第94話 <振動音>
ep.43のイメージの場面です。ミリアとフロムが疾走します。
リンが大都に向かって最後の行程を進んでいるころ。
大都からやや南にある岩山。
そこにはフロムとミリアがいた。
抜けるような青空が広がる。
地平線まで続く平原と空。
「さあ行くわよ」
一人と一頭は岩山を降りる。
大都へ向かって走り出す。
フロムは平原を疾走する。
その背にはミリア。
爽やかな風が頬を撫でる。
昨日の魔犬との戦いが嘘のよう。
「気持ちいい!」
ミリアが両手を広げる。
フロムは苦笑した。
「落ちるわよ」
「落ちないもん」
青空。
草原。
遠くに流れる雲。
どこまでも続く大陸の景色だった。
フロムは駆けて行く。
風を切って走る。
やがて日が傾き。
一晩の野営。
翌日も平原の中をひた走る。
「今日中には大都につけそうね」
フロムがいう。
走り続ける。
どこまでも。
やがてミリアが前方を指差した。
「あれ!」
平原の向こう。
崩れかけた建物群。
石造りの柱。
倒れた壁。
遺跡だった。
ミリアの目が輝く。
「ねえ」
「ちょっとだけ寄っていい?」
フロムは前を向いたまま答える。
「合流が先よ」
ミリアは諦めない。
「ねえ少しだけ!」
「少しだけだから!」
「お願い!」
沈黙。
フロムは心の中で思う。
(場所も連絡しているし少しなら大丈夫かなぁ)
やがて。
フロムはため息を吐いた。
「本当に少しだけよ」
「やった!」
遺跡は古かった。
壁は崩れ。
多くの建物は半分以上埋もれている。
風が吹くたびに砂が舞った。
ミリアは辺りを見回す。
「何にもないわね」
「そうね」
フロムも周囲を警戒する。
生き物の気配はない。
魔物もいない。
静かだった。
だが。
その時。
フロムの耳が動いた。
「静かに」
ミリアが振り返る。
「どうしたの?」
「少し黙って」
風の音。
それだけではなかった。
微かな音。
ブゥゥゥゥン……
低く響く振動音。
まるで機械が動いているような音だった。
ミリアも聞こえた。
「何これ?」
「下から聞こえる」
音を辿る。
崩れた建物の間を進む。
遺跡の奥へ。
「この辺りのようね」
探しているうちにやがて反対側へ抜けてしまった。
そこでミリアとフロムは立ち止まる。
何かがあった。
巨大な布が被せられている。
高さ三メートル近い。
異様な存在感。
風で布が揺れる。
ミリアは近づく。
「何かしら?」
布を掴む。
そしてめくる。
中には巨大な金属製の物体があった。
卵のような形。
下には太い脚。
上へ伸びる柱。
その先には三本の横棒。
そして正面。
透明な板がはめ込まれている。
「何これ…」
「変なもの!」
「遺物?」
「でもすごく綺麗」
ミリアは目を輝かせる。
完全に興味を持った。
だが。
フロムは嫌な予感しかしなかった。




