届かなかった答え
「ヨウタから、一通り事情は聞きました。本当にありがとうございました。……ようやく、レインの遺体を取り戻すことができました。」
包帯で巻かれた切断された腕を押さえながら、ソルはギルドの面々へ跪こうとした。
だが、それより早くエイデンが慌てて彼を支え、卓のそばへ座らせる。
ヨウタは何も言わなかった。
ただ少し離れた席に静かに腰掛け、皆の反応を観察しているようだった。
「まだ怪我人なんだから、あまり無理に動くものじゃないよ。」
橘さんはソルにそう声をかけた。
「それと……最初、お二人だと気づかず、申し訳ありませんでした。」
ソルはロイと橘さんへ視線を向ける。
「昔、レインにお世話になりました。本当にありがとうございました。」
「……本当に、久しぶりだね。」
そう答えながらも、実のところロイも橘さんも、ソルのことをまったく思い出せてはいなかった。
だが、長年冒険者として生きてきた経験が、たとえ相手に気づいていなくても、それを顔に出してはいけないことを教えていた。
「あれ以来、ご連絡もできず申し訳ありません。レインが亡くなってからは、叔父もずっと塞ぎ込んでしまって……私の家も色々ありまして。」
橘さんは少しだけためらい、それからずっと気になっていたことを口にした。
「……レインの遺体は、これからどうするつもりなの?」
「できることなら、両親のもとへ返してやりたいです。でも、レインが亡くなってから、両親は私や叔父との縁を完全に断ってしまって……今どこにいるのかも分かりません。」
ソルは悲しげに息を吐いた。
錆鉄の冒険者ギルドの四人は、ますます後ろめたさを覚えた。
実際には、四人ともソルの両親の居場所を知っているのだから。
もっとも、長年の冒険者生活――ノーマンに至っては長年の諜報活動まで含めた経験のおかげで、彼らは名優顔負けの演技力を身につけていた。
四人はほとんど同時に痛ましげな表情を浮かべる。
まるで前もって打ち合わせでもしていたかのように。
「それに、レインの遺体はあんな忌まわしい禁術で弄ばれてしまいました。王家の研究所が回収していくのでしょう。……そんなくらいなら、私はここに数日残って、自然に灰になるまで見届けたいと思っています。」
「他の兵士みたいに、小指だけでも切り取って持ち帰ろうとは思わなかったんですか?」
エイデンは純粋な興味から尋ねた。
「それは……私には無理でした。」
ソルはどこか気まずそうに、自分の指へ視線を落とし、皆の目を避けた。
「……ずっと前に、渡してしまいましたから。」
レインの遺体に小指がないことへ最初に気づいていたロイを除き、その場の全員が驚き、卓には短い沈黙が落ちた。
彼らの知る限り、レインの両親は息子の遺品を何一つ受け取っていない。
墓へ納められたのは、家を出る前に着ていた服だけだった。
英雄譚にも、ギルドでの思い出話にも、レインに想い人がいたという話は一度も出てこなかった。
「レインから好きな人の話なんて、一度も聞いたことがなかったね……。」
「きっと、ギルドを離れた後に出会った人なんだろうね。」
橘さんは微笑みながらそう推測し、ロイを見る。
ロイも静かに首を横へ振った。
「……あれは、どちらかというと復讐だったんです。」
ソルは苦く笑う。
「もちろん、そこに愛情がなかったとは思いません。でも、新しい人生を歩もうとしている時に、小指の骨で作られた指輪を贈られて喜ぶ人なんて、いませんよ。」
「……あれは私への復讐でもありました。」
「レインは、叔父と一緒になって、自分の人生へ踏み込んだ私を恨んでいたんです。」
そう口にしたところで、ソルははっと我に返った。
自分が話しすぎたことに気づいたのだ。
「……やめましょう。この話は。」
「そういえば、この前ようやく王都に家を買ったんですが……子供の頃と比べたら、値段が何倍にもなっていて驚きましたよ。」
そう言って、彼は無理やり話題を変えた。
王都で購入した新居のこと。
復興事業のこと。
子どもを将来留学させるべきかどうか―。
どれも取り立てて面白くもない世間話だった。
それでも、レインの話をした時だけ、一瞬だけ覗いたあの陰のある表情は、ロイと橘さんの胸に深く残った。
皆に別れを告げ、馬車へ乗り込み、この地を後にしたあとも。
あの暗い感情を滲ませた言葉だけが、二人の心の中でいつまでも消えなかった。
人生の最後の瞬間。
レインは、どんな想いで、あの封印の剣となったのだろう。
誰にも分からない。
そして、その答えを知る者は、もう二度と現れないのかもしれなかった。
錆鉄ギルドの一行は、驚くほどの速さでその場を離れた。
兵士たちが、彼らが来た時と変わらないほど少ない荷物を馬車へ積み込む様子を直接見ていなければ、混乱に乗じて何か持ち去ってはならないものを運び出したのではないかと、疑われていたかもしれない。
生き残った兵士の中には、エイデンと親しくなった若者も何人かいた。
彼らは友人との別れを惜しんだ。
兵士たちは大勢の仲間の死を悼みながら、酸に溶かされ、あるいは炎で焼かれ、ほとんど原形を失った遺体を収容していった。
酸に侵食された身体の多くは、もはや誰のものか判別できない。
残された衣服の切れ端。
わずかに残った皮膚の特徴。
運よく見つかった護符や、家族の写真。
そうした小さな手掛かりを頼りに、一人ずつ死者の身元を確かめていくしかなかった。
遺体の確認を担当した者たちは、初めのうちは恐怖と吐き気に耐えきれず、何度も嘔吐していた。
しかし、あまりにも死体が多すぎた。
やがて彼らは麻痺し、手際よく作業を進めるようになった。
人間は、これほど早く死に慣れることができる。
その事実だけで、ひどく悲しかった。
遺体の身元が確認されると、小指が切り落とされ、粗末な麻袋へ入れられた。
後日、死者の家族や伴侶へ返すためだ。
中には、どこに指があるのかすら分からないほど損壊した遺体もあった。
その場合、兵士たちは仕方なく、小指と同じくらいの大きさの肉片を切り取り、袋へ収めた。
収容作業が長引くほど、兵士たちのジェイド王子に対する憎しみは深まっていった。
もし、彼が作戦を破り、勝手に森へ入らなければ。
もし、最悪のタイミングで魔物の王を目覚めさせなければ。
もし、日輪勇者と錆鉄ギルドが、当初の計画どおりに戦えていたなら――。
もっと多くの仲間が、生きて帰れたのではないか。




