第95話 <素顔>
卵のような金属製の物体。
「すごーい! 何これ」
ミリアは声を上げる。
さらに物体の側面。
窪みがある。
ミリアは手を入れた。
引っ張る。
ガチャ。
扉だった。
「開いた!」
目を輝かせる。
中へ乗り込む。
狭い空間。
椅子がある。
前から棒が生えている。
その前方には透明な板。
「乗り物?」
ミリアはあちこち触る。
引っ張る。
回す。
叩く。
何も起こらない。
「壊れているのかしら」
「遺物にしたら綺麗なんだけどな…」
ブツブツとつぶやく。
そして。
リュックを開いた。
工具取り出す。
フロムがまた嫌な顔をした。
「何をしてるの!」
「調査よ」
即答だった。
ミリアは椅子の下へ潜り込む。
ネジを外す。
金属板を外す。
内部が見えた。
小さな金属製の棒が並んでいる。
銀色の端子。
見たこともない部品。
「何かしらこれ」
一本抜く。
もう一本抜く。
抜いたりはめたり。
結局、外してポケットへ入れた。
「後で調べようっと」
その時だった。
ガラガラガラ……
馬車の音。
フロムが反応する。
「ミリア!」
声を潜めて叫ぶ。
「戻って!」
ミリアは飛び出した。
二人は巨大な卵型遺物の陰へ隠れる。
そこからそっと覗く。
街道から一台の馬車が近づいていた。
止まる。
扉が開く。
中から五人の影。
降りてくる。
黒い軍服。
黒い武装。
ミリアの顔色が変わった。
「黒い兵士……」
リード。
スタン。
ミズカネ。
カドメイア。
そしてケイ。
ケイは少し足を引きずりながら歩いている。
リードが周囲を確認する。
「一旦、基地へ戻るぞ」
「くそうっ、馬車があんなことにならなきゃ」
「やり直しだ!」
「EXの位置を確認したら、再度鹵獲作戦を実行する」
ミリアとフロムは顔を見合わせる。
鹵獲…。
つまりリン達を追っている。
黒い兵士は遺跡の中心へ向かう。
崩れた建物。
その地下。
そこに階段があった。
さらに奥。
金属製の扉。
遺跡には不釣り合いなほど新しい。
リードが前へ出る。
ボタンを押す。
暗証番号。
カチッ。
扉が開く。
ミリアは即座に眼鏡を下ろした。
「照準セット」
数字を追う。
記憶する。
そして小さく笑った。
「フフン」
「覚えたわ」
五人は中へ消えていく。
だがリードが再び扉から顔を出した。
辺りを確認しているようだ。
基地に入ったせいか、ヘルメットや仮面を外している。
素顔。
顔を引っ込めると扉が閉まった。
ミリアが動かない。
口から声が洩れる。
「先生…」
その横顔。
雰囲気。
似ている。
フロムが聞く。
「ミリア」
「どうしたの?」
ミリアが扉を見つめたまま言う。
「あの人…」
「黒い兵士…」
「先生に似ている…」
「でも何か違う気もする」
「ねえ」
「行きましょう…」
「中に先生がいるかもしれない」
だがフロムは即座に首を振った。
「駄目よ」
「危険すぎるわ」
「行くならリン達と合流してからね」
ミリアは何も答えない。
だが反論はしなかった。
分かっている。
今は二人しかいない。
地下に何がいるかも分からない。
「分かった」
遺跡を後にする。
大都まであと少し。




