表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
崩壊世界の再生人類  作者: Beta
目覚め

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/17

第9話 <封鎖された村2>

 女はその男を見る。


「……全部処分するのか」

「そうだ」

「村ごとだ」


 空気が沈む。

 そのとき森が揺れた。


 音。

 近い。

 多い。


 女の目が、わずかに細くなる。

 剣には、まだ触れない。


「……来るな」


 飛び出した。

 魔犬。

 複数。


「来やがった!」

「くそっ!」


 さらに。

 魔人。


 誰かが叫ぶ。

「門を守れ!」

 だが、遅い。


 女は、すでに動いていた。


 踏み込む。

 一閃。

 一体が崩れる。

 足場が沈む。


(……やりにくい)


 だが止まらない。


 横から牙。

 避ける。

 切り返す。

 背後。

 来る。

 振り向かない。


 クロウが舞い降り、矢のように一体に突撃する。

 攻撃を遮られ、仲間のところに引き返す魔犬。


「数が多い!」


 男たちが崩れ始める。

 女は間に入る。

 動きは無駄がない。

 ただ処理する。


 視界の端。

 柵の中の男。

 動けないでいる。


 魔人が、そちらへ向かう。

 女の足が止まる。


 一瞬だけ。

 そのとき。

 髪が揺れた。


 隠れていた頬が、露出する。

 左の頬。

 線がある。

 二本。

 短く、細い。


 魔人が、もう手を伸ばす距離。


 女は動いた。

 踏み込む。

 距離を消す。


 斬る。

 魔人が崩れる。

 沈黙。


 戦いは、終わった。

 誰もすぐには動かない。

 一歩間違えれば、自分たちも“感染者”になっていた。


 柵の内の男が、言う。

「頼む……」


 女は、しばらく黙っていた。


 目は動かない。

 だが——

 わずかに、揺れている。

 ほんの少しだけ。


「……どうする」


 クロウの声。

 低く。

 女は答えない。


 ただ。

 一度だけ。

 左の頬に触れた。


(……これは、なんだ)


 記憶は、ない。

 意味も、ない。


 だが——


 女は顔を上げた。

 柵の向こう。

 男が、こちらを見ている。


「頼む……」

 再度、男が言う。

 時間は、ない。


「……開けろ」

 短く言う。


 外の男たちが動く。

「何言って——」


「開けろ」

 繰り返す。

 声は低い。

 だが、有無を言わせない。


 閉鎖をしていた男たちの一人が一歩前に出る。

「理解しているのか」


「している」

「ならなぜ開ける」


 女は、ほんのわずか間を置く。


「……感染していないからだ」

「魔人化した連中は外にださない」


 それだけ。

 意味は説明しない。

 女は柵に近づく。


 外の男の一人が、迷いながら閂に手をかける。


「……開けるぞ!」

 柵が、わずかに開いた。


「来い!」

 内側の男が飛び出す。

 転びながら。

 必死に。


 その瞬間。

 中で音がした。


 重い音。

 複数。


 門の隙間から、手が伸びる。


 黒ずんだ皮膚。

 歪んだ指。

 魔人。


「来るぞ!!」


 外が騒ぐ。

 女は動いていた。


 柵の前に立つ。

 開いたままにしない。

 踏み込む。

 一閃。

 腕が落ちる。


 さらにもう一体。

 来る。

 狭い。

 距離が近い。


(……詰めるしかない)


 前に出る。

 門の内側へ半歩。

 斬る。

 斬る。

 止める。


 外の男たちも動く。

 槍が突き出される。

 遅いが、届く。


 クロウが舞い降りる。

 音もなく、一体を落とす。


 数秒。

 それで終わった。


 柵が閉じられる。

 内側は、もう静かだ。


 助かった男が、その場に崩れる。

 息を乱しながら。


「……助かった……」


 誰もすぐには何も言わない。

 門の前にいた男だけが、女を見る。


「一人だ」


 事実だけを言う。

「危険に対して、成果が薄い」


 女は答えない。

 門を開けた男は、小さく息を吐いた。


 誰も答えない。


 女の視線が、一瞬止まる。

 男の腕。

 服が裂けている。

 その下——歯型。

 深い。

 新しい。


 だが、何も言わない。


 やがて。

 助かった男が、顔を上げる。


「……お前」

「なんで、助けた」


 女は、少しだけ考えた。

 言葉を探していたわけではない。


 ただ——

 正直に答える。


「……分からない」


「だが」

 ほんのわずかだけ、視線が動く。


「必要な気がした」


 それだけ言って、女は村を後にして歩き出した。


 クロウが、肩にとまって低く言う。

「合理的ではない」


 男は、その様子を見て

「俺、ハンスってんだ……」

「一緒に行っていいか?」


 女は何も答えない。

 男は遅れて立ち上がり、よろめきながらついていく。 

 女は気にしているのか気に留めていないのか、

 歩みを止めない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ