第86話 <共闘2>
魔鳥が咆哮した。
耳をつんざくような鳴き声。
谷全体が震える。
巨大な嘴。
鋭い鉤爪。
急降下、真っすぐにハンスに向かう。
「上だ!」
ケイが叫ぶ。
ハンスは反射的に身体を倒す。
目の前を鉤爪が通過した。
岩が裂ける。
さらにもう一羽。
横から襲い掛かる。
「チッ!」
ケイが投擲剣を放つ。
銀の閃光。
魔鳥の翼に突き刺さる。
バランスを崩したその瞬間。
ハンスが踏み込んだ。
クレイモア一閃。
翼が裂ける。
魔鳥の咆哮、悲鳴。
地面へ墜落した。
しかし。
終わらない。
上空に戻った一羽が再度、攻撃を仕掛けてくる。
今度は一直線にケイへ向かう。
ケイは立てない。
剣も届かない。
ケイは転がって避ける。
魔鳥は羽を広げ急停止すると地面を蹴って反転する。
虫をついばむ様にケイを襲う。
必死で転がって魔鳥のくちばしから逃げる。
「くそっ!」
ハンスが顔をしかめる。
「まずい」
大剣を持ち直す。
魔鳥に向かって走り出す。
「この野郎っ!」
魔鳥に突撃。
魔鳥はその場で二メートルほど飛び上がる。
かぎ爪のついた足をハンスに向ける。
羽ばたく。
かぎ爪が迫る。
ハンスの肩に食い込む。
「ぐっ」
だが構わずハンスはそのまま大剣を振り上げる。
肩から血が噴き出す。
魔鳥はハンスを掴んだまま逃げられない。
斬る。
魔鳥の足を切断。
そのまま大剣を反転させ再度の一撃。
「ギーッ」
叫び声をあげ魔鳥が川に落ちる。
「へっ、不死身のハンス様にかかっちゃあこんなもんよ」
ハンスは大剣を抱えその場に座り込む。
肩から血が噴き出す。
何かが体に入ってくる。
感染。
そのまま意識を失った
◇ ◇
水音がする。
ハンスは目を覚ました。
体の節々が痛い。
辺りを見回す。
谷川のほとり。
記憶が蘇ってくる。
ゆっくりと体を起こす。
肩には布が巻かれていた。
そばにケイが座っている。
既に日は沈み辺りは闇に包まれていた。
だが、見たことのない小さなランプがケイとハンスを照らしていた。
「お前が巻いたのか?」
ハンスが聞く。
ケイは少し黙った。
ランプの白い灯が二人を照らす。
「死なれると気分悪いからな」
そう言った。
「そりゃあ俺のセリフだ」
ハンスは思わず笑う。
立ち上がる。
体はだるいが動けないことはない。
いつものごとく怪我はすぐ治る。
生まれ故郷の村ではよく気味悪がられた。
「お前、現生人らしくないな」
ケイが呟いた。
「その傷の治り具合」
「それに魔人化しない」
ハンスをじっと見る。
「不死身のハンス様ってな」
「やたらめったら丈夫なんだよ」
しばらくの沈黙。
ハンスが口を開く。
「ありがとな」
「助かったぜ」
「お前、足は動くのか」
ケイ。
「もう少しだ」
ハンス。
「じゃあこの後、俺が起きてるから休んどけ」
「日が昇ったら一緒にこの谷を抜けようぜ」
「お前なぜそんなことを言う」
「一人で行けばいいだろうが」
ハンスが答える。
「死なれると気分が悪いからなぁ」
思わずケイは顔をほころばせた。
「変な奴だ」




