第89話 <上空支援1>
再度、時間を少し遡る。
魔物の襲撃、黒い兵士の乱入。
辺りが混乱を極めていた時、クロウは空にいた。
地上ではヨウドが魔鳥―飛行型感染性生物兵器の攻撃により損傷を受ける。
さらにハンスと黒い兵士―ケイが魔熊の攻撃を受けていた。
「ふむ」
「飛行型感染性生物兵器は脅威度が高い」
「早期に対処する必要がある」
「また黒い兵士五体への対策も必要」
「一体でEXの0.5-0.8相当の戦闘力を発揮」
「現段階での対抗手段は限られている」
クロウは冷静に分析をする。
その時。
「ハンス!!」
リンの叫びが夜の森に響いた。
さらにフロムの声。
「もし会えなかったらエース商会で合流しましょう!」
そしてミズカネの放った榴弾が着弾する。
その光景をクロウは上空から見ていた。
黒い翼を広げる。
冷静な瞳。
「任務続行」
短く呟く。
戦場を見下ろす。
リンおよび機械兵。
確認。
馬車にて逃走。
フロムおよびミリア。
確認。
逃走開始。
ハンス。
谷へ落下。
敵勢力。
活動継続中。
クロウの瞳が青く光る。
「支援活動開始」
崖の向こうへ飛ぶ。
そこには二頭立ての馬車があった。
黒い兵士らの輸送車両だ。
周囲は無人だ。
クロウは馬車を観察する。
「作戦目標」
「移動能力の喪失」
音もなく降下した。
一頭の馬の背に降り立つ。
馬は気付かない。
クロウは首を掲げると。
思い切り馬の尻をつついた。
ヒヒィィィィン!!
馬が跳ね上がった。
暴れる。
後ろ足を蹴り上げる。
走り出そうとする。
ロープが張る。
ブチッ!!
固定していた綱が切れた。
馬は全力で駆け出す。
隣の馬も驚く。
逆方向へ逃げ出した。
結果。
馬車が横転する。
荷台が持ち上がる。
車輪が折れる。
馬は地面に転がった。
クロウは空中へ舞い上がる。
「目標達成」
数分後。
リード達がやってきた。
スタンが怒鳴っている。
「何やってんだこの馬鹿共!」
「滅茶苦茶に撃ちやがって」
「EXに逃げられたじゃないか!」
リードも顔をしかめる。
「急げ!」
「馬車で追うぞ」
「まだ追いつける!」
馬車の所へ辿り着く。
そして全員が止まった。
横転した馬車。
砕けた車輪。
逃げた馬。
沈黙。
スタンが呟いた。
「なんだこれは…」
リードの額に青筋が浮かぶ。
「馬を探せ」
「近くの集落から奪ってでも追う」
「また怒られるね」
ミズカネが楽しそうに笑う。
「ヒヒヒ」
カドメイアも笑った。
リードは頭を押さえた。
追撃どころではない。
このままでは帰還すら難しい。
クロウは上空からその様子を眺めていた。
そして静かに旋回する。
「敵移動能力」
「大幅低下」
羽ばたく。
夜空の中へ消えていった。
遠く。
森の出口。
フロムが走っている。
背中にはミリア。
クロウの瞳が光る。
「地上移動型を確認」
「生存」
「問題なし」
フロムの耳がぴくりと動いた。
青い光。
短距離通信。
『黒い兵士によるリンへの追撃能力は喪失』
『リンは大都へ向かっている』
『引き続き支援を継続する』
フロムは小さく笑った。
「了解したわ」
クロウはさらに高度を上げる。
夜明け前の空へ。




