使節が従者たちの反応を確かめようと振り返った時、それよりもはるかに差し迫った問題に気づいた。

すべての出口が、すでにリタール兵によって封鎖されている。


先ほどまで玉座のそばに座っていたティム王太子は、いつの間にか大広間の出口付近に立っていた。

その背後には白衣をまとった医師たちと、さらに多くの護衛が控えている。


奇妙なことに、ティムは床に倒れた女の子の遺体を一度見ただけで、すぐに視線を上げた。

何もないはずの天井を見つめている。

まるで、他の誰にも見えない何か――遠ざかっていくもの、あるいはどこかへ広がっていくものを追っているかのようだった。


玉座の前で、エリカがゆっくりと立ち上がる。

その顔には、相変わらず非の打ちどころのない柔らかな微笑が浮かんでいた。

だが彼女をよく知る者なら、それが事態が最悪の段階に達した時に見せる表情だと知っている。


「大広間を封鎖しなさい」



駄目だ!

逃げなければ!


華唐国の使節は一気に取り乱した。


自分が握っている機密――《羊の花》の存在をはじめとする情報が、リタール王国の手に渡ればどうなる?


たとえ華唐国へ帰還できたとしても、無事では済まない。

情報漏洩の責任を問われ、反逆罪に問われる可能性すらある。


使節は懐から、密かに隠し持っていた貴重な魔法具を取り出した。

一刻も早く華唐国へ転移するためのものだった。


起動装置を押す。

光が彼の全身を包み込み、転移術式が作動し始める。

周囲のリタール人たちが向ける怒りに満ちた視線を見て、使節は思わず勝ち誇った笑みを浮かべた。


だが―


突然、転移が止まった。

魔法陣の光が急速に弱まり、転移しかけていた身体は、再び床の上へと落ちる。


次の瞬間、使節の視界いっぱいに金色の光が広がった。

あまりにも眩しく、目の奥が痛むほどだった。


あり得ない。

使節は目を見開いた。


転移魔法は、一度発動すれば外部から強制的に中断することなどできない。

そんなことができる人間など、この世界には存在しない。


意識を失う直前、どこからか怒りに満ちた声が聞こえた。


「ねえ。さっき、どこに三人も、私の婚約者と結婚したがってるお姫様がいるって言ったの?」



リタール王国が騒然となっていたのと同じ頃。


世界各地でも、異変が起こり始めていた。


中でも後世まで広く知られることになったのが、ディマン王国の富裕地区で起きた騒動だった。


華唐国出身の豪商マオシは、長年この地に暮らし、その日も自邸で極めて身分の高い客人たちをもてなしていた。

マオシとディマン王家の関係は深い。

長女はソロモン王太子の第二側妃であり、その息子は現在、次代の王位継承者として最も有力視されている者の一人だった。

長い年月をかけて、マオシの金は王宮にも、軍にも、道路にも、学校にも入り込んでいた。


人々の間では、こんな噂すら囁かれていた。

―華唐国大使よりも、マオシの方が華唐国を代表している、と。


その時、ソロモン王太子は各国から訪れた客人たちを連れ、マオシ邸の庭園を案内していた。


庭には、さまざまな品種と色彩を持つ巨大な花が、数十株も植えられていた。

その間を人々が歩く姿は、まるで巨大な花園を小さな妖精たちが行き交っているかのようで、童話めいた幻想的な光景だった。


だが突然。

花が、一輪ずつ枯れ始めた。

庭園全体が、わずかな時間のうちに目に見えない秋へ呑み込まれていくかのようだった。

何年、何十年と咲き続けてきた巨大な花々が、一斉に萎れ、乾いていく。


そして。

最初の人体が、裂けた茎の中から地面へ落ちた。


続いて、二人目。


三人目。



その日の夜。

マオシ邸は王家直属の衛兵によって完全に封鎖された。

ディマン王国で数十年にわたり商売を続け、あらゆる分野に巨大な影響力を持っていた豪商は、こうして囚われの身となった。


それまで彼を強く支援していた華唐国王家は、即座に一切の関与を否定した。

そして、すべてを隠蔽していた罪人として、マオシを激しく非難した。



同じ現象は、世界各地で続いている。


ディマン王国の貴族邸宅で。


アーカハン大陸の豪華な庭園で。


真珠王国の私設植物園で。


翡翠魔法学院の中庭で。


すでに廃墟となった黒塔の薬草園で。


研究院の施錠された地下室で。


そして、まだ荷下ろしもされず、港に置かれた巨大な貨物箱の中でさえ。


《羊の花》は次々と枯れていった。

その内部に閉じ込められていた人間たちは、ようやく死を迎え、再び人々の目の前へと姿を現した。



一方で、まだ《羊の花》の種子を植えつけられたばかりで、植物が脊椎まで侵入していなかった少女たちの中には、生き残った者もいた。


彼女たちは激しい痛みに耐えながら、閉じ込められていた場所から逃げ出した。


その後の人生は、決して同じではなかった。

家へ戻り、家族に匿われ、そのまま人知れず穏やかな生活を取り戻した者もいる。

家に戻ることを恐れ、見知らぬ街へ一人で歩き出し、自分でも行き先の分からない新しい人生を始めた者もいる。


そして中には、最後まで元の運命から逃れられなかった者もいた。

再び売られ。

再び囚われ。

そして、命を落とした。


だが、いずれにせよ。


《羊の花》の真実は、もはや隠し通すことができなくなった。


その日まで、《羊の花》の由来については、長年囁かれてきたものの証明できない噂にすぎなかった。


その日からは、もう誰も否定できなくなった。


《羊の花》とは―

生きた若い女性の身体へ種子を植えつけ、植物に肉体から養分を吸わせながら成長させ、最後には宿主そのものを完全に呑み込ませて作り上げるものだった。


そして、さらに恐ろしい事実があった。

彼女たちは、それでも死んでいなかった。


舌を失っても。

身体のすべてを茎と花に覆い尽くされても。

彼女たちは、また泣き続けていた。


花が枯れ、死ぬその日まで。

彼女たちは、死ぬことさえできなかった。



遥かな高空。

女神の掌の上で。

自分が世界各地にどれほど大きな嵐を巻き起こしているのか、セリーナは何一つ知らなかった。


彼女はただ手を伸ばし、次の桃色の糸を握った。

その向こう側では、まだ誰かが泣いている。


「怖がらないで」


セリーナは優しく囁いた。


「もうすぐ、痛くなくなるから」


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